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ちょうど20年前、1999年10月14日に、『幻魔戦記レクシオン』というエロゲが発売されました。
このゲームには、真央という義妹が登場。
主人公が幼いころに、父親がどこからか連れてきた養女で、ずっといっしょに育ってきたという設定ですが……。
「おにいちゃん! 私も愛してる!!」と、ゲーム序盤から肉体関係になります。
義理とはいえ兄妹だから……みたいな葛藤は、ほぼありません。
むしろ、家族だからキスしたときの安心感が違うぜみたいなノリでした。
さて、この作品には、セックスすると強くなれるという設定があります。
なので、主人公は毎晩、仲間たちと夜伽をしなければならず……。
「おおう……真央!…出るっ!…あああっ!!」
「おにいちゃあああああん!!(びぐびぐびぐん!!)」
「アキラはLv3になった。最大HPが20アップした! 必殺技 二段突き を修得した!」
みたいな修行を、何度も行います。
そうして、真央が敵に拉致されてしまった日の夜も……。
仲間に夜伽を求められた主人公は、「真央がさらわれたってのに、アニキはSEXしてろってのかよ?」と反論するのですが、
「夜伽でパワーアップしとかないと」「わかった。オレが間違ってたよ」
という反省を経て、妹を助けるために3Pを頑張る主人公でした。
そんな戦いの果てに、主人公は、衝撃の真実を知ります。
実は、真央は主人公の義妹ではなく、実の母親だったのです。
(主人公の父親が、自分の妻を若返りの実験に使ったところ、事故で胎児まで戻ってしまい、養女として育て直したという設定)
親父から告げられる、義妹の正体
ギリ合法の義妹だと思っていたら、完全アウトな実母だったわけですが、主人公は、そんなに気にしません。
母親(妹)と力を合わせて、父親(ラスボス)を殺します。
ただ、近親交配から生まれた子供は、劣性遺伝子が発現する割合が増えることを、主人公は問題視するのですが……。
その点も、神族が仲間だから回避できるという話になって、
「オレはやっぱりお前の事を一番愛してるみたいなんだ。頼む、俺の子を産んでくれ!」
「……うれしい! 私……ついこの間まで義妹だったのに…実は母親だったり……。どうやってもおにいちゃんとは子供の作れない体なんだって…思ってたのに…。ありがとう、おにいちゃん!!」
という感じで、ふたりは戸籍を操作して、法律上は他人になってから結婚。
と、双子を産んで、幸せに暮らしました……というラストでした。
当時の状況で、実母結婚出産ハッピーエンドを出すのはスゴかったです。
補足:当時の状況
このゲームが発売された1999年(20年前)というのは、近親相姦モノが出しにくい時期でした。
というのも、1998年12月に発売された『コ・コ・ロ…』というエロゲが、問題になったからです。
当時のソフ倫の倫理規程は、こうでした。
「近親相姦、死姦または出産状況をいたずらに表現した作品は制作しない」
そこで、『コ・コ・ロ…』というエロゲが、実の家族とエッチしまくる内容だったところ……。
エンディング24:インモラルウェディング
ソフ倫の倫理規程に反するとして、発売後に販売禁止・回収処分になりました。
さらにソフ倫は、1999年6月、次のように倫理規定を改定。
「近親(血続きの、直系および3親等以内の親族)相姦はその行為を描写した作品を制作しない」
これが10月1日に施行され、エロゲの近親相姦完全禁止時代が始まりました。
そして、今回ご紹介した『幻魔戦記レクシオン』の発売日は10月14日。
ソフ倫の審査は通過しており、どうやら、改定の施行前ギリギリに通したようです。
みんなが『コ・コ・ロ…』の件で自重ムードの中、実母を孕ませて結婚するゲームを作ったのは、チャレンジ精神あふれていました。
補足:レクシオンの倫理観
この『レクシオン』というゲーム、開始冒頭の、主人公が目覚まし時計に起こされるシーンからして、
……と、ライターさん酔ってるの? みたいな印象を受けるのですが、ゲームを進めてみても、ライターさんが自分の世界に浸ってる感は続きます。
……まあ、ヒーローものなので、恥ずかしい決め台詞はOKです。
ただ、気になるのは、この「オレのジャッジ」ってやつなのですが……。
怪物化した一般市民を倒したあと、「命だけは助ける(悪の心を消し去るが、元の人格も失われる)」か、「この世から消滅させる」か、決めるのが「オレのジャッジ」です。
ただし、基本的にプレイヤーに選択権はなく、どちらにするかは、おおむね勝手に進行します。
たとえば、
……と、アイドルを目指して頑張ってる子が、怪物化して暴れたので、主人公が倒します。
そして、この子を生まれ変わらせるか、消滅させるかという「オレのジャッジ」は、
夢に向かって頑張ってるけど、周囲の人間とうまくいってなかった女の子。
まっとうに生きてる普通の人って印象ですが、主人公たちの判断は、「思い切って現世から開放してやったほうが幸せ」。
殺して消し去ることを「現世から開放してやる」と言い換えるのは、宗教かサイコか岩柱だと思います。
また、
……という過去のトラウマから怪物化した婦警さんを、主人公が倒します。
今度は、消滅させずに、人格ごと悪心を消し去るという「オレのジャッジ」で、
「人格を消し去ってあげた方が良い」って、本人の意志も聞かずに判断することではないと思います。
と、このゲームでは、心の中の欲から怪物化する……という設定のおかげで、内心が濁っていればアウトみたいな判定になります。
心の中で他人を見下していれば、それを表に出さずに生活できていても、主人公たちから極悪人あつかいされたりします。
そんなこんなで、独自の倫理観で話が進むのに、私はついていけませんでした。
(遺伝の問題がなければ母親とセックスして結婚してもいいっていう感覚も、なかなか先鋭的です)
私はこのゲーム、サイコパスが作ったエロゲみたいに思っています。