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東映スーパー戦隊シリーズの第25作「百獣戦隊ガオレンジャー」。
特徴は、パワーアニマルと呼ばれる巨大な動物たち。合体して巨大ロボになるのですが、別にガオレンジャーが操縦しなくても自分で考えて戦えます。
そのため、全身タイツ5人組の存在意義が見当たらず、パワーアニマルが主役という印象がありました。
また、メンバーが本名を使わず変身前も色で呼び合うのも独特でした。
――「戦士になるつもりなら、これまでの名前は捨てろ。俺はガオイエロー。お前はガオレッド」。
そんなガオレンジャーも、ついに終幕。最終話「百獣、吼える!!」が放送されました。
前回、最強最後の怪人・センキと戦ったガオレンジャー。
しかし、巨大ロボの必殺技・天地轟鳴アニマルハートも通用せず、仲間のパワーアニマルは皆殺しに。隊員は変身能力を失ってしまいました。
そして、好き勝手に街を暴れ回る怪人たち。ガオレンジャーに残された武器は、たった1本の刀だけです。
黄「このままじゃ、死ねねえぜ」
黒「どんな小さな、傷だって…」
青「爪の一筋の傷だって、つけてやる!」
銀「千年の無念、晴らす時!」
レッドが刀を持つ以外は全員丸腰で人間体のまま、巨大ロボでも倒せなかったセンキに立ち向かいます。
一矢報いて死ねれば大満足という、大日本帝国の本土決戦なみにテンパった玉砕覚悟の突貫です。
それでも根性でビルの屋上からジャンプして、センキの胸に刀を突き立てるレッド。しかし、そんなことでダメージがあるハズもなく、あっさり刀を折られてそれまででした。
すべての武器を失い、勝ち目ゼロのガオレンジャーですが…。
赤「こんなことじゃ負けねえ。獅子走、俺は獣医だ! 地球の命を守るんだ!」
白「たとえ、ガオレンジャーの姿になれなくても…。あたしはガオの戦士、大河冴よ!」
ここにきて、唐突に本名を名乗り出すガオレンジャー。
青「僕は、鮫津海19歳!」
黒「自分は…、自分は、牛込草太郎です!」
銀「我が名は月麿。…大神月麿だ」
黄「もう、色で呼び合うこともないか…。俺は鷲尾岳。よろしくな」
この最終回での名乗り合いをやりたいがためだけに、1年間、色で呼び合い続けたのでしょうか。
とにかく、この期に及んで自殺同然の特攻を決意するガオレンジャー。
赤「みんな、俺に力を貸してくれ!」
黄「俺たちは負けないッ」
全員「やる気マンマンだぜぇ!!」
どちらかと言うと「死ぬ気マンマンだぜぇ!!」という感じですが、そこで突然、空が明るくなり、無数の光り輝く玉が降ってきました。
マスオさん声のナレーションが、冷静に解説します。
ナレーション「おやおや? どうしたことでしょう。この光の玉は、何なのでしょう」
ガオの巫女「…聞いたことがあるわ。この世には、天空島に戻ってきていない者たちを合わせて、100匹のパワーアニマルがいるって」
ナレーション「そうなのです! ガオレンジャーの心が、世界に散らばっていた、この世の中のパワーアニマルすべてに通じたのです!」
そして、いっせいにセンキに襲いかかる100体のパワーアニマル大軍団。その中には、初めて見るパワーアニマルたちの姿もありました。
白「ガオマウス!」
青「ガオスティングレイ!(エイ)」
黒「ガオホース!」
黄「ガオピーコック!(くじゃく)」
はじめて会うパワーアニマルの名前でもスラスラ言えるガオレンジャー。そして、そんな中に、なぜか先週殺されたパワーアニマルも混じっていました。
赤「…お前は、ガオライオン! 蘇ったのか!!」
たぶん新しいパワーアニマルの中にザオリクを使えるヤツでもいたのでしょうが、ずいぶんと安い命です。
また、失われたガオレンジャーの変身能力も…。
ナレーション「百獣と、6人の心が完全に1つになったとき、戦士の力も蘇るのです!!」
理屈はよく分かりませんが、そう断言されては仕方ありません。ついに、最後の変身です。
赤「灼熱の獅子! ガオレッド!!」
黄「孤高の荒鷲! ガオイエロー!!」
