たぶん久保さんが嫌いなのは「パターナリズム」ではないという記事
- 昨年から、久保さんが「パターナリズム」という言葉を自由自在に使うのを聞きすぎて、私の中の「パターナリズム」の概念が崩壊しそうになったので、自分用に整理したものです
- いちおうの内容としては、久保さんの「パターナリズム」という言葉の使い方は少し変わってるから、言いたいことがちゃんと伝わらなかったり、若干誤解されることがあると思う……みたいな感じになります
「パターナリズムですね」の件
経緯1
発端のやり取りは、次の感じ。
・自分がデートに着ていく服装について、久保さんが「どっちがいいですか?」と質問した
・柳さんが「変えた方が個人的に好みだ」と返事をした
・久保さんは「個人的に好み」という言い方が「優しい」と褒めていた
柳さんは、質問にやんわりと応じただけで、久保さんの自己決定権や行動の自由に対する干渉はしていません
通常、この行動がパターナリズムと言われることはないと思います
(久保さんは、昨年10月の黒猫さんの件のときには、「相手より自分が優れているという感じを偉そうに出して、相手の意思を問わずに口出しをしてくる」みたいなのを「パターナリスティックな態度」としていました。
その定義でも、柳さんは、自分が優れているという感じを偉そうに出していたわけでもなく、聞かれたことに返事をしただけで、問題ないでしょう)
経緯2
その後、次のように展開しました
・久保さんが「不機嫌にならないと約束するから、本音を教えてほしい」というように頼む
・柳さんは「久保さんがダサい服を着ても自分としては良かったが、久保くんが恥をかかないために、やんわり『ちょっと違うんじゃない?』と述べた」という意図を説明
この内心については、「パターナリスティック」「パターナリズムと親和性がある」くらいなら言えなくもないかも知れません
とはいえ、久保さんの質問が「フォロワーに裏でクソダサいってボロクソに言われてるので、変えた方が良いなら変えます」だったわけで……。
その言葉を「大勢からダサいと言われたことを気にしている」と解釈して、周囲からどう見られるかを組み込んだ返事をしても、文句をつけられる筋合いはないかと存じます
いちおうの原則論
『自由論』の原則から言うなら、「それが相手のためになるから」「それが相手を幸福にするから」というのは、「忠告・説得・催促・懇願をする正当な理由」とされます
(正当じゃないのは、その理由で強制したり我慢させたりすること)
通常、パターナリズムが問題になるのは「自己決定権」に関することなのですが、今回の経緯では、そこは問題なかったと思います
ただ、「それが相手のためになるであろう」という優劣判断を前提にした援助行動について、それに伴う「傲慢さ」や「失礼さ」(パターナリスティックな態度?)を嫌う風潮はあるようです
久保さんにとって、パターナリズムの問題点は、自己決定への干渉そのものではなく、優劣判断の「失礼さ」にあるようで、今回も、そういう説教をしていました
「ぼくのロジック」
それが、次の話でした
「『久保くんが恥ずかしい思いをしたら可哀想だな』というのが、パターナリズムですね」
「『このひとは(選んだ服装が)格好悪いことに気がついてない』って思ったんですよね? それは『ナメてる』ってことです」
「ナメるのはいいんですけど、『ナメてる』って自覚を持ってナメて欲しいですね」
※この辺が、「この分野では相手より自分の方が優れている」という優劣判断が心にあること自体が「ナメてる」という話に聞こえるのですが、もしも干渉をしていなくても発生する「ナメてる」が問題なのだとしたら、あまり「パターナリズム」は関係なさそうです
とにかく、「ナメてる」のは「失礼」だから、「その『失礼』に基づく援助行動をする際には、『失礼』を自覚すべきである」というのが、久保さんの意見のようです
本人は、
「『舐めていると自覚していればパターナリズムをしていい』というのがぼくのロジック」
という言葉にしています。(2022/6/2 革命基地)
整理すると
通常、パターナリズムが批判されるときは、主に自己決定権の話になると思うのですが、
「自己に関することを他人が決定すべきではない」(通常的な反パターナリズム)
→「相手の判断を軽視するのは失礼」(まあそういう話がされるときもある)
→「失礼なのを認めないのは卑怯だからダメ」(久保さんのロジック)
という展開に受け止めております
「ぼくのロジック」の文言を普通に読むなら、患者のことを「無知な者」とナメている自覚がある医者は、治療方針を支配的に決定していいという話になりそうです
あるいは、日本ボクシングコミッションの「一度網膜剥離を起こした選手は、完治しても引退」という安全規則について、「道徳の自律という原理から不当と判断される」「辰吉自身が自己決定すべき」といった批判があったわけですが……
久保さんのロジックでは、「辰吉さんの判断力をナメていて失礼だから、日本ボクシングコミッションは辰吉さんをナメていることを自覚しろ」という問題になります
