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カントパーニのショッピング

カントパーニの品揃えといえば、薬草(4)、広刃の剣(2D6)、竹笛(1D6)、グランドレイガーの斧(7または2D6)、歯が入った袋(3)、宝石(10)。

このうち、3品しか買うことができません。

ゲームの最序盤のイベントなので、色々と印象深いところだと思います(私も初プレイで宝石を買いました)。

まあ、宝石以外はどれも有用なアイテムなので、好みで選べばよい場面だと思います。


●竹笛はすぐに役に立ちますし、地味に有効なので私はだいたい買います。ただ、カートゥームなどの強敵には通じませんし、欠かせないアイテムというほどでもなかったりします(中級以下の敵との戦いが楽になるという感じで、ドラクエでいえばトヘロス的なものだという印象があります)

●広刃の剣(ブロードソード)は、ノーペナルティで攻撃力+1。非常に良い品ですが、個人的には、ラグナーの剣術熟達の腕輪(攻撃力+2)とダンパスの剣(攻撃力そのままでダメージが3に増える)の組み合わせが好みなので、普通のプレイだとスルーすることが多いです。

その後、さらに鎖かたびらで+1(?)。大蛇を殲滅して+2。念のために武闘の籠手や幸運のお守りも装備して、通巻プレイのアナランド人は、たとえキャラメイク時に技量で「1」を振ったとしても、十分強くなります。

とはいえ、技量で「1」を振った魔法使いの場合などは、ダンパスの剣よりもカントパーニの剣を使う方が死亡率が下がるはずです(低ステータスプレイなら、たとえ値段が金貨12枚でもカントパーニの剣を買うべきだと思います)。

●斧はストーリー的には面白いですし、2巻をクリアしたことがなければぜひ買うべきですが、個人的には、ヴィックさんの助けが必要ないルートを通る前提で、買わないことが多いです。

●歯の入った袋は、それほど重要ではないのですが、個人的には、ゴブリンをマンティコアの生け贄にしたりするのが好きで、わりと買います(低ステータスプレイなら剣を優先します)。

よく迷うのは、スナッタキャットの歯を1本差し出すことで、グランドレイガーさんはエールを飲ませてくれるのだろうかという問題です(「旅の途中で手に入れた品」という条件には相違ないのですが……)。

また、黒エルフとの物々交換に歯が使えると仮定すると、黒エルフの商人がサルの歯に金貨10枚の価値を見い出したりするわけですが、なにか違うような気もします。

もしも歯の1本を交換アイテムとして認めるならば、この袋の価値は非常に高いと言えます。でも、なんとなく、袋は全体でアイテムひとつと考えた方がフェアな気はします。

同じように、ヒル・ジャイアントを倒した後の「役に立つと思うなら、ジャイアントの体のどの部分でも持って行くことができる」にも迷います。つまり、ジャイアントの眼球を差し出すことで、グランドレイガーさんはエールを飲ませてくれるのだろうかという問題です。

もしも歯が1本単位で交換材料にできるとしたら、ジャイアントの歯を全部ひっこ抜いておくと、フェネストラさんから大量の触媒をゲットできます。しかし、なんとなく、それは作者が想定している処理ではないような気はします。

(フェネストラさんについては、金貨1枚を「魔法の道具」と見なせるのか問題もありますが、個人的には、そういうのはNGという脳内ルールで遊んでいます)

●薬草は、ダイス運が悪くて体力を削られたときの保険になります。特に、カントパーニで買える薬草は、DOCを使えるタイミングではなくても体力を3回復できるという、『ソーサリー』世界では貴重な回復アイテム。有用性は他の商品に劣りません。


なお、ニコニコ動画に投稿されている動画「アイドルたちの『ソーサリー!』」のコメント欄では、次のような感じになっています。

342 斧だ・・斧を買うんだ
182 剣 斧 笛買おうぜ
386 歯の入った袋だろjk
627 笛と薬草と剣!斧は面白いけど正直いらない
112 ブロードソードが一番役に立った記憶が
583 おの
270 剣だ剣
311 剣はダンパスで買った方がよくない?
475 歯が入った袋は便利だぉ。あと笛か広刃の剣。
584 斧
527 斧歯笛
545 でも、笛を使う場面って少なくない?
542 斧笛剣以外ないな
183 うん笛はいるね
579 斧笛歯
369 歯はよく買った覚えがあるなw
330 個人的には笛、剣、斧が最適解かな。
528 JIGは地味に便利 消費体力1だし
313 グランドレイガー涙目ww
543 ああああ斧買っとけば2巻で無双なのに
586 斧あああああああああああああああ

やっぱり、剣・斧・笛・歯が人気で、薬草は少数派ですね。


あと、この動画の中の主人公がスナッタキャットやサルの歯をすぐに捨ててしまうのは、たぶん、上記のような問題をスルーするための措置ではないかと勝手に思っています。やっぱり、あつかいにくいところですよね。

それから、この動画が火の蛇を討ちもらすルートになっているのも、なんとなくわかるような気がします。

火の蛇から得られる情報は「スログの食料庫のものを食うな」ですが、そもそも「スログの食料庫」は入った時点で詰んでいる場所なので、この情報は特に役に立ちません(むしろ食料庫を通るのが正規ルートだとプレイヤーをミスリードする罠と化しています)。

火の蛇のイベントは七匹の大蛇の中でも特に面白いですが、そのルートだと黒エルフの隊商を外すことになりますし、七匹の大蛇のどれかを討ち漏らす展開でストーリーを組むなら、やっぱり火の蛇になりそう……という気がします。

あと、この動画におけるジャンのあつかいも、すごく共感できる気がします。

知識なしにZEDを唱えたときの描写や、ZEDを使わずにバードマンを呼んだときの描写などから、スティーブ・ジャクソンにジャンを助けるつもりがないことは察せられます。

しかし、つらい旅のあいだ、主人公を助けてくれる人こそは多かったですが、ともに旅をする道連れになったのはジャンだけ。それなりに愛着もわくものです。

しかも、ZEDのことや大魔王の正体など、終盤にもっとも重要な情報を教えてくれる恩人でもあります。

羽をもがれて囚われたままで終わりというのは少しかわいそうで、冠を確保して空を飛びながら、ついでにジャンを助けていけないものかと、いつも思っていました(少なくとも、見知らぬ下着姿のオッサンよりは、ジャンを助けたいです)。

なので、この動画の終盤の展開は、私としてはすごくうれしかったです。

アリアンナのご褒美

アリアンナの外見については、本文でハッキリと「若い女、それもとびきりの美女」と書かれています。

おそらく、『ソーサリー』の登場人物で、もっとも容姿が良いのはアリアンナだと思われます。

しかも、挿し絵を見る限りでは、たぶん巨乳です。

アリアンナさん
「とびきりの美女」の
アリアンナさん

豊かな胸の女
「豊かな胸の女」の
モブ(比較用)

また、アリアンナの家はきちんと片付いており、料理も好きらしく、家事も得意だと思われます。

それでいて、魔法使いとしての実力は、主人公に技量マイナス2の呪いをかけるほどです。

さらに、エルヴィンのイタズラによって、自宅でオリに閉じ込められているというドジッ娘でもあります。

おまけに、「あなたのさまのおかげで出られました。アリアンナのお礼を受けてくださいませ」と素直に感謝を述べてから、「このアリアンナは、戦いもせずにほうびの品をあげたりしませんわ!」と照れ隠しに攻撃してくるツンデレです。


