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「テニスの王子様」の作者・許斐剛先生が、昨年末に全治6か月のケガをされてしまったそうです。
それでも「気力で描きました」と、ページ数を減らしたりしながらも連載を続けてくれていた許斐先生ですが、やっぱり無理があったのか、先日から1か月の休載となりました。
そうして、1か月ぶりに再開した「テニスの王子様」を読んだところ、物語のヒロインである桜乃ちゃん(12歳)の顔に、なんとなく違和感を覚えました。
3月(初登場) | 5月 | 8月(最新) |
7年ほどの連載で作中では5か月しか進んでいないのですが、こうして並べてみると、最新号ではずいぶん老け大人っぽく成長した気がします。
一方、主人公・越前くん(名前の由来は大岡越前)の最大のライバルである遠山金太郎くんも久しぶりに登場しましたが、こちらはあまりにも変わらなさ過ぎるのが気になります。
2004年52号
2006年21・22号(最新)
一瞬コピーかと思ったのですが、2枚を重ねてみたところ、目・鼻・口・輪郭のカーブは大体一致しますが、線の強弱には差があり、髪の毛も違いました。
正直、この中途半端な重なりが何なのかはよく分かりません(ケガによる作画作業の簡略化の影響とかでしょうか)。
あと今回、ドロボーにテニスボールを叩き込んで倒す場面がありましたが、そのドロボーが6年前に登場したドロボーと同じ奴です。
2000年27号 | 2006年21・22号 |
しかし、前にドロボーが現れたのは春でしたが、今回は夏ということで、長袖を半袖にする配慮を忘れないのは流石です。
以前と同じドロボーが同じオバサンから同じカバンを奪っているのはOKだけど、夏に長袖を着ているのは不自然だから直すという、理屈ある狂気が実に素晴らしいです。
さらに、6年前は「どけどけー!!」「うわっ」「ギャ!!」という普通の日本語を使っていたドロボーが、今回は「どけどけー!!」「ひゃっひゃっひゃ!」「げひぃぃ!!」というボキャブラリーの持ち主に成長。
これだけで、この漫画が6年間でどのような進化を遂げたのかを知ることができます。
桜乃ちゃんの変化について
今回、桜乃ちゃんが唐突に老け込んだ印象があったのですが、中間を加えてみると、思ったよりは自然な変化でした。
初登場
連載2年目
連載6年目
最新号
これについて、少し補足します。
実は、桜乃ちゃんがヒロインらしく扱われていたのは連載2年目までで、連載3年目は本編に一度も登場していません。
さすがにマズイと思ったのか、4年目には3話に分散して合計12コマほど出演しますが、5年目はまた出番が減って顔が米粒くらいの大きさの1コマだけの登場でした。
1年間で唯一のヒロインの出番
しかし、6年目には、1話だけの出演ですがなんと21コマも登場し、彼女の平常時4年分に匹敵する圧倒的な存在感を見せつけます。
ただ、その反動は大きかったらしく、それから1年半に渡って出番がなくなり、今回の登場は、2004年10月6日以来の生存確認となりました。
そんなわけで、桜乃ちゃんが急に変わったというよりは、長期連載による絵柄の変化に桜乃ちゃんの出番が追いついていないだけ、という方が正確なのかもしれません。
ネットアイドルちゆは桜乃ちゃんを応援しています。
許斐先生の漢らしさについて
「テニスの王子様」の許斐先生は、新人漫画賞の審査員になったとき、「煮詰まった時の気分転換の方法は?」という問いに、こう答えました。
「煮詰まっているようではプロになれません。煮詰まるな!」
また、ジャンプの最後のページを見ても、冨樫先生が「頭痛がします」「特記すべきことはないです」などとダウナーな発言をしているところ、許斐先生は、
「凍えるような夜に玄関先で蚊を発見! 無茶だなぁ。また暖かくなってから戦おうぜ」
……と、さわやかに昆虫に語りかけています。
さらに、ケガをされる直前にも許斐先生は、「イラスト集『30.5』の描き下ろしを描きまくってます! 1点でも多く描くからね」と宣言して、週刊連載の合間に40点の描きおろしイラストを執筆するというファンサービスっぷりでした。
そして、それだけ頑張ってもアマゾンのレビューには「新しいイラストがもっと欲しかったです」といった声が寄せられてしまうあたり、漫画家というのは本当に大変な職業です。
ネットアイドルちゆは許斐剛先生を応援しています。