青「怒涛の鮫! ガオブルー!!」
黒「鋼の猛牛! ガオブラック!!」
白「麗しの白虎! ガオホワイト!!」
銀「閃烈の銀狼! ガオシルバー!!」
赤「命あるところ、正義の雄たけびあり!」
全員「百獣戦隊ガオレンジャー!!」
ちなみに、この最終回だけはスーツアクターさんではなく、素面を演じる役者さん本人がスーツの中に入っています。
そのため、ホワイトの身長がいつもより激しく低かったり、決めポーズがいまいち決まり切らなかったりします。
とにかく、形勢逆転どころか100対1のいじめモードに突入して、得意絶頂のガオレンジャー。
赤「センキ、見たか! 百獣たちは死んじゃいないぜ!」
青「みんなの力を、今こそ見せてやる!」
黒「ネバギバの力をな!」
白「そうよ! この星の命の力は、オルグの衝動なんかに負けやしない!」
銀「それこそ千年の真理だ!!」
全員「森羅万象! 天地轟鳴! 百獣アニマルハート!!」
そのかけ声と同時に、100体のパワーアニマル全員がセンキ1人に向けて怪光線を放ちます。
さらに、むきだしになった弱点の心臓に、トドメの必殺技・破邪百獣剣が炸裂。
赤「センキ、そして、すべてのオルグよ。邪気…退散!!」
そうして、いじめられっ子のセンキくんは爆死。ガオレンジャーの完全勝利です。
その頃、不利を悟り、センキを見捨てて一足先に本拠地に逃げ帰っていた悪の幹部2人組。しかし、センキの死の影響を受けて、そこも崩壊を始めます。
ヤバイバ「ツエツエ~」
ツエツエ「ヤバイバ~」
お互いの名前を呼び合いながら、崩れた瓦礫の下敷きになる2人。あっけない最期ですが、Vシネマでの再登場に期待したいところです。
一方、すべての敵を倒したガオレンジャーたちには、別れの時が近づいていました。
赤「…それぞれの夢を叶える時が来たんだ」
黒「うしッ! チャンコ屋の社長目指して、ネバギバで天下とるぞ~」
青「おう。頼りにしてるぜ、社長~!」
白「そうそう。旅、行こう、旅!」
それぞれの社会復帰を計画するメンバー。
しかし、これまでガオレンジャーの戦いをサポートしてきた“巫女”だけは、数百年か数千年後の戦いに備えて、再び長い眠りにつかなければなりません。
赤「俺は獣医だ! でも、1000歳まで生きるなんて無理だ」
ことさらに己が獣医であることを強調するレッド。それしか個性がないので仕方ありませんけれど。
また、数週間前、突然ホワイトとラブラブになって2人きりの温泉旅行まで約束していたシルバーは…。
銀「同じ平安時代の人間として、お供しよう」
いきなり別の女に乗り換えです。しかし、「あなたは普通の人間」と体よくフラれてしまいました。
そして巫女は、隊員支給のジャケットと変身アイテムを回収。どうやら1000年後に再利用するようです。
巫女「私はあの月で眠ってます。たまには夜空の月を見て、私のことを思い出してください」
赤「さようなら」
青「バイバイ!」
ナレーション「…長かった戦いの物語は、こうして終わりました。そして、みんなは夢を叶えるため、それぞれの世界へ別れていったのです」
~ エピローグ ~
孤高の荒鷲・ガオイエロー(鷲尾 岳)
元航空自衛官のイエローは、テスト生として復帰。1年以上の失踪歴というハンデにもめげず、厳しい訓練を受けています。
…序盤ではニヒルなサブリーダー、中盤では奇妙なイングリッシュを使う三枚目を目指してどちらも中途半端に終わり、終盤では個性を見失っていたガオイエロー。そんな彼らしい見所のない最後でした。
麗しの白虎・ガオホワイト(大河 冴)
休学していた武術専門学校に戻ったホワイトは、組み手の最中。相手はホワイトのスーツの中に入っていた人で、なにげにホワイト対ホワイトという貴重なシーンです。
その様子を見守るのは、第11話に登場したホワイトの父親。虎と格闘して勝ったことがあるという豪傑です。
父「1年間よう気張りやした、麗しの白虎殿」
白「父さん、その名前はこの前までやったがな。あたしの名前は大河冴。大河虎之助の、娘でごわん」
……何語ですか?