さて、そんなアリアンナの「ほうびの品」は、戦闘に役立つ品か、魔法に使う品か、好きな方を選ぶことができます。

前者は、ラグナーの剣術熟達の腕輪(攻撃力を決めるダイスの出目を+2)。

後者は、にかわの入った瓶、鼻栓、玉石4個。

どちらを選ぶ方がお得なのか、覚え書き程度に書いてみます。


まず、ここで手に入る魔法の品は、その後の冒険のなかで、それほど役に立つ機会がありません。

鼻栓は、カーレでレッドアイから逃れてノームの小屋に入るには有用ですが、それだけが目的ならジャイアントの歯で代用可能です。また、それ以外のルートを通ることもできます(マカリティック戦までには鼻栓がぜひ欲しいですが、それはアリアンナ以外からの入手で十分です)。

にかわの入った瓶は、あまり使える機会がありません(ヴァンゴーンから逃げるときなど、あると良い場面はあります。ただ、ゲームに慣れていれば、にかわの瓶は使わないルートで進むでしょう)。

玉石も、あまり使える機会がありません(カーレに入るときの体力消費を1減らしたりできますが、メリットとしては微妙ですし、ほとんどのプレイヤーはDOPを使うでしょう)

一方、ラグナーの剣術熟達の腕輪は、その後の生存率を確実に上げます。

『ソーサリー』では、たとえ魔法使いであっても、呪文で解決できず、剣で解決しないといけない障害がいくつかあります。

そして、ゲームの内容を覚えるほど、呪文で解決できる問題で死ぬことは少なくなり、呪文で解決できない問題でのダイス運によるダメージを減らすことが重要になっていきます。

特に、キャラメイクの技量で低い目を振った魔法使いは、呪文で解決できない場面への対処が切実になります。

たとえば、キャラメイクで「1」を振った魔法使いは、技量が「5」になります。それで技量「8」のフランカーと呪文なしで戦う際には、腕輪があるかないかで大違いです。

そんな感じで、魔法使いにとって死亡率の高いポイントで劇的な効果があるのが、ラグナーの剣術熟達の腕輪です。

魔法の品の恩恵はそれと比べるとかなり低く、有用性だけを考えるなら腕輪一択だと思います。

プレイヤーとキャラクターの違いに悩むこと

ゲームブックというものは、基本的に覚えゲーです。

右の道か左の道か、扉を開けるか開けないか……といった分岐は、プレイヤーの記憶を基づいて正解を選んでいかないと、ほぼクリア不可能です。

しかし、すべてをプレイヤーの記憶に基づいて進むのは、違うような気がします。

たとえば、カーレの北門を開く4つの呪文は何か……といったことは、たとえプレイヤーが暗記していたとしても、そのプレイ内で主人公が呪文を集められなかった場合は正解に進んではいけないはずです。


個人的に、そのあたりの線引きに迷います。

たとえば、火の蛇の弱点について。

まず、火の蛇と戦う前に、火の蛇の弱点を教えてくれる人はいません。

※火の蛇と戦う機会がなくなった後でなら、フェネストラさんに教えてもらえます。

しかし、選択したルートによっては、「砂をかぶって蛇の炎は揺れ動き、やがて消えた」という様子を、主人公自身が目撃することができます。

このイベントによって、やつの弱点は砂だとプレイヤーと主人公が見抜く……というのが正規のルートでしょう。

でも、黒エルフの隊商で鎖かたびらを買うルートを選ぶと、このイベントは発生せず、予備知識なしで火の蛇と戦うことになります。

もちろん、火の蛇の弱点を知らなくても、火の蛇に対して砂を投げる選択は可能です(選択肢は出てきます)。

しかし、はじめて火の蛇を見た主人公がいきなり砂を取り出して蛇に投げつけるのは、あまりにも不自然です。

なので、個人的には、「弱点を知らない場合、火の蛇に砂をかけるのはNG」という脳内ルールでプレイしています。


しかし、そういう脳内ルールの場合……。

たとえば、マンパンの砦の衛兵の人数を知らない主人公が、ちょうどすべての衛兵が通り過ぎたタイミングで突破を図って良いものでしょうか。

これについては、個人的には、プレイヤーの記憶に基づいて良い、という脳内ルールにしています。

というのも、これをNGにした場合、主人公が右に進むか左に進むかという選択もサイコロを振って決めることになり、ほぼクリア不可能になってしまうからです。

なので、左右のどちらを選ぶか、1から4のどれを選ぶかといった偶然の範囲では、プレイヤーの記憶で最善の選択をしても良いという脳内ルールにしております。

※敵に砂をかけるといった不自然な行動については別、という思想です。


あと、私が迷うのは、3巻からスタートした魔法使いが緑色のかつらを1:2トレードでフェネストラから入手することが、やや不自然ではないかという件です。

緑色のかつらは、そこで持っていなければ確実に詰む必須アイテムですが、フェネストラと物々交換をする段階の主人公の視点で、緑色のかつらが重要だと考える理由が見当たりません。

とはいえ、フェネストラがすべての魔法の触媒を持っているのは緑色のかつらがない場合の救済を兼ねているような気はします。また、3巻スタートの主人公にとって、かわりに触媒を2つ差し出すのは安くない代償です。

これについては、OKだと考える方が、作者の意に沿っているような気がしないこともありません。

いちおう、個人的には、自然な展開のために、緑色のかつらはなるべく3人のホースマンから強盗するようにしているのですが、ホースマンはかなりの強敵なので、そうすると3巻スタートの難易度は上がります。

また、そうするとホースマンから月の蛇の弱点を聞けないので、弱点を知らない月の蛇にHOTを使うのはどうなのか問題も付いてきます。

相手がマンティコアだろうと大魔王だろうとHOTを唱えることはあるわけで、たまたま月の蛇にHOTを使うのは十分アリだと思うのですが、七匹の大蛇に限っては、情報を得ていない弱点を突くのは禁止という脳内ルールでプレイしたくなるのが人情です。


……と、いちおう自分ルールではそんな感じです。

しかし、マンパンの砦で無数のデストラップを偶然避けながら進む主人公の姿を見ていると、はじめて見る蛇にいきなり砂をぶっかけるよりももっとすごいミラクルを起こしているような気はしないでもありません。

キャラクターメイクで悩むこと(あるいは、4巻からスタートしたアナランド人の生存戦略について)

『ソーサリー』の主人公の能力は、最初にサイコロを振ってランダムに決めます。

体力は12+2D6。運勢は6+1D6。

そして、技量は、魔法使いなら4+1D6、戦士なら6+1D6です。

なんとなく、「1」を振ったときと「6」を振ったときで難易度が変わりすぎるような気はします。

技量で「1」を振った戦士は、技量で「4」以上を振った魔法使いに対して、戦闘能力で劣るのに魔法も使えないという下位互換野郎です。

(厳密には、時の蛇に対応する手順の違い、体力を消費しないZEDの代替手段があるといった点で、完全な下位互換ではないのですが、それらを考慮してもほぼノーメリットで、技量で低い目を振った戦士の悲哀は半端ないです)

というか、このゲーム、4巻スタートだとキャラメイクで低い目を振った時点でほぼ詰むような気がします。


たとえば、4巻からスタートした魔法使いの場合。

最初のスローベン・ドアのカギを入手するため、2人の衛兵と戦って倒します(この戦闘は呪文で回避できません)。

その後、マカリティックに悪臭の呪文を使って体力マイナス1(または戦闘)。

食事で体力を2回復。

守銭奴ヴァルギニアから情報を得たのち、衛兵に囲まれるピンチを「樫の木の槍」(通称・秘剣電光丸)で凌いで体力マイナス4。

拷問の名手ナッガマンテの部屋に入るとき、運試し成功で体力マイナス1、運試し失敗で体力マイナス3(4巻スタートなので鍵は未入手。ナッガマンテには呪文を使わず金貨10枚で)。

