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先週、病で倒れたガオライオンを助けるため、戦国時代にタイムスリップして輝きのキノコをゲットしてきた百獣戦隊ガオレンジャー。
今日はその続き、第11話「父親上京。」です。
オレンジのボディーに赤い渦巻き模様が毒々しい輝きのキノコ。見た目だけで判断するなら、確実に毒キノコです。
しかし、ガオレッドは嬉しそうに言います。
「これを食わせればガオライオンは治るのかぁ~」。
そんなもの食わせたらガオライオン死ぬぞという視聴者の心の声に答えるように、「ちょっと待って」とツッコミが入ります。
実は食べさせるのではなく、キノコを使ってガオの卵なるものを産むのだそうです。
聞くからにいい加減な呪文を唱えて、輝きのキノコを聖なる泉に沈めます。これで数日中にガオの卵ができるそうです。
胞子で増える植物から卵が生まれる原理は不明ですが、そういえばキノコの形状はアレに酷似しています。泉が母性を象徴すると考えると、なかなか意味深な現象です。
さすが百獣戦隊。子どもたちの性教育にも一役買おうということでしょうか。
さて。
どうやって卵で病気を治すのかも気になりますが、この件は来週のお楽しみということで、ようやく本編に入ります。
百獣戦隊の若者たちは秘密基地に寝泊りし、怪人が出現したら倒しに行くという将来の展望がない毎日を送っています。
そんな彼らも入隊前は人並みの生活をしており、レッドは獣医、ブラックは相撲の道をあきらめて花屋さんを目指していたなどのプロフィールが明らかになっています。
紅一点のガオホワイト(本名:大河冴)にも、そんな昔のしがらみがありました。
一本の電話を受けると、慌てて出かける支度をはじめます。
「あたし、アパートの方に行ってくる。父さんが上京してきちゃって、うちに寄るっていうの。あたし、武道の専門学校に通ってることになってるから、休学していることがバレたら鹿児島に連れ戻されちゃう」。
鹿児島と言えば、江戸時代に兵児二才(へこにせ)制度を採用していたため、男色が盛んなことで知られます。
筋肉ホモのブラックにこそ、ふさわしい出身地だと思ったのですが残念。
それはともかく、ホワイトの父親はどんな人なのでしょうか。
曰く、
「虎と格闘して、勝ったことあるって」。
…大山倍達みたいな親父です。ついでにオープニングのクレジットによると、名前は大河虎之介です。
その空手バカ親父の襲来に備え、生活していないアパートを誤魔化すために掃除・洗濯・炊事などの偽装工作を開始するホワイト。
そこで何の前触れもなく、アニソンの女王・堀江美都子さんが歌うガオホワイト・テーマソングが流れ出します。
前作「未来戦隊タイムレンジャー」では、最終回直前の「Case File 49 千年を越えて」のクライマックス、自らの地位や家族や健康を捨てて21世紀のために闘う決意をした未来戦士たちが走り出す最高に格好いい場面でタイムピンクが歌う挿入歌が流れて、盛り上げてくれました。
しかし今回は、ニコニコとお掃除・お洗濯をしている場面で、ガオホワイトの番組内プロモーションビデオのような仕上がりです。
うーん、ガオっぽいです。
そして、回想シーンが始まります。
上京前のホワイトと、その親父。セーラー服に三つ編みで、マニアックな男性視聴者にサービスです。
「お願いがあっとやけど。うち、東京の武道専門学園にいきたかと」。
いきなりそんなこと頼まれて、素直にうなずく父親はいません。案の定、虎之介も怒ります。
「どげんしてん東京へ行くんちゅうなら、おいを倒してから行きやんせい」。
そんな父親もいません。
そして、素手の娘を相手に竹刀を構える虎之介。剣道三倍段ということは、これに勝てれば虎3匹屠れます。
親父は「チェストォー!」と叫び、防具も何も着けていない娘の顔に本気で面を打ち込みます。
娘を嫁にやる気があるなら、せめて小手か胴にしておきましょう。
…そんな懐かしい思い出にひたっていると、街で怪人が暴れていると連絡が入ります。
親父の来襲前にアパートに帰りたいホワイト。
「もーう! こんなときに出てきてっ! 3時までには帰るんだからねっ」
しかし、今日の敵・武者人形オルグは滅法強いです。
しかも戦隊シリーズでは珍しいことに、怪人の分際でオルグ剣・満月斬りなどという必殺技まで備えています。
騒ぎを聞きつけてやってきた親父も怪人を見て、「あんやつ、できる」とうめきます。
虎殺しの虎之介が言うのですから、これは強敵です。
でも親父、星飛雄馬の姉のように木の陰から隠れて見ているだけです。
そこで虎之介、ガオホワイトの構えを見て自分の娘だと気がつきます。
ずん胴の巨大鎧武者と戦う、真っ白の全身タイツを着込んで四つん這いで疾走する自分の娘。さらに周りには、おそろいの全身タイツを着込んだ妙にカラフルな4人の男。
ほとんど動じないのは、さすが虎殺しです。
そしてホワイトは真剣白刃取りで活路を開き、白虎十文字斬りなる必殺技で怪人を倒します。
「お見事!」と思わず声に出して嬉しそうな親父。結局それだけで満足して、そのまま娘に会わず鹿児島に帰ってしまいました。
アパートに、置き手紙だけを残していきます。
「武術も腕を上げたようだな。父さんは、お前をずっと自分のふところの中に抱いていたかった。でも今は、お前が自分一人の娘でないことを理解しているつもりだ。いつの日か修行が終わり、鹿児島に戻ってくる日を父さんは楽しみにしている。気張りやんせ。 麗しの白虎 サエ 父」
…と、そんな感じの物語だったのですが、実は最大の見どころは本編とは全く関係ないところにあります。
それは、ガオレンジャーの面々が、怪人を倒して秘密基地に帰って来る場面です。何の脈絡もなく、ブラックがブルーを肩車してあげています。
ブラックの上で、「本日も、大勝利ぃ!」と言いながら腕をブンブン振り回す嬉しそうなブルー。
今どき小学生でも恥ずかしい肩車で大はしゃぎする姿は、とても19歳だとは思えません。
ブルーから「肩車してよ、ブラック」と頼んだのか、ブラックから「肩車してやるよ」と申し出たのか。
いずれにしても、本当にやるところに二人の深い愛が感じられます。
ネットアイドルちゆは、ブラック(男)とブルー(男)の恋を応援しています。