閃烈の銀狼・ガオシルバー(大神月麿)
現代に蘇った平安時代の人間という、最も将来性のない男・ガオシルバー。大きな荷物を抱えて困っているお婆さんを見かけて、助けようとしますが…。
銀「荷物を持って、お連れしましょう」
婆「都会は恐いわ」
ひったくりと勘違いしたお婆さんに逃げられてしまいます。
「21世紀、か……」。そうつぶやいて、シルバーは都会の雑踏の中に消えていくのでした。
しかし、その浮浪者に近い服装と他人の荷物を強引にグイグイ引っ張る態度では、犯罪者と思われても仕方ありません。
鋼の猛牛・ガオブラック(牛込草太郎)
牧場で、牛の世話をしているブラック。
親父「いつもの相棒はどうした?」
黒「すいません。別の用事で遅れるって…」
親父「いいさ、ちょっとくらい。お前たち、真面目に働くからなぁ」
黒「自分たち、夢、ありますから。いっしょに店やるって」
親父「そうか。……おお、噂をすればだ」
そこに「草太郎くぅ~ん」と言いながら現われたのは、「チャンコ屋の店長にしてやる」と約束したホモだちのブルーではなく、こともあろうに女でした。
そう、ブラックは、第19話に登場したしーちゃんと2人で、花屋を開くために働いていたのです。
1年かけて育まれてきたブラック(男)とブルー(男)の愛は、ここに破局を迎えたのでした。
怒涛の鮫・ガオブルー(鮫津 海)
ブラックに捨てられたブルーはフリーターに戻り、孤独にワックスを塗っていました。
灼熱の獅子・ガオレッド(獅子 走)
レッドは、ガオレンジャー入隊以前に勤めていた動物病院に。若い子好きのオバチャンに囲まれながら、幸せに暮らしていました。
そこに、イエローがひょっこり現われます。
ナレーション「おやおや? 戦いの物語は終わっても、別の物語が始まっているようです」
そして、青・黒・白・銀が次々に集まってきて、みんなでピクニックに。
なぜか、月で眠っているハズの巫女と、天から見守ってくれているハズのガオゴッド様も、いっしょにお弁当を食べています。
……そういえば、「緑に包まれる中、死人も含めて仲良くピクニック」という光景は、「家なき子2」で安達祐実の親父が死ぬ間際に見た幻覚によく似ています。
眠っている巫女が見ている夢か、ブラックとしーちゃんの結婚式に向かう途中にチンピラに刺されたブルーが死ぬ前に見た幻か…。
何とでも言い繕える感じのシチュエーションで、とにかく幸せそうなピクニックです
そして、レッドが放り投げた卵焼きが手前に飛んできたかと思うと、ぺっちょりとカメラに貼り付きます。その卵焼きに「おわり」の文字が浮かび上がって、おしまい。
最後まで脱力もののアホ演出でした。
ともあれ、1年間楽しませて頂きました。
ネットアイドルちゆは、百獣戦隊ガオレンジャーを応援しています。