衛兵隊長カートゥームに幻影の呪文を使って体力マイナス1(または戦闘)(4巻スタートなのでロケットは未入手)。

眠れぬラムとの戦闘で、流砂の呪文を使って、体力マイナス9で2回運試し(または、呪文を使わずに体力マイナス8で3回運試し)(4巻スタートなので瓶は未入手)。

この時点で体力が2以上残っていれば、ファーレン・ホワイデの部屋でDOCを使えるので体力を全快。あとは何とかなります。

樫の木の槍

※何か間違いや見落としがあったら申し訳ございません。もっと効率の良い方法があるかもしれません。


さて、カートゥームや眠れぬラムを呪文なしで凌ぐとしても、電光丸(-4)・拷問部屋(-1)・眠れぬラム(-8)で、最低でも「13」は体力が減ります。

もしも体力でピンゾロを振ったら初期値が「14」になるため、あふれんばかりの強運に恵まれたとしても、ファーレン・ホワイデの部屋で体力が「1」になっています。

体力が残り「1」でもDOCが使えると解釈するなら、体力ピンゾロでも4巻は理論上クリアできると思います。

ただし、その場合、2人の衛兵とマカリティックで受けるダメージを合計「2」以下に抑えて、カートゥームを無傷で倒し、拷問部屋と眠れぬラムで運試しを4回連続成功する必要があります。

これは、技量や運勢が高くても相当厳しいですし、技量や運勢が低ければ絶望的な確率になります。


そんな感じで、4巻からスタートする場合は、キャラメイクで技量・体力・運勢がまんべんなく備わっていないと、非常に厳しい戦いになります。

そこそこの能力がある想定で考えてみます。

体力「1」でDOCを使うと死ぬと解釈すると、最後のスローベン・ドアを開けた時点で、体力が「2」以上残っているかどうかが分かれ目です。

通常、カートゥームや眠れぬラムには呪文を使う方が無難ですが、その場合、最後のスローベン・ドアまでに確実に減る体力は「15」ポイントになります(拷問部屋の運試しに失敗すると、さらに2ダメージ受けて「17」ポイントが減ります)。

つまり、「2人の衛兵と戦って残った体力」から、1を引いて2だけ回復した値が「17以上」(拷問部屋の運試し失敗時は「19以上」)ならば、4巻をクリアできることになります。

※1を引くのは、マカリティックに悪臭の呪文を使ったという仮定で。2の回復は、その後の食事休憩。そこから15または17削られた上でDOCを使うには、17または19が必要という解釈です。

つまるところ、最初のスローベン・ドアのカギを守る衛兵2人と戦ったところで体力が17~19くらい残っていれば、あとは運試しの結果次第で4巻がクリアできる、という感じになります。

※DOCの解釈にもよります。また、体力が15以上あれば、カートゥームと戦って無傷で倒したり、眠れぬラムに呪文を使わずに運試し3回……といった方法でクリアの可能性が残ります。

そんな感じで、技量にもよりますが、4巻スタートの魔法使いは体力が最低でも17、できれば20以上ないと、だいたい死ぬと思います。

※技量が高ければ17でクリアできることもありますが、ちょっと出目が悪ければ衛兵にポコポコ削られますし、やはり、平均以下の体力だと厳しいです。


もちろん、私は『ソーサリー』のゲームバランスが悪いとは思っておりません。むしろ逆です。

たとえキャラメイクで低い目を振っても、通巻プレイなら十分に対処できます。

単巻プレイでも良い感じにギリギリのバランスになっていて、楽しめるようになっています。

4巻については前述の通り、すべてを知った上でクリアできるかどうか際どいです。3巻でも大蛇を全部倒すなら似たような感じですが、大蛇を倒す数を減らせば低ステータスでも切り抜けられます。そういったことが計算された作りになっていて、この辺、まるで『ドラえもん』のコマ割りを見るような完成度の高さを感じます。

(キャラメイクもランダムで、戦士と魔法使いがあって、単巻プレイと通巻プレイがあって……と、これだけプレイの幅を広くした上で、それぞれのプレイ方法でバランスが取れているのはすごいです。たとえば、1巻の場合なら、戦士にとって最大の障害はマンティコアで、内容を把握している魔法使いにはフランカーが一番の問題になるわけですが、ほかの巻でもそんな感じで、プレイ方法によってポイントが変わりつつバランスが取れています)


ただ、それでも、4巻スタートで体力にピンゾロを振ってしまったときなどに、とりあえず死ぬまでプレイすべきか、脳内で死んだことにして次のキャラを作り直すべきか、ちょっと悩みます。

なんと申しますか、キャラクターを作り直すというのは、サイコロを振り直すということでして、サイコロを振り直すなんてゲームの面白さが半減するわけですが、だからといってほぼ確実に詰むとわかっていてプレイするのも何か違うというか……。

結局、自分の場合は、低い目を振ったときは3巻スタートに切り替えたりしているのですが、こういったことで悩むのは自分だけじゃないですよね? ……みたいなことを、一度書いておきたかった次第です。

4巻からスタートした魔法使いに関する余談

守銭奴ヴァルギニア、拷問の名手ナッガマンテ、衛兵隊長カートゥームという濃厚な3人に比べて、最初のスローベン・ドアのカギを守っている2人の衛兵は名前もなく、単なる前座のように思われていることが多い気がします。

しかし、前述の通り、4巻スタートの魔法使いにとっては、呪文で対処できない衛兵2人との戦いこそが王たちの冠を奪還できるか否かの天王山

最初のスローベン・ドアも、構成上、なにげに重要なポイントになっていると思うのです。


もちろん、4巻スタートの魔法使いにとって、もうひとつの正念場は眠れぬラムです。

4巻の序盤で原運勢が2も上げられるようになっているのが救いですが、キャラメイク時の運勢で「1」を振ったりすると、2D6で8以下を出してから、さらに2D6で7以下を出さないと即死といった状況になります(つまり、58%くらいの確率で死にます)。

眠れぬラムには何度殺されたか分かりませんが、2巻から伏線があって、3巻で対策を手に入れて、4巻の終盤で満を持して登場する最も危険な敵というだけあって、さすがの強さという感じでした。

大魔王が完全体ならそれ以上に強いのでしょうが、プレイヤーの感覚だと、実際に太刀打ちできない眠れぬラムや表紙の人の方が凄味を感じてしまいます。

(※表紙の人……大魔王の影武者っぽい、半月メガネの男。旧版では表紙でした。主人公の呪文はすべて打ち破り、武器で戦うことすら許されないという強さはインパクトがありました)

あと、まったくの余談ですが、私は、眠れぬラムに実際に遭遇するまで、「眠れぬラムを眠らすためシャムを探し出すがよい」というヒントから、ラムという名前の不眠症の男のイベントがあるのだと思い込んでおりました(小学生には「ラム」とかローマ数字とかが難しかったのです)。


なお、シャムに会わずに眠れぬラムを切り抜けると、ほとんどの場合、ZEDを使う体力が残らないので、ファーレン・ホワイデの部屋での回復が必須になります。

ここで回復できなければ詰みます。

なので、4巻スタートの魔法使いにとっては、DOCはZEDと並ぶ重要な呪文になります。

回復手段が限られる『ソーサリー』では、体力を一気に回復できるDOCは非常に強力な呪文なわけですが、とりわけ、リーブラの助けがないマンパン砦では輝いて見えます。

3巻まででもDOCの有用性は高く、やっぱり、カントパーニの薬草はもう少し評価されて良いと思うのです。

初級ゲームという名の初級じゃないゲーム(すなわち、戦士プレイについて)

