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芸能事務所のプロデューサーになってアイドルを育てるゲーム「アイドルマスター」が、昨年、テレビアニメ化されました。
当然、「アイドル伝説えり子」みたいな芸能界サクセスストーリーになるかと思いきや、アニメの制作者は、
「ガンダムやイデオンに憧れてサンライズに入社した僕としては、巨大ロボットという伝家の宝刀をこの大きな企画で出したかった」
などと、訳の分からない発言。
その結果、ゲームでは単なるアイドルだった春香ちゃんが、アニメでは身長30メートルの巨大ロボット「インベル」に乗って戦うことになりました。
これにはAmazonのレビューなどでも、「ここまで支えて応援してきたファンを裏切り見捨てた」「(ファンにとって)これほど屈辱的な作品はない」といった声が多いです。
そんなわけで、最初の一歩で致命的に足を踏み外しているテレビ版「アイマス」ですが、これを実際に見てみると、作品自体のクオリティは大変高く、それでいて実は二歩目も踏み外しており、三歩目以降は空中を歩いているのが分かります。
そこで今日は、テレビ版「アイマス」がどんな内容だったのか、ネタバレ全開で簡単にご紹介したいと思います。
はじまり
第1話の冒頭は、いちおうアイドルのオーディションからスタートします。
ところが、このオーディション、実は参加者以外はすべて仕掛け人。
本当は、主催者が探しているのはアイドルではなく巨大ロボのパイロットなのです。
なぜそんなことをしているのかというと、この世界のロボットは気に入った美少女が乗らないと動かないという仕様なので、こうして偽装オーディションで女の子を集めることで、ロボが気に入る美少女を探しているのです。
そんなわけで、はるか遠方の格納庫にいる巨大ロボット「インベル」も、このオーディションの様子をカメラでチェックしています。
胸チェック!
スカートの中チェック!
全身チェック!
こうして、インベルに気に入られた春香ちゃんに合格通知が届き、彼女はアイドルを目指して上京するのでした。
出会い
ゼノグラシアの世界には、インベルを含めて5体のロボットが存在しており、そのすべてが美少女好き(ロリコン率高し)です。
劇中では、この5体のロリロボをひっくるめて「iDOL」と呼んでいます。
さて、そんなiDOLのうちの1体を、上京したばかりの春香ちゃんが偶然目撃します。
そして、生まれて初めて見るロボットの勇姿に感動して、春香ちゃんが「iDOLって、ちょっとかっこいいね」と言った次の瞬間……。
格納庫で盗撮中のインベル
「iDOLって、かっこいいね」
ドキュゥゥゥゥゥゥン!
格納庫のインベルが、轟音をあげながら勝手に起動します。
どうやらインベルの脳内で、
「春香がiDOLを褒めた」→「iDOLイコール俺」→「春香たんと俺は相思相愛!!」
という思考が展開されたようです。
興奮したインベルは、パイロットも乗っていないのに隔壁を内側から突き破って移動、唐突に春香ちゃんの目の前に現れます。
さらに、インベルは重力をコントロールして春香ちゃんの身体を宙に舞い上げると、そのまま自分のコクピットに吸い込みます。
そうして、わけがわからないままコクピットに座らされた春香ちゃんの目の前に、これまで撮影された盗撮映像の数々が映し出されるのでした。
どうやら、ロボットなので言葉が喋れないかわりに、「ずっと君を見ていたよ」とアピールしているようです。
蜜月
こうして、インベルのパイロットになった春香ちゃん。
彼女にしてみれば、突然現れた巨大ロボットが、なぜか自分の盗撮映像を大量に所持していたわけです。
そのあまりにも変態的なアプローチに、春香ちゃんも意外と悪い気はせず、少しずつインベルに惹かれていきます。
そうして、「ちょっとくらい冒険しても、いいよね?」と言って、インベルのために勝負パンツをはいたり……。
「わたしのことを、もっと知ってほしい」「まだ誰にも見せてないの。だからインベルがはじめてだよ」と言って、インベルに水着姿を見せたり……。
夜の海でデート
春香「じゃじゃーん!」
インベルのモニタに「●REC」
そして、ある日、インベルの中に「FAVORITE FILE 0518」というファイルを発見した春香ちゃん。
「このファイル、何?」とクリックしてみると……。
当然のように、中身は春香ちゃん盗撮集でした。
このあまりにも変態的な行動に、さすがの春香ちゃんも思わずほおを染めて、「ありがとう……インベル」と喜びます。
恋敵
そんなこんなで、人間に萌えるロボットとロボットに恋する人間。
