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特撮番組を見ていると、たまに人情話が出てきます。たとえば、ちゆが好きな「超光戦士シャンゼリオン」の第31話「羊とパイと現金と」。
いつも尺八を吹いているのがうるさくて、仲間からも嫌われている尺八好きの怪人。ある日、手術が恐くて病院から逃げ出してきた少女と出会い、尺八の音色を褒めてもらいます。
その後、少女は病院に連れ戻され、怪人はヒーローに襲われて倒れます。怪人は、最期に少女のために尺八を吹いてから爆死。その尺八の音色が手術前の少女の耳に届き、彼女は安心して手術を受けることができました。おしまい。
さて。今週の「百獣戦隊ガオレンジャー」は第34話「鉄人鬼、泣く!?」。そういった類の人情話でした。
悪の大幹部・ラセツ様は、ガオレンジャーを倒すことより食事が大事というグルメなお方です。
そんな上司にゴマをするため、女幹部のツエツエ様は一所懸命お料理をします。メイドさんのコスプレ姿で、後ろに同じくメイドのコスプレをした戦闘員たちを引き連れ、大幹部様の前に食事を運びます。
「ラセツ様ぁ。今回も、わたくしツエツエが、腕によりをかけてお料理をご用意いたしましたわぁン♪」
頑張ります、ツエツエ役・斉藤レイさん35歳。
しかし、そんな35歳の料理は大幹部様の口に合いませんでした。料理の上手い怪人を連れてくるよう、命令されてしまいます。
一方、場面は変わって、今週の怪人・炭火焼オルグが人間を襲っているところ。
ガオレンジャーが駆けつけますが、炭火焼オルグはガオレンジャーの後ろを指さして「あっ!」と叫びます。単細胞なガオレンジャーが思わず振り返ったスキに、炭火焼オルグは逃走。
あっさり逃げられたガオレンジャーですが、ブラックがマツタケ犬のように臭いで追跡します。
ところが、ブラックがにおいを辿った先は、なぜか串焼きの屋台。「何のぞいてやがんでェ」と、串焼き屋のオヤジに怒られてしまいます。しかし、そこは元力士のガオブラック。
ブラック「あっ、いい炭使ってるわ。備長炭ですね?」
オヤジ「おっ。分かんのかい、兄ちゃん」
ブラック「やっぱ焼き物は炭じゃなくっちゃね!」
そうして、あっさり串焼き屋のオヤジと意気投合。
なお、紀州備長炭博物館によると、「備長炭」は料理に使うだけでなく、お風呂に入れれば体がよくあったまる上に、コンピュータから出る電磁波も防げて、消臭・除湿の効果もあり、肥料にもなれば不眠症も治せる素晴らしいアイテムだそうです。
オヤジ「一度のれんをくぐったからには、食べてもらわなくちゃな」
ブラック「でも自分たちは、カネが…」(※ガオレンジャーは年収400万)
オヤジ「この文左衛門、味が分かる奴ならカネはいらねぇ!」
そして、「その暑苦しい服脱いでよぉ、そこに並びな」と言われ、「ハイ、脱ぎます」と全身タイツを脱いで着席するガオレンジャー5人。
炭火焼オルグのことは完璧に忘却して、串焼きを腹いっぱいゴチになります。
ちゃっかりお土産までもらって秘密基地に帰った後は、5人仲良く並んで食後のお昼寝タイム。まどろんでいたところに炭火焼オルグ出現の知らせを受けて、ようやく地球の平和を守る任務を思い出す百獣戦隊でした。
そして、再び炭火焼オルグを取り囲むガオレンジャーですが…。
炭火焼「お前たちに用はねぇ、そこをどけ!」
ブラック「そうはイカのゲソ焼きじゃい!」
炭火焼オルグは周囲に炭を撒き散らし、ガオレンジャーがひるんだスキに逃走。しかし、その落とした炭を見て、ブラックは炭火焼オルグの正体が串焼き屋のオヤジだったと気がつきます。
さっそく、串焼き屋のオヤジを問い詰めるガオブラック。
オヤジ「どうしてオイラだって分かったい?」
ブラック「こんな質のいい備長炭、近頃めったに見ないからな」
オヤジ「頭かくして炭かくさず、か」
そして、なぜ串焼き屋なんかに化けているのか、炭火焼オルグの告白が始まります。「あれもう50年ほど前になるかな…」。
~回想シーン~
昭和21年・秋。炭火焼オルグは、戦後のバラック街を焼いて焼いて焼きまくっていました。しかし、彼はそんな人生に悩みます。
「焼いても焼いても満足できねぇ! オイラが本当に焼きたいものは何なんだ!」。
そんなある日、彼が焼いた瓦礫の中で、偶然うまいことイモが焼けていました。その焼きイモを戦災孤児とおぼしき子供が拾って食べます。「うん、よく焼けてる」。
「…そいつら、『うまいうまい』と言いながら、オイラの焼いたものを食っていたんだ。そのとき、オイラの体に衝撃が走った」
それ以来、自分が焼いたものを人に食べさせることが生きがいになり、炭火焼オルグは人間の料理人のフリをして屋台をやっていました。
しかし、しょせんは怪人。自分の料理をバカにされたり残されたりすると、ついカーッとなって暴れてしまうのです。
~回想・おわり~
それを聞いて感動したガオブラック。「二度と人間を襲わない」と炭火焼オルグに誓わせ、トドメを刺さずに立ち去ります。
そうして屋台を続ける炭火焼オルグ。ハラペコの少年を見つけて、串焼きを振る舞います。
ところが、そこに女幹部・ツエツエ様が登場。炭火焼オルグを大幹部様の専属コックにスカウトします。
「俺はオルグから足を洗ったんだ」とツッパねるオヤジですが、ツエツエ様に串焼きの皿をひっくり返され、カーッとなります。
「あーはっはっは、燃えろ、燃えろーっ」と叫びながら、街を破壊し始めました。
そこにガオレンジャーが到着。串焼きをタダ食いした少年が、すばやくアドバイスします。「おっちゃんは、あのおばちゃんに操られている!」
ビシッと指をさされた女幹部・ツエツエ35歳。おばちゃんです。
ともあれ、「たどんミサイル」や「うなぎ炎上かば焼き攻撃」で攻めてくる炭火焼オルグを、ブラックが必死に説得。どうにか正気に戻しました。
「あれほどもう暴れねぇって誓ったのに、このザマだ。オイラ、ダメな奴だ…」。しょげる炭火焼オルグを、ブラックが慰めます。
速攻で立ち直る炭火焼オルグ。「いよぉし、頑張るぞ。へへへへ…」。しかし、突然現れた大幹部に、背後から撃ち抜かれてしまいます。
「おめぇら、ありがとうよ。今度生まれてくるときは、人間の…料理人に…」。オヤジは死んでしまいました。
オヤジの死に落ち込むブラックを、仲間が励まします。
白「きっと天国でも、みんなにおいしい炭火焼をごちそうしてるわ」
赤「いや。ひょっとしたら、もう人間に生まれ変わって、どっかで屋台ひいてるかも」
黄「ああ。神様も特別サービスしてくれるさ…」
そんなガオレンジャーのすぐ近くに、何食わぬ顔でおでんの屋台をやっているオヤジがいました。
子ども「おっちゃん、大根ちょうだい」
オヤジ「おぅ、ちょっと待ってな。今日の大根は味がしみててうめェぞー」
おしまい。