『ソーサリー』では、戦士でプレイするのが「初級ゲーム」、魔法使いでプレイするのが「上級ゲーム」だということになっています。

しかし、たぶん、基本的に初級ゲームの方が難しいです。


たとえば、1巻から4巻までを通してプレイする場合……。

「上級ゲーム」なら、プレイヤーがある程度内容を把握していれば、おおむね問題なくクリアできます。

※初期ステータスが低い場合は、確実にクリアできるとは言えません。

1巻は無問題(最大の難所はフランカーですが、キャラメイクの技量で「1」を振ったとしても、カントパーニの剣と腕輪で攻撃力+3。技量8相当ということで、フランカーと互角に戦えます。フランカーは体力が低いので問題ないでしょう)。

2巻では、たまに死にます(初期能力が低いと死霊が難所です。たとえば、キャラメイクの技量で「1」を振ると、腕輪のボーナスも得られない銀の弓矢で死霊に勝つのは無理で、リーブラだのみになります。しかし、リーブラの助けを得るにも、剣で2回攻撃を当てなければいけません。カントパーニの剣と腕輪で技量8相当になっていても、死霊は技量9。2回攻撃を当てる前に殺される可能性は十分あり、低能力プレイではけっこう恐いところです)

3巻では、大蛇の殲滅を目指すと、たまに死にます(水の蛇と遭遇するには、失敗すると即死の運試しがあります。キャラメイクの運勢で「1」を振ると、1巻で原運勢がひとつ増えていても運勢8。幸運のお守りがあっても、2D6で10以上……16.7%で死ぬといった条件になります)

4巻では、大蛇を殲滅していないと、まれに死にます(技量で「1」を振った魔法使いが大蛇を殲滅していないと、技量5で扉の破壊に挑まねばなりません。※剣や腕輪の攻撃力ボーナス、鎖かたびらの技量ボーナスは、この判定で原技量に上乗せできるものではないと考えた場合。技量5だと、2D6で4以下を出すまで体力が1ずつ減ります。原体力が14とかだと、16.7%が出る前に死ぬときがあります。死ななくても体力を削られすぎると、大魔王に殺される可能性も出てきます)

しかし、「初級ゲーム」だと、最善を尽くしてもマンティコアに殺される可能性がけっこう高いです。

キャラメイク時の技量で「1」を振った戦士は、腕輪とブロードソードを手に入れても、技量10でマンティコアに挑むことになります。

マンティコアは技量12、体力18。その攻撃を受けた場合は、3分の1の確率で毒の尻尾(運試しに失敗すると6のダメージを受ける)という凶悪なスペック。

主人公側にも、リーブラによる回復、薬草による回復、幸運のお守りによる運試しの出目の補正などがありますが、それでも分が悪く、低能力プレイでは厳しいです。

※通巻プレイの場合、マンティコアさえ切り抜ければ、2巻以降はおおむね問題ありません。

(通巻プレイが『ソーサリー』の醍醐味ですが、難易度としては、各巻を個別にプレイする方が厳しいです)


2巻スタートの場合は、一番厄介な死霊にリーブラで対処できることもあって、「初級ゲーム」でもおおむね問題はありません。

※とはいえ、技量の初期値が低いと、死霊相手にリーブラを呼べずに殺されるケースは恐いです。

※あとは問題ありませんが、北門の衛兵に呪文が使えないために金貨が足りないと詰むなど、「上級ゲーム」にはない落とし穴に気を付ける必要はあります。

※ついでに、2巻スタートの場合、フランカーやヴィックのコネがないので、序盤のルートが限定されることも留意点になります。

(北門の呪文が足りない場合の「もう一度最初から出直すほかはない……」をステータスを持ち越してコンティニューと解釈すれば、色々と事情が変わります。しかし、北門の衛兵を買収する金貨が足りない場合に「あなたの旅もここで終わる……」なのですから、「もう一度最初から出直すほかはない」はメタな意味で解釈すべき、という脳内ルールで遊んでいます)

3巻スタートでも、七匹の大蛇は全員弱点があるという設定上、一部を除いて比較的なんとかなります。

※「鎖かたびらの入手と大蛇の殲滅を両立させたい」といったことがあると、火の蛇とガチで殴り合う必要が生じたりして、かなり厳しくなります。

※また、戦士だとフェネストラさんと打ち解けることができないと解釈すると、油を入手できず、水の蛇を倒したければガチで殴り合うことになります。

(水の蛇の技量が10と低めなのは、それを想定しての設定かもしれません。いちおう、技量で「1」を振っても、鎖かたびらと蛇の杖があれば互角という感じです)

(実際のところ、戦士がフェネストラさんと打ち解けることができるのか否かは、微妙だと思います。「呪文の知識を披露し合いながら雑談した」という記述が引っかかるのですが、戦士でも「ルーン文字の知識がいくらかある」という設定ですし、フェネストラさんと談笑できる程度の教養はあるのかもしれません)

※もちろん水の蛇については、遭遇する前の運試しもハイリスクです。

※大蛇の殲滅にこだわらなければ多くの障害をスルーできるので、3巻のクリア自体は簡単です。また、3巻スタートでの大蛇殲滅もギリギリ可能なバランスになっています。


それでは、4巻スタートの「初級ゲーム」はどうでしょうか。

最初に「1」を振った4巻スタートの戦士の技量は「7」。もちろん、NIF、GOD、MUD、DOCといった便利な呪文は使えません。

しかし、体力が4回復する謎の果物を4つも持っており、ZEDで消費する体力を考慮する必要もありません。

なにより、最初に「1」を振った魔法使いより技量が「2」も高いのは大きいです。

まず、スローベン・ドアのカギを入手するため、技量8&技量7の衛兵と戦います。片方の技量は3減らせるので、それほど厳しくはありません。

次の戦いは、マカリティック。敵は技量8・体力9で、3回ダメージを受けた時点で敗北。ここは死ぬ確率の方が高く、厳しい戦いです。

※ここで錆びた剣(これで戦う場合は通常の剣よりも技量-1)を入手できます。

それから、食事で体力を2回復。樫の木の槍で衛兵を凌いで体力-4。運勢を回復できるポイントが少しあります。

※バードマンの刀かけは「あなたが剣を持っていないなら、このなかの一本を取ってもいい」との記述なので、予備の剣としては持って行けないと解釈。

※バードマンを倒すと「もし剣が必要なら、一本持って行ってもいい」との記述で、強引に解釈すれば、錆びていない予備の剣を入手してよいのかもしれません(しかし、技量8~9のバードマン3人とここで戦うのは厳しすぎます)

続いて、拷問部屋で運試し(成功なら体力-1、失敗なら体力-3)。

それから、武器を研ぐ機械の部屋。運試しに成功すれば、メインの剣と錆びた剣を研いで、攻撃力を上げられます。

※特に制限もないので、メインの剣と錆びた剣の両方を研いだことにして良いと解釈しています。

(技量で「1」を振った戦士の場合、ここで運試しに失敗して武器を研げないと、衛兵隊長や大魔王との戦いが苦しくなります)

(眠れぬラムでの死亡率を下げるために、運試しをしないという選択もあるかもしれません)

そして、衛兵隊長と対決。技量8が2人に、技量7が1人。主人公は技量8(武器を研げなかったら技量7)なので、楽な戦いではありません。

さらに、眠れぬラム。運試しに失敗すると体力-2。さらに運試しを2回行い、1回でも失敗すると即死。切り抜けても体力-8。鬼か。(※羊です)

※原運勢は2つ上がっているものの、拷問部屋と機械部屋で、運試しを2回しています。そこから、ラムに1回運試しをした上で、失敗すると即死の運試しを2回することになります。つまり、基本的には、5連続で運試しをして、最後の2回は失敗すると即死といった感じの、厳しい条件になります。

それから、技量で扉を破壊して、体力が少し減少。

恐ろしいことに、戦士プレイだと、ここで表紙の人に武器を奪われてしまいます。

「こんなこともあろうかと錆びた剣に持ちかえていたのだ」という脳内設定なら、錆びた剣を失うだけで済みます。しかし、いよいよ大魔王の部屋だと考えている主人公が、このタイミングで武器を錆びた剣に持ちかえるのは極めて不自然。普通は、メインの武器を失うことになるでしょう。

(ここで奪われるのは樫の木の槍……という脳内設定ならありえなくないですが、樫の木の槍が「バターナイフを大きくしただけの物」と皮肉られるかは疑問です)

その後、体力を消費せずに時を越えた主人公は、ついに大魔王と対決。

技量7、体力7の大魔王を5ターン以内に倒さないといけません。

原運勢は2つ上がっているものの、拷問部屋と眠れぬラムで運勢が4~5は減っており、運試しの成功率は低く、あまりアテにできません。

錆びた剣を研いでいれば、技量7で対決。

そうでなければ、錆びた剣を手にラスボス戦。つまり、技量6で大魔王と戦います。

……そう、技量で「1」を振った戦士プレイでは、大魔王が脅威なのです(!)