相性完璧な2人がイチャイチャしているわけですが、そんな恋路を邪魔する敵が登場します。
それは、インベルの元カノの千早さん。
具体的には、16年前までインベルのパイロットだったという……、えっと(計算中)……、とんでもない年増女です。
千早さんは積極的にインベルにアプローチしますが、インベルは若い娘に夢中で、まったく振り向いてくれません。
「どうしてなのインベル。私はすべてをあなたに捧げた。心も、身体も。なのに……」と落ち込む千早さん(48歳)。
その後、彼女は幼女拉致作戦を実行します。
誘拐された幼女(とかち)
生意気な幼女にアイアンクロー
この作戦がうまくいって、めでたく千早さんはインベルの強奪に成功します。
修羅場
インベルを奪った千早さんは、「やっと戻ってきてくれた、私のインベル……」と、恍惚とした表情でインベルにスリスリ。
自分以外の人間がインベルに触れると、突き飛ばして「汚れるじゃない」と激怒。
「ほらインベル、いまキレイにしてあげるわね……」と言って、インベルにキスをします。
なお、この前後、美少女しか乗せないハズのインベルが、千早さん(48歳)の操縦で動いている理由は謎ですが、
(1)最近春香ちゃんが構ってくれないのでスネてみた
(2)久しぶりに昔の彼女に会ったら気が狂っていたので、さすがに少し同情した
(3)たまにはヤンデレもいいかなと思った
といった感じだと思います。
ともあれ、インベルを操縦しながら、「うふ……熱いわ……インベル……うふふ……とけちゃいそう……」などと千早さんがコクピットで感じていると、そこに我らがヒロイン・春香ちゃんが登場!
春香「私…」
「私、あなたが…好きです!」
春香ちゃんは、「私、あなたが…好きです!」とロボットに告白。
次の瞬間、インベルは目を光らせて、千早さんが乗っているコクピットを射出します。
……哀れ、ポイ捨てされて空を飛んでいく千早さん(48歳)。
春香「ずっと…」
「…好きだったの」
その頃の千早さん
こうして、正式に彼氏彼女になったインベル&春香ちゃんと、もともと病んでいた精神をさらに病んだ千早さんでした。
千早
インベルに捨てられた千早さんは、「満たされていくの、白く……うふふ……うふふふふ……」「クリームみたいに……白いの……」などと言い出します。
千早「真っ白にトロけて……」
彼女が言うには、人間の身体を粒子化させてロボに撃ち込むことで、ロボと人間は物理的に融合できるのだそうです。
「インベルとわたしは、ひとつになるの。真っ白に……トロけるの……とおっても甘くて……気持ちがいいの……ふわふわのマシュマロ……とろとろのミルククリーム……」
そして、怪しげな装置を起動させ、千早さんは自分の身体を粒子化させるのでした。
雪歩
しかし、インベルとの融合を果たすには、だれかが千早粒子をインベルに撃ち込まなければなりません。
そこで登場するのが、千早さんの忠実なペットである雪歩です。
「私の飼い主は千早さんです」
雪歩と、生前の千早さん
「私の飼い主は千早さんです」(原文ママ)と言い切る雪歩は、愛する千早さんの願いを叶えるため、ロボに乗って出撃。
春香ちゃんに向かって、千早さんの素晴らしさを訴えます。
曰く、「あなたは何も分かっていない。何の努力もせずにインベルのマスターになって、インベルに愛されて。千早さんの……」
「苦しみも!」
「悲しみも!」
「情熱も!」
「想いも!」
「何も!」
「……あなたには何もない! なのに、なぜあなたは愛されるの?」と、千早さんの半裸や全裸を回想しながら熱弁する雪歩。
確かに、若いというだけでインベルに愛されている春香ちゃんには、(年増女の)苦しみも、(年増女の)悲しみも、(年増女の)情熱も分からないでしょう。
決着
それから、雪歩は見事にインベルを倒して、千早さんの粉末を撃ち込むことに成功します。
ところが、せっかく注入された千早粉を、インベルは体外に噴射。
……哀れ、ゴミのように空気中に飛散していく千早さん(48歳)の粒子。
それを見て、涙目になる雪歩。
雪歩「なんで?」
「なんで…!」
そこで、春香ちゃんが長々と語り出します。
曰く、「きっと、インベルは……ううん、iDOLでも人でも、好きな人と一緒になるって、そういうことじゃないよ。好きな人と一緒になるって、その人と同じになるんじゃない。きっと、違うところをお互いに見つけていくことなんだよ。だから、わかんないことも、キライって思うこともいっぱいあるかも知れないけど、でも、きっとそれでいい。それでよかったのに。インベルは千早さんを見てたのに。千早さんは、インベルに見てもらおうとするだけで、インベルを見なかった。それはきっと……愛じゃないもの!」
「愛じゃないもの!」
ガガーン!
