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マスターテイラーという名の、ヨーヨーの名人がいました。
彼は、2010年代前半の第3期ハイパーヨーヨーを支えたヒーローで、特撮ドラマやCMにも出演。
超カッコイイ!
その正体はナオキさんという大道芸人でした。
最近、そのナオキさんがツイキャスをしておられます。
そして、12月19日。
『たけしの挑戦状』について、ナオキさんはこう語りました。(配信の1:46:40くらいから)
『たけしの挑戦状』っていう、いわきつくのゲームがあって……。
(中略)
攻略本を見てもクリアできないっていうクレームが殺到して、そこの編集長が自殺しちゃったの。マジで。
これに対して、ツイキャスの視聴者から「可哀想」「えぇ…」というコメントが付いて、ナオキさんが答えます。
そう、一言でいうと、マジでかわいそう。
だからさ。家族とかもかわいそうだぜ。
テ、テイラー!?
「担当者は死んだ」
この件については、当時の関係者のインタビューが存在します。
『たけしの挑戦状』の攻略本を出した会社の社員で、実際にクレーム電話の対応をした落合さんによると……。
落合 だって当時、一日四〇〇件ぐらい苦情と問い合わせの電話がかかって来るんだよ。私なんか一日、本当に電話ばかり受けてて、腕が腫れたもん。もう最後には「担当者は死んだ」って言ってたよ(笑)。
── ハハハハハ!(爆笑) 「担当者は死にました」。
落合 そうそう(笑)。そしたら「……そうですか」って納得してくれたけどね。
(『超クソゲー』10頁)
……ということで、この件がどこかで歪んで、「自殺しちゃったの。マジで」になったと思われます。
仮説A:噂が走ってしまった
めちゃくちゃ素直に考えると、こんな感じでしょうか?
- 攻略本の会社に電話した子どもが、「担当者は死んだ」と言われる
- その話を友達にする
- さらに、友達の友達に……と伝わっていく
- 伝言ゲームの過程で、「死んだ」が「自殺した」になった
そういえば当時、「高橋名人が逮捕された」というデマが、クチコミだけで、日本中の子どもに拡散しました。
1987年1月1日の『朝日新聞』を見ると……。
……などと新聞に書かれるくらい、当時の子ども界では、空前の流言飛語ブームでした。
『たけしの挑戦状』も1986年12月発売で、まさに高橋名人逮捕説のころです。
当時、「実はドラえもんは、のび太(事故で植物状態)が見ている夢だ」みたいな、ブラックな噂が広まりやすいようでした。
そんな感じで、「『たけしの挑戦状』による自殺」も、どこかで噂になっていたのかも知れません。
ただ、ナオキさんは1985年11月生まれで、『たけしの挑戦状』の発売時、1歳になったばかり。
少なくとも、当時の噂が直撃したわけではなさそうです。
(90年代になって、噂を知っている上級生から聞いた……みたいなことはあるかも知れません)
仮説B:記憶が歪んでしまった
人間の記憶というのは、あまり信用なりません。
それは巻き戻しボタンを押して直接録音を再生するようなものではない。
その代わり、われわれは、どうであったか、どうであるべきだったか、どうあってほしかったかという自分の考えによってろ過され、変容された、実際の出来事のばらばらの断片を寄せ集めて記憶を再現するのである。
(『ザ・ソーシャル・アニマル』142頁)
人間の記憶が簡単に変容することは、いろいろな実験で確かめられています。
なので、単純にナオキさんの記憶違いということも、あり得ると思います。
さて、ナオキさんは、コメントで「クソゲーオブザイヤー」の話を振られたときに、こう返事をしています。(配信の1:46:17くらい)
クソゲーオブザイヤーなんてあったよね。『超兄貴』とか載ってるやつでしょ?
この「クソゲーオブザイヤー」→「超兄貴」という連想には、やや違和感があります。
どうも、クソゲーオブザイヤーの話を振られて、『超クソゲー』という本のことを思い出したみたいです。
そして、この『超クソゲー』こそ、先ほど引用した落合さんのインタビューが載っている本。
つまり、ナオキさんは、例のインタビューを過去に読んだことがあるっぽいのです。
- 当時12歳のナオキさんが、「担当者は死んだと答えていた」というインタビューを読む
- それから21年間で、記憶が変容する
- 「担当者の死」という断片から「担当者は自殺した」になった
無理があると思われるかもしれませんが、なにせ、20年前に読んだ本の記憶です。
記憶力が良くても、そのくらいの変容はあります。
証言募集
そんなこんなで、『たけしの挑戦状』で死人が出たという話でした。
いまのところ、
- もしもナオキさんしか言っていない話なら、よくある記憶違い?
- ナオキさん以外にもこの話を聞いたことがあるひとが多いなら、昔、そういう噂が流れた?
……という印象です。
私は初めて聞いたのですけど、私が知らないだけで、そのような都市伝説があったのでしょうか?
ネットアイドルちゆは、テイラーを応援しています。