※なお、錆びた武器すらなければ、技量4の絶望的な戦いになります。錆びた武器はロウソクの店でも買えますが、その後で武器を失うケースを考えると、アレは単純な罠というわけでもなかったりします(カントパーニの宝石とはひと味違います)。

※技量7での戦いなら、「5ターンのあいだに3回攻撃を当てて、1度運試しに成功」または「2回攻撃を当てて、2度運試しに成功」で勝利ですから、分は悪いですが、十分勝ち目はあります。

※何か間違いや見落としがあったら申し訳ございません。もっと効率の良い方法があるかもしれません。

私見・48の呪文の重要度ランキング

「最も役に立つ六つの呪文」は、ZAP、HOT、FOF、WAL、LAW、DUM です。

これらは、強力で応用力があり、「たいていの難問はこれだけで突破できる」けれど、消耗が激しくて効率的ではない……という話です。

たとえば、1巻で最大の強敵であるマンティコアも、FOF・HOT・WALの3連発で回避できます。

ただし、「最も役に立つ六つの呪文」を3連発すると、体力を12も消費します。

DOZ・GOB・WALなら体力の消費が7で済むので、プレイヤーが成長すれば、より効率的にマンティコアを退けられることになります。

ただ、「未クリアのプレイヤーが前回よりも先に進むために役に立つ呪文」と、「クリア済みのプレイヤーが初期ステータス最低値プレイでクリアを目指すときに役に立つ呪文」では、けっこう違います。

後者の意味では、「最も役に立つ六つの呪文」よりも重要と言える呪文もあります。

(むしろ、終盤になると、「最も役に立つ六つの呪文」はあまり役に立たないように設定されています)

そんな感じで、今回は、「ほとんどの場面で最善の選択肢を記憶しているプレイヤー」をいちおうの基準に、「使わないと生存率が下がる呪文」を重く見る感じでのランク付けを、独断で行ってみたいと思います。


重要度S:使わないと絶対にクリアできない呪文(戦士プレイの場合には特別な救済が用意されている呪文)

【ZED】 魔法使いプレイの場合は、使わないとクリアできません。ただし、プレイヤーが「ZED」の3文字を記憶していなくても問題ないので、覚えておく必要はなかったりします(むしろ、最初はジャンがそばにいる状況で「呪文をとなえる」を選択する気にならなくて別の選択をして死ぬと思います)。

【RAP】 魔法使いプレイの場合は、使わないと時の蛇で詰みます。『ソーサリー』全編を通して唯一、絶対に覚える必要がある呪文ということになると思います(ついでに、カーレの北門の衛兵を突破するのにも便利です)。

重要度A:プレイ条件によっては、覚えていないと詰みそうな呪文(途中スタートや低ステータスの場合を想定)

【DOC】 4巻スタートの魔法使いプレイで、キャラメイクの体力で「1」や「2」を振った場合は、途中でDOCを使わないと、ZEDを唱えるのに必要な体力が残らないので、DOCを覚えていなければ絶対にクリアできません。というか、かなり順調に体力を残せなければ、DOCを使わないと厳しいです。

【WAL】 魔法使いプレイでは、マンティコアとの戦闘を避けるための3つの呪文は覚えておかないと、ほぼ無理ゲーになります。3つめの呪文はWAL以外にあり得ないので、これを覚えていない場合は、相当な強運が必要になります。

(※WALは色々と便利なのですが、「巻が進むにつれて、基本になる六つの呪文が登場する回数は減っていきます」との記述の通り、後半戦ではほとんど役に立ちません。あと、3巻の最初でヨタカに唱えてひどい目にあったりします)

【HOT】 マンティコアとの戦闘を避けるための2つめの呪文(歯があればGOBやYOBの方が良いですが、カントパーニで歯を買うか、リー・キを経由する必要があります)。HOTはその後の大魔王戦(ZAPでも可)、月の蛇(火口箱でも可)、アリアンナ(JIGでも可)などと有効な場面が多く、重要な呪文です。

【FOF】または【DOZ】 マンティコアとの戦闘を避けるための1つめの呪文。どちらかは覚えていないと厳しいです(FOFと覚えてしまっている方も多そうな気がしますが、DOZの方が、残している体力が少なくても生き残れます)。

(※FOFは、竹笛がないときの盗賊戦やスナッタキャットにも有効ですが、序盤の障害をゴリ押し気味に突破するための呪文で、そもそも役に立つ場面が少なめです。DOZは、NIFのかわりにマカリティック対策になりますし、目立たないけど難所で使えるデキる呪文というイメージです)

【GOD】 ロケットを持っていなくて、大蛇も殲滅していない場合は、GODを使わないと、カートゥーム+衛兵2人(DIMで1人減らせる)と戦闘になります。技量が低い場合(4巻スタートの魔法使いで、キャラメイクの出目が低い場合など)は、技量8のカートゥームたちと戦うのはほぼ無理なので、プレイ条件によっては、このGODはほぼ必須だと思います。

(※なお、恥ずかしながら実物は未チェックなのですが、AFFのサプリメントでは、カートゥームの技量は「10」に設定されているそうです。実際、仮にもマンパンの衛兵隊長であり、JIGの発動前に竹笛をたたき落とす腕前を見ると、彼の技量は「8」よりも「10」の方が妥当な気はします。私が思うに、4巻スタートで技量で「1」を振った戦士など、プレイ方法によっては、カートゥームの技量が「10」だとほぼ詰むことがあるため、バランス調整の関係で「8」に抑えられているような気がします。つまり、ギリギリに設定されての「8」なので、技量の低い魔法使いなど、プレイ方法によっては、カートゥームとの戦闘を避けないとほぼ詰むことがある、というのが私見です。カートゥームには作り話で丸め込まれて涙を浮かべるお茶目でかわいそうなオッサンのイメージがありますが、実力はガチだと私は信じています)

カートゥームさん

重要度B:覚えていないと、けっこう不利になる呪文(特定のプレイ条件で、難所の回避に重要)

【MUD】 地の蛇と戦う前の、穴からはいあがる場面で、技量による判定なしで穴から脱出(技量が低いときは非常に助かります)。眠れぬラムとの戦闘で、最初の運試しを回避(この運試しは失敗しても体力マイナス2ですが、シャムに会っていない場合には、続く2回の運試しの前に運勢を減らさずに済むのが大きいです)。ないと致命的というほどではありませんが、途中スタートや低ステータスのプレイでは、MUDの有無は滅茶苦茶大きいです。

【NIF】 3回攻撃を受けると即死するマカリティックとの戦闘で確実に勝てるのは大きいです(技量が低いときほど重要。DOZでも問題ないですが、NIFの方が安定します)。ほかに、ナッガマンテ対策(TEL・金貨10枚・大蛇殲滅など代替手段は多数)、レッドアイから逃げてノームの小屋に入る(YOBでも可)など、地味に便利です。最悪、鼻栓がなくても呪文の効果は出るのも微妙に使い勝手が良いです。

