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毎年、数多くのテレビ番組が作られては打ち切られていきます。
そんな中、生半可な人気では10年20年と続く長寿番組になれません。「渡る世間は鬼ばかり」「サザエさん」など、今でも20%以上の視聴率を保っています。
ところが、今年で25作目になる東映スーパー戦隊は、シリーズ最高の視聴率をほこる「電子戦隊デンジマン」さえ13.5%。
「ターボレンジャー」で放送時間を変えられてからの平均視聴率は、常にひとケタです。
劇中で半年間も地球を悪の征服下に置いてしまった駄目戦隊「超力戦隊オーレンジャー」に至っては、平均視聴率4.6%。
いま放送中の最新作「百獣戦隊ガオレンジャー」にしても、最高視聴率11.5%でスタッフ一同大喜びという感じです。
では、視聴率的には普通の戦隊シリーズが、どうして長いこと続いているのでしょうか。
もちろん、おもちゃが売れるからです。今年の「ガオレンジャー」も売れ行きは好調で、先日の中間決算でもバンダイの売上高は昨年の7.2%増でした。
そんなわけで、戦隊シリーズは毎年バンダイが企画を立てて、主人公のスーツやロボのデザインを決定。その後で東映が話を作る形になります。
決まってゴールデンウィークや夏休み前に新武器・新ロボが登場するのも、おもちゃ優先でスケジュールが決まっているからです。
さて。早いもので、今年もクリスマスが近づいてきました。一年で最も玩具が売れるこの時期、頑張って在庫を一掃しなければなりません。
そこで、今週の「ガオレンジャー」は第38話「精霊王頂上決戦」。全編巨大ロボのプロモーション映像でした。
具体的には、主要ロボット2体による同士討ちガチンコバトル。いかにもチビッコが喜びそうなシチュエーションで、「売り尽くしてやるぞ」というバンダイの意気込みが感じられます。
仲間同士で戦う理由には、ガオレンジャーのロボットは”意思をもつ巨大な動物”だという設定を利用することに。
そんなわけで、今週の怪人・猛獣使いオルグが登場。
戦闘前の余興として、「ミーの言うことを聞くザンス!」とその辺のノラ猫を操ろうとしますが、まったく見向きもされません。
「猫が猛獣じゃないから失敗したザンス!」と、あやしいフランス語で言い訳する怪人。
しかし、ガオレンジャーは猛獣に分類されるらしく、猛獣使いオルグのムチで操られてしまいます。
ガオホワイト(16歳少女)に火の輪くぐりをさせたり、4つんばいで座らせて頭をなでたり、ちょっとマニアックな怪人です。
そんなホワイトの姿に、仲間が声援をおくります。
イエロー「ホワイト、実に見事な火の輪くぐりだったぜ」
ブラック「本物のサーカスの動物みたいだったぜ」
ホワイト「…本当? ありがとう!」
さらに、猛獣使いオルグが「おすわりザンス!」と叫んでムチをふるうと、ガオレンジャーは全員おすわりしてしまいます。
”孤高の荒鷲”イエローのやる気なさげな体育座りも謎ですが、”怒涛の鮫”ブルーの不自然に背中を反らせて寝そべった姿勢は、どの辺が「おすわり」なのでしょうか。
ともあれ、この無敵の能力を持っていながらもロボ玩具の販売促進員に過ぎない猛獣使いオルグ。
このままガオレンジャーを一方的にボコって勝つこともできたハズなのに、物語的には何の脈絡もなく「今度はロボを操ってやる」と言い出して巨大化します。
その誘いに乗って、巨大ロボ・ガオキング(6000円)を呼び出すガオレンジャー。もっと強い新ロボがいるのに、わざわざ型落ち品の旧ロボを呼び出すあたりが苦しい展開です。
ともあれ、敵の能力を知りながらまったくの無策で突撃したガオレンジャー。当然のようにガオキングを操られてしまいます。
「やめろ、止まってくれ、ガオキング。お前と俺たちは、心と心でつながった仲間同士じゃないか!」
必死で説得するレッドですが、無視して攻撃してくるガオキング。涙ぐましい友情です。
そのピンチに、6人目の戦士・シルバーの巨大ロボ・ガオハンター(5000円)が駆けつけました。
「貴様もおすわりザンス!」と術をかける猛獣使いオルグですが、なぜかガオハンターは操れません。
シルバー「しょせん俺たちは一匹狼の集まりだ。猛獣使いのムチなどは効かんッ!」
言葉の意味は分かりませんが、とにかくすごい自信です。心と心でつながった仲間は裏切らせられても、元から協調性のない奴にはどうしようもない模様。
ともあれ、「ガオキング、ちょっと我慢してくれよ!」と言いつつ、容赦なく必殺の攻撃をブチ込んでいくシルバー。しかし、ガオハンターは売り上げが順調なのか、あっさり返り討ちにあってしまいます。
心の友のガオキングは言うことを聞きませんし、一匹狼は口先だけの役立たず。
やむなくガオレンジャーは、もう1体のロボ・ガオマッスル(7500円)を呼び出します。またしても、最新最強ロボを差し置いて型落ち品の登場です。
その後は、ガオゴリラ(2000円)、ガオエレファント(1500円)、ガオジュラフ(1500円)、ガオディアス(1500円)、ガオベアー(3000円)と、最近目立たなかった玩具たちの見せ場のオンパレード。
特に、敵の強さを強調するための引き立て役になり下がっていた連中(通称ヤムチャ組)は大活躍です。
天津飯レベルを飛び越えて、いきなりピッコロ並みの実力者になっていました(たぶん今回限り)。
そして、一通り全ての超合金の紹介が終わったところで、ようやく最新ロボ・ガオイカロス(10000円)を召喚。
全プロモーションが終了して用済みになった猛獣使いオルグを瞬殺しました。
ともあれ、ここで売れ残ると、来年の戦隊が登場してからおもちゃ屋さんのワゴンで5割引~8割引でバナナのように叩き売られる運命。
ちゆが10年後、20年後も戦隊を見続けられるよう、がんばって稼いで欲しいところです。
ネットアイドルちゆはバンダイを応援しています。