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なんでも評点さんによると、昨年末、中国の少年が「僕はドラゴンなんだ。僕は、世界を救うことを宿命付けられているんだ」と言って家出したそうです。
日本では、80年代にソッチ系の女の子が大量発生したことがありました。
当時のオカルト雑誌「ムー」の、ペンフレンド募集コーナーを見ると……。
「前生アトランティスの戦士だった方、石の塔の戦いを覚えている方、最終戦士の方、エリア・ジェイ・マイナ・ライジャ・カルラの名を知っている方などと」
「前世名が神夢、在月、星音という3人の男性を捜しています。早く目覚めて連絡を!!」
「九燿、霊能者、超能力者、妖姫、闘竜、戦士の過去を持つみなさん! 歌巫女の私に連絡をください」
……この例を挙げるために、創刊号から8年分の「ムー」の投稿欄を読み返すというイニシエーションを行ったので、せっかくだから特別付録:「ムー」の前世少女年表も作ってみました。
ちなみに「ムー」の昭和62年2月号には、「建、一馬、ちゆ、魔魅という名に覚えがある方、ご報告下さい」という投稿もありました。
……ええと、どうも、ちゆです。よく覚えてないのですけど、前世ではお世話になりました。
「ワンダーライフ」のリプミラード様
さて、80年代には、「ワンダーライフ」という雑誌がありました。
「念力でしょうゆの味が変わる!」とか、「人を呪い殺す暗黒呪法 怨敵呪殺最終秘呪」とか、「UFOに乗った三島由紀夫が1991年1月に宇宙人軍団を率いて地球にやってくる!」といった記事が満載の雑誌です。
その第11号の読者ページに、真佐美さん(16歳)から、こんなお便りが届いていました。
「もう…方法がないの… 汚れきった人々の心は、滅亡によって新しく生まれ変わるの」というイラストです。
さて、その次の号を見ると、兵庫県の智也くん(13歳)が、これに対する反論を投稿していました。
あんたのイラスト見てオレ腹がたったよ。
(略)
オレの友達の心も校区の人の心も全世界の人の心もまだ汚れちゃいないんだよ。
(略)
オレの友達なんか月3千円のこずかいで250円も恵まれない人のために募金してるし、オレだって近くに住んでるジーちゃんのために3千円の中から2千円くらいつかってるんだ。
(略)
あんた達みたいに1999年から逃げてないし、ほんの少しの希望でもそれに進んで歩いていけるだけの勇気を持ってるんだよ。
あんたは何の為に生まれてきたんだ? ただ死ぬためだけか? そう思って可能性をすてちまうんだったら、あんた一人で滅亡しちまえ!
「1999年」というのはノストラダムスの予言の年で、当時は1999年に人類が滅亡すると本気で信じている人がたくさんいました。
実際、「ワンダーライフ」第7号によると、「1999年は必ず来るんだから、結婚して子供を産めば、子供を不幸にしてしまう」と言って結婚していない女性が、少なくとも2人は実在するそうです。
(ちなみに2007年現在、もしも彼女たちが生きていれば47歳独身女です)
ともあれ、さらに次の号を見ると、最初のイラストを投稿した真佐美さんが、再反論していました。
私の方こそ腹たちましたよ。私は単に何かに載っていた一文を絵にしただけです!
それに私の方こそ’99から逃げてなんかいません! 逃げるに逃げられないんですから。
何のために生まれてきたんだ? ですって、地球と人々を救うためです!!