重要度C:なくても良いけど、特定の厳しい場面で有用な呪文(具体的には、甲虫と死霊対策)

【SUN】 月の蛇と戦う前に遭遇する甲虫は、「1回攻撃するごとに」(こちらの攻撃が当たっても)酸を吐く難敵です。3巻スタートでは非常に厄介な敵ですが、2巻で太陽石を入手していれば、SUNで戦闘を回避できます。甲虫とまともに戦うと、そこまで致命的ではないとはいえ、体力や技量をゴリゴリ削られます。ここでSUNが使えるとだいぶ違いますし、気持ち的にもかなり楽です。

【LAW】 甲虫対策の太陽石を入手するには、恐怖のカマキリ男から生き残る必要があります。カマキリ男とまともに戦うと、ラウンドごとに27.8%で即死する判定があって非常に危険ですが、LAWで戦闘を回避できます。また、3巻冒頭のヨタカも地味に危険ですが、LAWで確実に回避できます。体力の消費が大きく、「知能の低い生き物」にしか効かない点にも注意が必要ですが、LAWは重要です。

【BIG】 甲虫にSUNが使えない場合は、次善策としてBIGの出番です(3巻スタートならSUNではなくBIG。酸によるダメージは避けられませんが、早く終わらせたい戦闘ですし、技量が低い場合にSUNもBIGもないと厳しいです)。それからいちおう、夜行性の生き物やヒル・ジャイアントとの戦闘などでも、技量2倍の効果は絶大です。

(※通巻プレイの場合は、ボリン皮のブーツを入手しておくことで、甲虫と戦わずに月の蛇と遭遇するルートもあります。このルートを念頭に置く場合は、SUNやBIGは特に重要ではなくなり、FALの重要度が高くなります。「ブーツだ! さあ、くれよ、さあ、さあ」)

【MAG】 幻覚の死霊に有効。技量9の死霊は、低ステータスの魔法使いにとっては難敵なので、けっこう大事です(DIMもある程度有効ですが、連戦で体力的にも厳しい場面で、DIMを使っても苦しいです)。ほかに、炎使いから金貨10枚&鏡をゲットなど、あるとうれしい呪文です。

重要度C-:なくても良いけど、特定の厳しい場面で有用な呪文(そのうち、特定の場面に遭遇しづらいケースや、呪文の効力が強くないケース)

【KID】 火の蛇といっしょに砂嵐で飛ばされたあとの、クラッタマンとの戦闘を回避できます。まともに戦うと、低ステータスの魔法使いには地味につらい場面なので、ちょっと楽になります。(とはいえ、ここで骨の腕輪があるプレイ方法なら、そこまでつらい場面ではないかも知れません。3巻スタートで大蛇殲滅を目指すと、この辺でよく死ぬ印象なのですが……。※火の蛇の弱点を知らないと砂をかけてはいけないという脳内ルールでプレイした場合)

【SAP】 ホースマンと戦う場合にはかなり重要な呪文になります(あと、いちおう、鎖職人、肖像画、クラッタマンのチャンピオン、バードマンなど、あまり通らないルートですが、そこそこ多くの場面でそれなりに役に立ちます)。

【FAL】 鉱山の落とし穴で、36分の1の確率で即死するリスクを回避できます(SUSで代用可)。ボリンの毛皮のブーツが欲しい場合(甲虫との戦闘を避けるルートで進みたい場合)に限っては、いちおう重要な呪文だと言えるかもしれません。ただ、ブーツが不要ならほとんど役に立たない呪文ですし、また、FALがなくても6ゾロを振る確率はそう高くなく、この呪文の重要度はもっと低く見積もっても良いかもしれません。(あと、疾風の角笛がない場合にはFALが火の蛇への次善策になりますが、FALでは大勢に影響なく、役に立つとは言いがたいです)

【SUS】または【HOW】 地下聖堂の入り口の罠で運試しに失敗すると、下水道に落ちてしまいます。確率は低いですが、ここで運試しに失敗し続けると、北門の呪文をそろえられなくなります。SUSかHOWを使って、運試しなしで罠を越えるのが無難だと思います。また、それ以外の場面でも、危険な選択肢の判別に色々と助けられます(プレイヤーが内容を記憶しているとあまり意味がなくなってしまいますが)。

重要度D+:なくても良いけど、よく通る場面で効率的な呪文(だいたいのプレイ方法で体力の節約になる呪文)

【HUF】 対大蛇の専用兵器。地の蛇(ZENや技量勝負でも可)、火の蛇(弱点をつかない場合はHUFなしでの火の蛇の打倒は困難)、気の蛇(別にHUFを使わなくても抜け殻を破壊すれば良し)と、大蛇のうち3匹に効果があります(大蛇以外にはほぼ役に立ちません)。少なくとも、地の蛇との戦いでは有用で、バクランドへ旅立つ主人公に疾風の角笛を渡したシャドラックさんの慧眼はさすがです。

【DOP】 アリアンナの檻やカーレの拘置所で便利な鍵開けの呪文。なくてもけっこう何とかなりますが、あると色々と少しずつ楽になります。

【JIG】 みんな大好き竹笛の呪文。カントパーニの盗賊(FOFでも可)、アリアンナのウッドゴーレム(HOTでも可)など、1巻でだいたい通ることになる障害を、少ない消費で確実に切り抜けられます。また、カーレで下水道に落とされるポイントを完全に把握できるまではスライム対策として重要ですし、いちおう、レッドアイからの逃走にも使えます。とはいえ、蛇使いのマナタ・月の蛇・衛兵隊長カートゥームといった強敵には通じず、後半では役に立ちません(買ってすぐ役に立つのが印象的ですが、実際のところ、使える場面は意外と少ない呪文です)。

【WOK】 安心と信頼のWOK。戦闘時の攻撃力の補正、イベントで受けるダメージの軽減などで大活躍。話が進むと使える機会が減っていきますが、序盤ではかなり有用で、いつも少し役に立つことを普通に評価するなら、FALあたりよりは遥かに有用な呪文です。あと、WOKで画像検索するとおいしそうです。

【DUD】 ノームとのトレード、カーレ北門の衛兵の買収(RAPでも可)、ガレー船からの脱出(ZAPでも可)、エルヴィンに見せる芸(GOBやSIXでも可)など、そこそこ役に立つ場面があります(特に、ノームには有用。衛兵の買収にはRAPの方が効率的ですが、普通、あの選択肢でRAPを選んだりしないので、多くのプレイヤーはDUDを役立てているものと思います)。

重要度D:なくても良いけど、覚えていると便利なときがある呪文(普通にクリアを目指してプレイするときには重要度Cの呪文よりも有用な呪文も多数)

ナッガマンテさん

【TEL】 ナッガマンテ対策(NIF・金貨10枚・大蛇殲滅など代替手段は多数)、マンパンのレッドアイ対策(KIN・最初から近づかない・会話で切り抜けるなど代替手段は多数)などで少し便利。ナッガマンテの拷問部屋を褒めるルートとしては、展開が自然なのが好きです(結果論でいえば、体力を消費しない金貨10枚からの会話が効率的ですが)。その他、プレイヤーが内容を記憶しているとあまり意味がなくなってしまう用途が中心ですが、色々と助けられます。

