平成21年2月15日 | 主宰者がオタクの演劇 「時空伝承ウインド」 を見てきました | |||||||||
前世紀に「アニメタル」が流行ったころ、「アニパンク」や「ナツメタル」などの便乗バンドの一種として登場したのが、「コスプレックス」でした。 声優さんを「2.5次元」と呼ぶことがありますが、彼女たちは「3.5次元」。 人間が2次元キャラの衣装を着るとむしろ4次元に近づくという、あまりにも正直な表現に驚いた記憶があります。 このように、3次元の女性が2次元に挑戦すると、次元の迷子になることが多いです。 さて、そんな前フリとは断じて無関係ですが、去年の夏休みに、SF演劇ユニット・アルベルトガーデンのお芝居を見てきました(当日券3500円)。 まず、演劇なのに、パンフの表紙が二次元ドリームノベルズみたいです。 公式サイトによると、「舞台上にアニメや映画のような世界を作り出す」のが目標だそうで、つまり この触角搭載型女の子を役者さんが演じるわけです。 まあ、演劇の性質上、その辺にツッコむべきではないと思いますが、お約束なので、いちおう並べてみました。 ……最初から全然似せる気がないので、ダメージは少ないですね。 イメージイラストではフッサフサのロン毛の「ゼロ」が、舞台ではハゲキャラなのも割り切っています。 むしろ心ひかれるのは、「高速戦闘システム」「ダークマターズ」「林 静火(ハヤシ シズカ)」あたりでしょうか。 特に「サイレント・キル」「相手を死に追いやってしまう」は、どことなく「エターナルフォースブリザード」「相手は死ぬ」と似たものを感じます。 ちなみに、ダークなんとかのリーダーである黒マントの怪人(設定画)の名前が「ゼロ」なのは別に偶然ではなく、主宰者が「コードギアス」のファンだから。 部下の女の子(黒の騎士団でいうカレンのポジション)が、劇中で「ゼロ様の命令は絶対遵守よ!」と発言して、元ネタを明確にしてくれます。 あと、部下の男の子が「ボロ雑巾のように捨ててやる」と発言したり、ルルーシュのモノマネをしながら命令すると敵が「イエス、ユア・マジェスティ」と言って自殺したり……。 ギャグシーンだけなら良いのですけど、2時間の劇があと10分で終わるクライマックスになっても、準主役のフレアさんが例のポーズで「ギガドリルゥ!!」と叫んでいました。
さて、会場に入ると、なんだか馴染みのある歌声で「くるっと まわって いっかいてん♪」と聞こえてきて、そのまま開演までずっと初音ミクメドレーでした。 (締めは初音ミクが歌うこの劇の主題歌で、ニコニコ動画にもアップされています) ちなみに、初音ミクが流れるあいだ、ちゆの後ろの席に座っていた年輩の女性ふたりは、次のような会話をしておられました。 「保険ってのは変わらないの? 60過ぎても」 「もうヨメには遠慮して遠慮して……」 「借用証書の金額だけだね。だからおばあちゃんがそれを決済して分からないようにすればね……」 どうやら観客のほとんどは「コードギアス」と無縁の人生を送っているようです。 そんな観客が見守る中、お芝居が始まります。 ナレーション「ここは、2108年。いまから皆さんをご案内するのは(中略)驚きと希望に満ちた、私たちの100年後!」「夢の超特急、リニアモーターカー! 東京と大阪をたった1時間で結ぶとんでもない列車が走ります!」 子供「うっはっはー、すげえー、すっげえー」 母親「もう、この子ったら、はしゃいじゃって」 父親「しょうがないだろ、こんな速い乗り物には乗ったことがないんだからー」 ううむ、22世紀の驚きと希望は東京大阪間が1時間ですか。確かに嬉しいですけど。 などと思いつつ見ていたら、外の景色を眺めていた子供が、「あのお姉ちゃん、すっごく走るの速いのー!」 そう、窓の外を、美少女がリニアより速く走っていたのです。 科学の力でリニアと併走。 未来というより、むしろ「エイトマン」や「サイボーグ009」的な60年代テイストを感じますが、とにかく彼女が主人公のウインドさんでした。 そんな感じで、ウインドさんは加速装置の持ち主。 演出的には「仮面ライダーカブト」を舞台でやるという感じで、ウインドさん本人は普通に動き、周囲が止まることで速さを表現します。 ただ、特撮ならともかく、それを舞台でやるとだるまさんころんだ状態というか、生身の人間がどれだけ上手く動きを止めてもソフトオンデマンドの「時間よ止まれ」系エロビデオみたいに見えるのが難点です。 それから、例のポーズで「キラッ☆」と言ったり、「虹野さんは俺の嫁」と吼えたり、「トランザム!」と叫んで真っ赤に光ってパワーアップしたりしているうちに、お芝居も終盤。 12歳の女の子が「世界を無に帰す」と言い出して、東京タワーを破壊したり、通りすがりのケンシロウを殺したりします。 加速装置のあるSFで電磁波が見えるヤンデル盲目美少女ということで、たぶん主宰者は「虎よ、虎よ!」のオリヴィア萌えと思われます。
この12歳も片付いて、最後はゼロ様との対決に。 光速近くまで加速した陽子と陽子を衝突させると、エネルギーの一部が高次元空間に漏れ出す可能性があると言われています。 ゼロ様の目的は、その要領でゼロ様自身が粒子加速器で加速されて、いまの腐った地球から高次元に脱出することなのだそうです。 でも、ひとりだと孤独なのでウインドさんも一緒に加速しようとするゼロ様。 「これから行く世界は俺とお前のふたりの世界。永遠という時間、俺とお前のふたりきりだああああ!!」 ここまで威厳のあったゼロ様(本名・冬月さん)が、クライマックスでキモオタみたいに。 結局、そんなウインドさん(本名・春香さん)のピンチを、彼氏の静火くんが助けてハッピーエンドとなるのですが……。 静火くん「お前は、どんなことがウケッ、ウケッ、起きようと、俺のことを受け入れてくれた! お前みたいな奴は生きていなくちゃならないんだ、生きろ春香! 春香ああああああああ!!」 ……噛むな。 そんな感じで、実は常時噛みまくりなのが一番つらかった、このお芝居。 「SF演劇」という点については、小説のように詳しい説明は入れられず、映画のように絵的に見せられるわけでもなく、という感じで……。 粒子加速器の中で加速されながら斬り結ぶゼロ様とウインドさんも、いったい彼らがどういう状態だと設定されているのか、理屈も絵ヅラもよく分かりません。 どうもその辺は観客がフィーリングで流してくれる前提で作ったらしく、演劇とSFの相性の悪さが出てしまった感じです。 演劇だからコレができる! といった要素もないので、とりあえず今回の内容ならラノベでやるのがベターかと思います。 ネットアイドルちゆはSF演劇ユニット・アルベルトガーデンを応援しています。 |