定金伸治先生の小説「ジハード」の最新刊が発売されました。
これは、十字軍の遠征を「三国志」以上「西遊記」未満の架空度で描く歴史もの。
同時代の英雄であるロビンフッドや源義経も、史実から逸脱して活躍します。
普通の人間だったはずの登場人物がいつのまにか後ろ向きで馬より速く走る能力を身に付けていたり、話が進むうちに主人公がキリスト化していったりする物語ですが、個人的に一番の見どころは挿し絵です。
この小説のヒロインは、エルシード姫。
「なんで姫はそんなに胸がないの?」
「……!」
瞬時に顔を真っ赤に染めて、エルシードは怒りの瞳を緋色に燃やした。
といった描写があるように、エルシード姫は自他ともに認める幼児体型で、外見は少年のようだという設定。
ところが、少年ジャンプで14週で打ち切られた「超弩級戦士ジャスティス」の作者・山根和俊先生が描く挿し絵では、エルシード姫は次のように描かれます。
……彼女が幼児体型なら、ちゆは胎児未満になってしまいます。
作中の設定を全て無視して「俺はナイスバディの姉ちゃんが好きなんだ」という趣味を貫き通した、挿し絵描きの山根先生は漢です。
しかし、作者の定金先生は、エルシード姫に「恋愛感情と言える」ほどの愛着を感じているとまで表明しておられます。
こんな絵をつけられて内心ハラワタ煮えくりかえっているのではないかと、読んでいる方が心配してしまいます。
ですが、あとがきでは「山根さーん、毎回素晴らしいイラスト付けてくださって、どうもありがとーございまーす(感謝の程を表すために、大声で言っているのだ)!」などと発言。
挿し絵を嫌がっているような素振りは、まったく見せませんでした。
時は流れ、山根先生が少年ジャンプでの新連載「JOKER」を始めるため、挿し絵を続けることができなってしまいました。
そこで、イラストレーター交代です。
(結果的に「JOKER」は15週で打ち切られたので、その気になれば山根先生の続投も可能だったはずですけど)
白羽の矢が立ったのは坂本眞一先生。
同じく少年ジャンプで12週で打ち切られた「モートゥル・コマンドーGUY」の作者です。
(打ち切り漫画家ばかり起用されるのは、「ジャンプノベル」の編集方針みたいなものなので仕方のないところ)
ですが、この坂本先生も1回だけで降板が決定します。
理由は不明ですが、ちょっとそれまでのイメージとかけ離れた絵を描いてしまったのが原因ではないかと思います。
山根画
坂本画
上の二人は同一人物で、さすがにはっちゃけすぎな気がします。
そんなわけで二人の挿し絵描きが降板してしまいましたが、そこに救世主が現われます。
作者の定金先生がネットサーフィンしていたところ、たまたま見たファンのアニメーターが描いたジハードのイラストに一目惚れ。
そのまま定金先生自らが集英社に推薦して、あっさりOK。新・挿し絵描きが誕生したのです。
かくて、それまでの「超弩級戦士ジャスティス」「モートゥル・コマンドーGUY」のような雄度の高い絵柄から一転、挿し絵は女性向け同人風イラストへと路線変更を遂げました。
こんな感じ
作者の定金先生は大満足。あとがきで、こうコメントされています。
今回から、イラストを描いていただく方が変更になりました。
(中略)
そのイラストがどれだけ素晴らしいかは、ぼくがあれこれ言葉で説明する必要はないでしょう。
挿し絵やカバー、ピンナップ(注:上のイラスト)を見ていただければ、一目瞭然ですからね。
姫さまは姫さまの姿をぼく達に見せて下さってますし、その他のキャラもすべてまさにぼくのイメージ通りで、ぼくは今本当に幸せな気分に浸っています。
小説のイラストが変更になると前を懐かしんで嘆く人がよくいるそうですが、これを見て嘆く人は絶対いないでしょう!
嬉しい気持ちはよく伝わってきますが、喜びのあまり、前のイラストレーターへの配慮は絶無です。
やっぱり、山根先生が描くボディコンな姫には、「こんなのぼくの姫さまじゃない!」という気分だったようです。
ちゆは山根先生のイラストを懐かしんで嘆いているのですが、本来は絶対いないはずの変わり者だということでしょうか。
……以上、8年間も挿し絵を描き続け、漫画版まで手がけた山根先生の扱いがあまりにもあまりだと感じましたので、思わず弁護に回ってしまったちゆでした。
ネットアイドルちゆは山根和俊先生を応援しています。