【ZAP】 『ソーサリー』を代表する呪文。ゴブリンや蛇を一撃で殺したり(オーバーキル気味)、拘置所の扉を破壊したり(DOPで良いのに)、さらし台やら船壁やら岩やらを破壊したり、基本的には力押しで問題を解決するときに使う魔法。消耗は大きいですが、だれもがそれなりに助けられたことがある呪文のはずです。ただ、スローベン・ドアを破壊できないのは当然だとしても、甲虫、ロック・デーモン、火の蛇、気の蛇、レッドアイなど、なにげに後半の強敵にはほとんど通じないのですが、大魔王を一撃で屠ったことでなんとなく面目は保てており、ZAPの権威が疑われることは少ないです。

ナッガマンテさん

【YOB】 マンティコア戦のHOTのかわり(GOBでも可)、レッドアイから逃げてノームの小屋に入る(NIFでも可)、地割れからの脱出(ZAPでも可。また、まっすぐ地の蛇を倒しに行けばスルー可能)など、たまに役に立つ場面はある呪文(マンティコア戦で役に立つ点をもっと重視すべきかもしれませんが、ほとんどの場合は素直にHOTでも良いので微妙なところだと思っています)。

【GOB】 マンティコア戦のHOTのかわり(YOBでも可)、エルヴィンに見せる芸、締り木からの脱出など、たまに役に立つ場面はあります。ハーピー戦などでカプセル怪獣的に使う機会もありますが、技量と体力の低いゴブリンは、純粋な戦力としてはあまり使えません(とはいえ、ある程度の敵までなら数でゴリ押しできます)。

(※JIGが「ほぼ必ず通るルート」での節約に必ず役立つのに対して、YOBやGOBは「通らないことも多いルート」とか「回避できる危機にハマったとき」に役に立つ感じで、歯と笛の優劣は趣味の世界になると思います)

【DIM】 鉱山のオーガに有用。また、鞭叩き、ハーピー、幻影の死霊、ホースマン、マンパンの入り口の衛兵、カートゥームなどにもいちおう有効です。回避できる戦いだったり、次善策だったりすることが多いのですが、幅広く使える呪文です。

【SIX】 カーレでクソガキどもに持ち物を奪われたとき(2巻スタートでフランカーやヴィックのコネがなく、ロータグの家に直接向かって、運試しに失敗した場合など)に、荷物を取り返せるのが便利。ほかにも、序盤では少し役に立つ場面があります(エルヴィンに見せる芸、スカンクベアなど)。ただ、あまり通らないルートだったり、ほかの呪文でも対処できるところではあります。後半戦ではイマイチ期待通りの効果を発揮してくれず、戦力よりも雑用向きというか、意外と弱かった四身の拳みたいな印象です。

【RAZ】 触媒が序盤で入手しやすく、ゴブリン、鎖職人、肖像画、飛魚、マンパンの衛兵など、そこそこ使用機会もあります。ダメージ2倍はけっこう強力なのですが、この呪文が選択肢に出る状況としては、RAZを使っても使わなくても大差のない場合が多い……ような気もします。しいて言えば飛魚対策? あと、技量10・体力12のロック・デーモンと戦闘になった場合には、RAZの有無がけっこう大きいとは思います(KINの方が有用ですし、そもそもロック・デーモンには遭遇しないのが基本ですが)。

【KIN】 対レッドアイの秘密兵器。特に、カーレでのレッドアイvsレッドアイの対決(一瞬で2人とも黒こげ!)は見ごたえがあります。マンパンのレッドアイにも有効ですが、マンパンのレッドアイはTELで同士討ちをさせる方がステキです。また、ロック・デーモンと遭遇してしまった場合の生存率も、KINの有無で全然違います。性質上、強敵相手に有効な呪文で、なにげに強いです。ただし、レッドアイやロック・デーモンに近づかないように行動していると、この呪文の出番はありません。あと、スカンクベアを増やして悪臭に嘔吐する主人公もなかなかの珍場面で、なにかと面白い呪文です。

【DUM】 カーレの賭け試合の応援には便利。あとは、トロール戦とかで使えます。いちおう、序盤の人型の強敵に遭遇した場合の基本呪文(消耗は激しいけど問題は解決できる)みたいな位置づけですが、体力を「4」も消費するわりには効果が決定的ではないのがつらいところです(トロール戦でも効果が微妙で、WOKの方が無難です)。4巻でもそこそこ通用するのはさすがなのですが、別に戦わなくても良い相手にしか使えない感じで、似たような呪文(?)のDOZやSAPがけっこう有用なこともあって、DUMは微妙なイメージです。

(※特に、ヒル・ジャイアント[技量9・体力11] に対しては、基本呪文しか覚えていないならDUM [体力4消費で敵の技量マイナス3]、基本呪文以外も覚えているならBIG [体力2消費で自分の技量2倍] という場面になるのですが、実際のところ、DUMを覚えているプレイヤーならBIGも覚えているという関係上、DUMがすごく微妙に見えます)

重要度D-:なくても良いけど、覚えていると便利なときがある呪文(そのうち、触媒の関係で微妙なものや、使える機会の少ないもの)

【GUM】 ヴァンゴーンとの戦闘の回避(6分の1で即死する判定の回避)、マンティコアの洞窟で岩の回避(即死の回避)など、危険なルートに入ってしまった場合のリカバリに使える場合があります。殺人鬼の危険性やマンティコアの洞窟の性質をプレイヤーが理解してしまうと、この呪文の出番はほとんどなくなると思いますが、いちおう、スナッタキャット(別の呪文の方が有用)やファイアーフォックス(NIFや食料使用でも可)にも使えます。

【FIX】 締り木に行ってしまったときに脱出が可能。ただ、その場面で樫の若木の杖を持っているかは微妙です。シャムから蛇の杖をもらえていれば、締り木以外にも熊や魚など、3巻終盤で少し便利です(いずれも避けられるルートですけど)。なお、FIXの仕様をちゃんと覚えていないと、1巻で岩をFIXしようとして死ぬことがあります。

【GAK】 本来の語源はよくわかりませんが、日本人ならガクガクブルブルの呪文と覚えやすいです。レッドアイやクラッタマンなど、いくつかの場面で有効です。ただ、通らなくていいルートだったり、ほかにもっと良い手段があったりします。あと、これを役に立てるには、トリップ状態で黒エルフと戦うリスク(またはヴァンゴーンを経由することで他の有用なイベントをスルーするデメリット)があって、使える状況も少なめですし、私見では微妙な印象です。

【POP】 いちおう、マンパンの黒エルフに有効(ただ、NIFの方が有用ですし、元もと回避できる無用な戦闘です)。それから、カーレ序盤の死体との戦闘にも有用です(とはいえ、死体は2回目以降はまず引っかからない、初見のみの障害です)。あと、カーレの拘置所でも使えますが、普通はDOPかZAPで、POP派はレアです(体力的にはもっとも効率的です)。

【YAZ】 いちおう、スナッタキャットやバードマンから逃げるのに有効な呪文。ただ、それらの相手には、そもそも遭遇しないように進むことができますし、ほかの方法で対処することも可能です。

【FAR】 いちおう、スナッタキャットから逃げるのに有効な呪文(ただし、そもそも遭遇しないように進むことができますし、ほかの方法で対処することも可能)。それ以外には、未来が見えても特に意味がないケースが多いです(いちおう、ロウソクの選び方や金属の柱のヒントが得られたりしますが、役に立つことは少なさそうです)。ただ、となえるのが楽しい呪文ではあります。

【NAP】 いちおう、守銭奴のヴァルギニアに有効な呪文。ただ、ヴァルギニアについては、大蛇から得た情報を頼りに交渉を避けて武力行使に出る……という進め方で意外とあっさり対処できてしまうので、NAPの存在意義としては微妙かもしれません。

【FOG】 暗闇の呪文。いちおう、マナンカの精霊の箱を開けた場合のリカバリー(MAGでも可)などで有効ですが、この呪文が役に立つルートに進むことは少ない気がします。窓のない屋内でしか使えないのに、屋外でばかり選択肢に出てくる悲しい呪文です。