「ごめんなさい…ありがとう…」
そう、これまでの半年間の放送はすべて、この巨大ロボと恋愛中の女による、愛についての説教のためにあったのです。
これには精神を病んでいたレズっ娘も思わずガガーンと心を打たれて泣いて謝ります。
ただ、要するに「千早さんのインベルへの愛はニセモノだけど私の愛はホンモノ」という話なのですが、これまで本編で描写されてきた限りではどっちもどっちの電波女に見えるのが難点です。
それにインベルにしてみれば、16歳と付き合っているところに大昔に捨てた48歳が言い寄ってきただけの話で、どちらかといえば、さきほどの雪歩の主張「四十過ぎて独身の女の気持ちは小娘には分からぬわ!」(要約)の方が実情に近い気もします。
そんなこんなで、春香ちゃんの台詞を本編の内容とリンクさせるとしたら、むしろ次のような感じになるかと思います。
きっと、アイマスは……ううん、アイマスでも何でも、好きな原作がアニメ化されるって、そういうことじゃないよ。
原作を尊重しつつアニメならではの魅力を出そうとしたら、消化不良になることも、単なるファンアイテムで終わることもいっぱいあるかも知れないけど、でも、きっとそれでいい。それでよかったのに。
ファンは原作を見てたのに。サンライズは完全新作ロボットアニメを作ろうとするだけで、原作を見なかった。
それはきっと……愛じゃないもの!
おまけ
「アイドルマスター XENOGLOSSIA」と斧女
「アイドルマスター」のテレビアニメ版の放送中、16歳の少女がゴスロリをイメージした服を着用して、斧で父親を殺す事件がありました。
毎日新聞などによると、少女が斧を購入したのは9月13日だったそうです。
一方、少女が住んでいた京都で9月12日に放送された「アイマス」の第24話には、白ゴスロリの少女が斧で母親を殺そうとして返り討ちにあう場面がありました。
もちろん偶然の一致なのですが、ロリータファッションで少女で親子でよりにもよって斧をチョイスと、誰も来ないところに設置された地雷を的確に踏み抜くのは、さすがテレビ版「アイマス」でした。
そして、事件後、「スクイズ」や「ひぐらし」は別に斧も出ないのに、「女子高生による暴力シーンがある」「少女が凶器を持っている場面がある」という理由で放送を自粛しました。
一方、斧購入日の前日に斧を出した「アイマス」は、不人気が幸いして偉い人たちに気付かれず。
事件の直後にも、知らんぷりして少女が斧で惨殺スプラッタを地上波で流していました。
インベルとゆかいな仲間たち
テレビアニメ版「アイドルマスター」には、インベル以外にも何体かの「iDOL」が登場します。
たとえば、“テンペスターズ”というiDOLは、ストライクゾーンが園児という真性のロリコンで、パイロットの5歳児を乗せたまま行方不明になって7年ほど失踪。
ようやく帰ってきたときには、パイロットは精神は5歳のままで身体だけ12歳のハイブリッド幼女に育てられていたという、驚異の拉致監禁ロボでした。
一方、我らがインベルは盗撮方面に強く、「タシロボ」「タシロス」「淫ベル」などの名をほしいままにしましたが、第14話で、実は“ネーブラ”というiDOLも、パイロットの幼女時代の盗撮映像を大切に保存していたことが判明。
さらに、“ヌービアム”というiDOLも、第25話で雪歩の幼女時代の盗撮映像を大切に保存していたことが判明します。
結局、iDOLは盗撮魔とロリコンばかりでした。
インベルさんの録画
ネーブラさんの録画
ヌービアムさんの録画
さて、そんな感じでインベルもロリコンなので、千早さんに対しても幼女だった頃は優しかったです。
たとえば、千早さんが初めてインベルに乗ったときは……。
千早さん、インベルに初搭乗
インベルの数値がグングン上昇
モニタに「●REC」の文字
いつものように愛情を録画で表現するインベル。
幼女時代の千早さんも春香ちゃんと同じ手で口説いていたわけですが、これでモテモテなのがインベルのすごいところです。
そうして、インベルと千早さんはコクピットに裸で寝るほどの仲になったのですが、
千早さん(幼女時代)
千早さん(48歳)
千早さん(粉末)
どうしてこんなことに……(答え:愛じゃないもの)。