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去年の夏休みに、お芝居を見てきました。
SF演劇ユニット・アルベルトガーデンの『時空伝承ウインド』。
当日券3500円也(チケット案内)。
さて、『時空伝承ウインド』は演劇なのですが、パンフの表紙は二次元ドリームノベルズみたいです。
公式サイト(リンク切れ)によると、アルベルトガーデンの目標は「舞台上にアニメや映画のような世界を作り出す」とのこと。
つまり、この触角つき美少女を役者さんが演じるわけです。
まあ、演劇の性質上、その辺にツッコむべきではないと思いますが、お約束なのでいちおう並べてみました。
……最初から全然似せる気がないので、ダメージは少ないですね。
イメージイラストではフッサフサのロン毛の「ゼロ」が、舞台ではハゲキャラなのも割り切っています。
むしろ心ひかれるのは、「高速戦闘システム」「ダークマターズ」「林 静火(ハヤシ シズカ)」「サイレント・キル」「相手を死に追いやってしまう」あたりでしょうか。
なお、ダークなんとかのリーダーである黒マントの怪人(設定画)が「ゼロ」なのは偶然ではなく、主宰者が「コードギアス」のファンだからです。
(お芝居の中に、「ゼロ様の命令は絶対遵守よ!」「イエス、ユア・マジェスティ」「ボロ雑巾のように捨ててやる」といった台詞が出てきます)
その辺、ギャグシーンだけなら良いのですが、残り10分の終盤になっても、準主役のフレアさんが例のポーズで「ギガドリル!!」と叫んでいました。
2009年2月15日
『時空伝承ウインド』のあらすじ(ネタバレあり)
そんなこんなで、「時空伝承ウインド」を見に行ったときのことを振り返ってみます。
まず、会場に入ると、妙に馴染みのある歌声で「くるっと まわって いっかいてん♪」と聞こえてきます。
そのまま開演まで、客入れのBGMはずっと初音ミクでした。
(締めは初音ミクが歌うこの劇の主題歌で、ニコニコ動画にもアップされています)
なお、そうして初音ミクが流れるあいだ、ちゆの後ろの席に座っていた年輩の女性ふたりは、次のような会話をしておられました。
「保険ってのは変わらないの? 60過ぎても」
「もうヨメには遠慮して遠慮して……」
「借用証書の金額だけだね。だからおばあちゃんがそれを決済して分からないようにすればね……」
どうやら客層の大半は『コードギアス』とは無縁の人生を送っているようです。
そうして初音ミクメドレーを聞き終えると、お芝居が始まります。
オープニングナレーション
「ここは、2108年。いまから皆さんをご案内するのは(中略)驚きと希望に満ちた、私たちの100年後!」
「夢の超特急、リニアモーターカー! 東京と大阪をたった1時間で結ぶとんでもない列車が走ります!」
最初のシーン
子供「うっはっはー、すげえー、すっげえー」
母親「もう、この子ったら、はしゃいじゃって」
父親「しょうがないだろ、こんな速い乗り物には乗ったことがないんだからー」
……ううむ、22世紀の驚きと希望は東京~大阪間が1時間ですか(確かに嬉しいですけど)。
などと思いつつ見ていたら、その子供が、外の景色を眺めながら「あのお姉ちゃん、すっごく走るの速いのー!」。
そう、窓の外を、美少女がリニアより速く走っていたのです。
科学の力でリニアと併走。
未来というより、むしろ『エイトマン』や『サイボーグ009』的な60年代テイストを感じます。
ともあれ、彼女がこの物語の主人公のウインドさん。
加速装置の持ち主です。
演出的には『仮面ライダーカブト』を舞台でやるという感じで、ウインドさん本人は普通に動き、周囲が止まることで速さを表現します。
ただ、『カブト』は特撮技術がすごいのであって、それを生身の舞台でやっても「だるまさんころんだ状態」というか、どれだけ上手く動きを止めてもソフトオンデマンドの「時間よ止まれ」系エロビデオみたいに見えるのが難点です。
それから、例のポーズで「キラッ☆」と言ったり、「虹野さんは俺の嫁」と吼えたり、「トランザム!」と叫んで真っ赤に光ってパワーアップしたりしているうちに、お芝居も終盤。
12歳の女の子が「世界を無に帰す」と言い出して、東京タワーを破壊したり、通りすがりのケンシロウを殺したりします。
加速装置のあるSFで電磁波が見えるヤンデル盲目美少女ということで、たぶん主宰者は『虎よ、虎よ!』のオリヴィア萌えと思われます。
マリーちゃん(※パンフに絵がなかったのでキャラデザは想像です)
この12歳も片付いて、最後はゼロ様との対決です。
光速近くまで加速した陽子と陽子を衝突させると、エネルギーの一部が高次元空間に漏れ出す可能性があると言われています。
ゼロ様の目的は、その要領でゼロ様自身が粒子加速器で加速されて、いまの腐った地球から高次元に脱出することなのだそうです。
でも、ひとりだと孤独なのでウインドさんも一緒に加速しようとするゼロ様。
「これから行く世界は俺とお前のふたりの世界。永遠という時間、俺とお前のふたりきりだああああ!!」
ここまで威厳のあったゼロ様(本名・冬月さん)が、クライマックスでストーカーのキモオタみたいになってしまいました。
結局、そんなピンチに陥ったウインドさん(本名・春香さん)を、彼氏の静火くんが助けてハッピーエンドになるのですが……。
静火くん「お前は、どんなことがウケッ、ウケッ、……起きようと、俺のことを受け入れてくれた! お前みたいな奴は生きていなくちゃならないんだ、生きろ春香! 春香ああああああああ!!」
……噛むな。
そんな感じで、実は常時噛みまくりなのが一番つらかった、このお芝居。
「SF演劇」という点については、小説のように詳しい説明は入れられず、映画のように絵的に見せられるわけでもなく、という感じで……。
クライマックスの粒子加速器の中で加速されながら斬り結ぶゼロ様とウインドさんも、いったい彼らがどういう状態だと設定されているのか、理屈も絵ヅラもよく分かりません。
どうもその辺は観客がフィーリングで流してくれる前提で作ったらしく、演劇とSFの相性の悪さが出てしまった印象でした。
ともあれ、ネットアイドルちゆはSF演劇ユニット・アルベルトガーデンを応援しています。
蛇足
特に関係ありませんがなんとなく思い出したので
かつて「アニメタル」が流行ったころ、「アニパンク」や「ナツメタル」などの便乗バンドの一種として登場したのが、「コスプレックス」でした。
声優さんを「2.5次元」と呼ぶことがありますが、彼女たちは「3.5次元」。
人間が2次元キャラの衣装を着るとむしろ4次元に近づくという、あまりにも正直な表現に驚いた記憶があります。
このように、3次元の女性が2次元に挑戦すると、次元の迷子になることが多いです。
追記
このページの記事について、『時空伝承ウインド』の主宰者さんのmixiの日記で触れていただきました。
特にマリーには恐れ入った、設定画が無いのにものの見事にイメージ通り!公式にヤンデレと言った覚えはないがヤンデレと評されている。
このイラストのおかげでマリーのCVはかないみかで決定だな、と脳内補完。
このイラストがイメージ通りだったとのことで、うれしいです。