(※覚えていると役に立つというよりも、覚えていれば間違って選んでしまって不利益を被ることがない……という方向での配置が多い呪文です)

重要度E+:役に立たないわけではないけど、たぶん覚えてなくても問題ない呪文(特殊)

【RES】 物語的には重要かもしれませんが、ちゃんと使える機会はラストだけ。それも、ピーウィット・クルーと仲良くなって呼び子を持っていればRESなしでそのままクリアですし、たとえプレイヤーがRESを覚えていなくても、サイトマスターを倒してジャビニーから聖なる水をもらっていれば、主人公が勝手に呪文をとなえてそのままクリアです。そういう意味で、「RES」を覚えておく意味はほとんどありません。むしろ、RESにはゾーマ感覚で大魔王に試してバッドエンドに直行したときの印象が強いです。

(※ソーサリーは初代ドラクエよりも古いです、念のため。あと、大魔王を倒した後にRESの選択肢が出たとき、これを選んだら主人公が大魔王を蘇生させてバッドエンドになるのではと警戒した思い出があります)

(※いちおう、「RESを選択しないルートではティンパン川の聖なる水だけが有効」「RESを選択するルートではティンパン川以外の聖なる水でも有効」と解釈しています。ただ、どちらにしても、「聖なる水をふりかけて呪文をとなえ」のくだりには、体力を「1」減らすという記述はなく、ただし魔法使いに限るという記述もありません。このへんは謎ですが、このシーンを経由した場合には、初対面のはずのピーウィット・クルーがすでに知り合いになっていることがあるなど、このくだりは『ソーサリー』にしては珍しくパラグラフ管理の乱れが目立つ部分で、勝手な解釈をしても詮ない気はします)

重要度E:ほとんど役に立たない呪文(極端に使える場面が限られる上に、その使える場面というのも、わりとどうでもいい場面である呪文)

【ROK】 石化の呪文。相手は死ぬ。いちおう、スナッタキャット相手に使えないこともありません(ただし、YAZやFARに劣ります)。難敵であるマカリティックを石化させられるので使えるイメージもあるのですが、そのマカリティックは、会った時点でクリア不能になっている場所の配置。効果は強力なのに、使えない場面で選択肢に出ることが多くて悲しいことになっている呪文というイメージです。

【ZEN】 イラストとネーミングから禅のパワーで浮くようなイメージは好きなのですが、まともに役に立つ場面があまりありません(いちおう、地の蛇には有効ですが、HUFでも同じ結果になります。しかも、HUFの触媒は確実に入手できるのに、ZENの触媒は必ず入手しているわけではないので、ZENの意味は薄いです)。深読みして大魔王に試すとバッドエンド直行なのもせつないです。

【ZIP】 瞬間移動の呪文。いちおう、七匹の大蛇を殲滅したのにレッドアイに正体がバレた場合のリカバリー(このシーンはカッコイイ)などで有効ですが、普通のプレイでこの展開に進むことはほぼなく、使える機会がない呪文と言ってもよいでしょう。

【NIP】 黄色い粉を鼻から吸い込んでクロックアップという危険な絵ヅラはステキなのですが、まともに役に立つ場面がほとんどありません(いちおう、サイトマスターとの戦闘を有利にできるのですが、樫の木の槍を持っていればNIPを使うよりも良く、その樫の木の槍は大蛇殲滅ルート以外では必須アイテムなので、NIPにはほとんど存在意義が見当たりません)。

【YAP】 動物の言葉が理解できる呪文……なのですが、襲ってきた熊の言葉がわかっても「腹ぺこなんだ、これでえさにありつける」だったり、動物と会話できても意味のないパターンがほとんどです(いちおう、ジブジブが危険ではないことがわかったりはしますが、プレイヤーがそれを知った時点でYAPを使う機会はなくなります)。

【PEP】 まともに役に立つ場面がほとんどありません(いちおう、PEPの効果でロープを引きちぎってしまうことで、そのままロープにぶらさがって谷を渡ろうとしていれば死んでいた危険を回避していたりはします。ただ、この呪文に本来期待される効果ではありませんし、この場面については、結局、一度は転落死してプレイヤーが覚えないといけない気がするので、PEPが役に立つ場面と言えるのかどうか微妙です)。


「『魔法の呪文の書』では、ほぼ役に立つ順に呪文を並べてあります」とのことですが、確かに、呪文の書の後半はあまり覚えていなくても問題なさそうです。

ただし、唯一の必須呪文であるRAPは48個中43番目と、かなり後ろの方に配置されています。

とはいえ、RAPとYAPが並んでいるページは目立つので、プレイヤーの印象には残りやすい気がします。

ほとんど役に立たないYAPという呪文は、実はRAPを目立たせるという役割を担っているように思えます(憶測ですが、後ろに配置した中にも重要な呪文を混ぜつつ、別に不親切ではないこの構成は、作者が意図的にやっているように感じられます)。

また、呪文の書の最初の方は、序盤(主に1巻)で役に立つ呪文が中心に配置されている感じで、その中には、BIG・WOK・DOPなど、終盤(4巻)ではほとんど役に立たなくなるものも多いです。

そして、DOC・NIF・GODなど、終盤で重要になる(ことがある)呪文は、呪文の書の中に点在しているような感じの配置です。

そんな感じで、呪文を少ししか覚えていなくてもクリアは可能ですし、がんばって覚えていれば、結局無駄になる呪文もあれば、思わぬところで輝く呪文もあるという感じで、さすがの配分になっていると思います。

最初は戦士で何回かプレイして、マンティコアに殺されたあたりで魔法使いに移行。基本呪文+いくつかの呪文を覚えてプレイして1巻をクリア。それから、だんだんと使える呪文の数を増やしながら、2巻・3巻と進めていく……みたいなプレイ方法を意識してバランス調整がされており、『魔法の呪文の書』の掲載順も、それを念頭に計算されていると思われます。

どちらかといえば、初プレイ前に48の呪文を完全に全部覚えてしまうよりも、人並みの記憶力で、うろ覚えの呪文で手探りに進めていく方が楽しめそうな気がします。

その辺、ちゃんと「普通の人」向けにデザインされているので、「記憶力に自信がないから……」という理由で『ソーサリー』を敬遠する必要はまったくないと、私は確信しています。

※これをお読みになった方には、「この呪文はもっと重要」「この呪文は微妙」といったお考えが必ずあるだろうと思います。お気を悪くされましたら、申し訳ございません(私は「最低ステータスで単巻プレイ」をすることが多くて、それを基準に「使わないと生存率が下がる呪文」を重く見る感じに並べています。この際、1巻は難易度的には比較的どうとでもなるということで、1巻で役に立つ呪文は軽視しがちになっていたりします。なので、プレイ方法が違えば、呪文の重要さもまた違った感覚になると思います)

※何か間違いがあったら申し訳ございません(この記事のために、普段あまりやらない「プレイもせずに内容を確認」も少し行ったのですが、「役に立たない」とか書いている呪文に、私の知らない役に立つ場面があるのを見落としていたりするかもしれません)

おもむろに尋問する

私の趣味は、「おもむろに」という言葉の用例の収集です。

(以前、「『おもむろに』の意味を考える」という記事を書きました)

『ソーサリー』の「おもむろに」といえば、4巻の終盤、床がせり上がる罠の場面です(パラグラフ269)。

敵を殺してしまったのでは、何も情報を聞き出すことはできない。それよりも、敵を恐怖の極限にまで追いつめておいて、おもむろに尋問するほうがずっと効果的ではないか。

この「おもむろに」も、なかなか味のある文脈で使われていて、さすが『ソーサリー』だと思います。