あなたに分かりますか、私たち天上界の魂を持つ者のつらさや苦しみが。
今、日本各地に100人近くの天上界人が覚醒めていますが、みんなそれぞれ苦しんだハズ。
(略)
私なんか命ねらわれたし、呪いをかけられたこともあります。でも仲間が体をはって助けてくれたんです。
なんと、真佐美さんは単なるイラスト投稿者ではなく、天上界人だったのです。
しかも、呪いをかけられたり仲間に助けられたり、「幻魔大戦」のような戦いを現実世界で繰り広げているようです。
そうして地球の人々のために命がけで戦っていたところ、何も知らない人間ごときに「1999年から逃げてる」などと説教されたのですから、天上界人様のお怒りごもっともです。
ワンダーライフの方へ! 私はおこってます。むちゃくちゃおこってます。
これは全文そのまま載せてください! 載せないと私おこったままですよ。
(略)
いくら魂は人間以外だって、今は人間だし、まだ私は16! とーぜん腹たつことは腹がたつ!
本屋で思いっきりむっとしました。学校でじっくり読んでまわりの物をぶっこわしてまわりましたよ。
(略)
ぜーったい許せない。
載せてその子に見せてやらなきゃ私の気がおさまりませんっ!(あ、本当に“気”が乱れてる)気は感情に敏感だから……。
(略)
福井県○○市△△△31、××真佐美(前世名リプミラード)16ですっ。
この気をおさめるため一晩瞑想だわっ。私も修行不足ねっ。あーもうイライライライライライライライライラ。
こうなったら意地でも仲間と力合わせて地球を救ってやるわよっ この命はって!! キー!
オカルト雑誌に腹を立てて学校の物を壊してまわる天上界人……。
ちょっと魂のレベルが低そうで心配になりますが、とりあえず1999年に地球は滅びなかったので、戦いには勝ってくれたのだと思います。
ちなみに、さらに次の号では、そんな真佐美さんリプミラード様に、岩手県の和之さん(20歳)が次のように意見していました。
あなたからは選民意識が感じられます。
文章中の「天上界の魂を持つもの」や、前世名を書いていることからです。
(略)
前世名は書くべきではなかった──私たちは、“今”を生きているんだから…。
なんというか、前世名を書くか書かないかの問題なのでしょうかコレは。
そんなこんなで、80年代の日本では、「BLEACH」に出てきそうな前世名を持った女の子たちが妄想幻魔大戦を繰り広げていたというお話でした。
ネットアイドルちゆは、リプミラード様(生きていれば今年で33歳)を応援しています。
「TZ」のアクエリアス騒動
一方、「TZ」というオカルト雑誌では、アクエリアス騒動と呼ばれる出来事がありました。
ことの発端は、「TZ」の88年3月号。
「ペンパルプラザ」に掲載された、美和子さんの投稿でした。
さて、この投稿を、真乃さんという方が読みました。
真乃さんは、たまたまアクエリアスに親しい存在だったので、手紙を出すことにします。
曰く、「なぜ連絡しなければならないんだ?」
しばらくして、美和子さんからの返事が届きました。
曰く、「無理に連絡くれとは書いてない。使命をもっている人がどれだけいるか知りたかった」
その返事を受け取って、真乃さんは激怒します。
「TZ」の5月号には、真乃さんの怒りの投稿が掲載されました。
一体、何を考えているんですか。
それはつまり、試したのと同じじゃないですか。あなたに、そんな権利あるんですか。
あなたは……アクエリアスの名を使ったことで、アクエリアス全員の怒りを買ったんですよ。
(略)
真乃はとっても怒りました。
真乃だけじゃなく姉も、そしてそれを読んだアクエリアス全員も。
アクエリアスってかなり存在感あるのに、怒っているときって恐ろしいくらい迫力あるんだから。
(略)
PS これはアクエリアスの長の許可を得て書いたものです。
……天上界人と同じように、アクエリアスもキレやすいようです。
そして、「TZ」の7月号には、これに対する、美和子さんの投稿が掲載されました。
アクエリアスの怒り、といいますが、なぜ名前を出したくらいで怒るのでしょうか。
そもそも、私のいうアクエリアスと、真乃さんのいうアクエリアスは、まったく違うようです。
私がいうそれには長などいないし、種族なども違います。
……ということで、結局、この問題はアクエリアス違いだったということでおさまるのでした。