つまり、久保さんの言う「パターナリズム」を普通の意味で受け止めるなら、
自分の方が優れており、相手の判断力が劣っているとナメている自覚をちゃんと持っていれば、「それが相手のためになるから」「それが相手を幸福にするから」という理由で、相手に関することがらを決定していい
というのが、久保さんのロジックだと解釈されそうです
余談:久保さんはパターナリズムをしたいように見える
2022年3月に投稿した「ぼくは27歳にして神の態度を身につけてしまったので10億人を救えなくなる」という動画では、久保さんは、次のように語っています。
「27歳にして、ぼくはもう神の態度を手に入れてしまった、みたいなことを思ってて」
「しかも、どうやったら他人を良くできるかっていう方法まで手に入れつつある」
「目の前に最強の教えがあるわけじゃん。めんたねさんという」
「優しくのんびりと構えて、策動癖とかを利用して、相手に気持ち良く自然と気づかれないように変わってもらおうと。それって全然聞いたことないやり方だし、平和なやり方だし、効果的なやり方だし」
「普通の人が、ほとんどはうまくいってない。『これが悪いでしょ』って言って、反発されて、全然変わらない大戦争みたいな中で、うまいこと相手が転がっていく……みたいなさ。そういう超最強のやり方を目の前で見て教えてもらえる状況にあってさ」
「めんたねさんは、人類を救おうという熱い気持ちはなくて、頼んできたらできる範囲でやろうと。ぼくからしたら、もっともっとやろうよみたいな。ノブレス・オブリージュやろうよと。それをぼくがやるっていうさ」
つまり、自分たちの生き方が普通の人たちより優れているという優劣判断を前提に、こっちの価値観になった方が良くなるよ、幸せになれるよと、頼まれてもいないのに、相手に気づかれないように変えてあげるのが「ノブレス・オブリージュ」で、そうやって、どんどん救っていきたいという……。
お前こそがパターナリズムの王子様です。
補足:「ナメてる」の定義について
以下のやりとりについて。
久 「『久保くんが恥ずかしい思いをしたら可哀想だな』というのが、パターナリズムですね。それが『相手をナメている』っていうことは分かりますか?」
柳「ナメてない。心配してる」
久「ほら! 『私はあなたをナメてる』ってことを認められないんですよ、あなたは」
柳「ナメてるわけじゃないです」
ここで久保さんは、「相手をナメているくせにナメていると認めないなんて卑怯な人だな」と思ったそうですが、誤解でしょう
これは、久保さんと柳さんで「ナメてる」という言葉の定義が違っただけです
(柳さんの定義では、「ナメてる」は「心配」や「優しさ」と両立しない性質のもの)
その点で話が噛み合わなかったのを、めんたねさんが仲立ちしました
(めんたねさんはキャスの中で、次のような説明をしました。
「久保さんの中では、普通に『その服ダサいからやめた方がいいよ』『雨の予報あるから傘持ってったほうがいいよ』と言うのも『ナメてる』ことになる。
本来、『その判断は違うと思いますよ』という話は、必ずしも上下とは関係がないが、彼の中では、それが上下と結びついている。
アドバイスしたら全部『ナメてる』ってことになる」)
め「そういう風に定義したら、そりゃ『ナメてる』んだと思うよ」
柳「たしかにww」
久「おっ! やっと理解してもらえました?」
柳「そっかー、ごめんなさい」
久「ナメるのはいいんですけど、『ナメてる』って自覚を持ってナメて欲しいですね。『私はナメてないけど~』って言うと、なんか自分を守ってない? って思っちゃうんで」
これを久保さんは、「柳さんが最初認めなかった自己欺瞞をやっと自覚した」と思っているようですが、誤解でしょう
単に、言葉の行き違いが解消されただけです
おしまい
まあ、言葉の定義そのものは重要ではないのですが……。
久保さんの「パターナリズム」という言葉の使い方は、必ずしも共有されているものではなくて、めんたね界隈や革命基地の外で使うと、伝達や表現に齟齬が出る可能性があると思います
(けっこう会話は成立すると思うのですが、言いたいことが伝わっていない場合、誤解されている場合が出てくるだろうと思います)
あと、パターナリズムについては、「一概に悪いものでもない」「パターナリズムと自由は必ずしも対立しない」「そもそも人は本当に自己決定しているのか」「自由意志とは何ぞや」みたいなことを言いたくなるわけですが、たぶん、久保さんが仰ってる話は、そういうのとは関係なくて……
久保さんが言う「ぼくはパターナリズムが嫌い」は、マナーの話みたいなものだと受け止めております
(こちらとしては、「『ご苦労さま』や『了解』は失礼」とこだわる人だと知ったら、まあ、相手が不快になると分かってるようなことは言わんようにしとこ……くらいの感覚で対応する話になるかなと)
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