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平成18年3月29日 「MMR」の石垣ゆうき先生のマジック漫画が完結

 漫画でマジックを扱うのは難しいです。

 トランプで敵を切り刻んだり燃やしたりする『魁!!男塾』の男爵ディーノのように、手品というか殺人奥義を繰り出すだけなら大丈夫ですが、本格路線のマジック漫画を目指すと、いわゆる「タネあかし問題」に突き当たります。

 たとえば、少年ガンガンの「マジック・マスター」は、啓蒙のためのタネ明かしは必要という立場のマジシャンを監修に据え、漫画の中で本格的な手品のタネを紹介しましたが、反対の立場の人たちがこれに反発
 大阪奇術愛好会の方は、「マジック・マスター」のトレーディングカードについて次のように述べました。


 特定の1枚だけ欲しいと思っても買えないのです。つまり、子供に中味を見せずに買わせるのです。
 マジックの道具の売り方として、これほどあくどい販売の仕方があるでしょうか。私はマジックの道具を買い始めてから40数年になりますが、これほどひどいものは見たこともありません。常人ではちょっと思いつかない商売です


 これに対して、カードを作った側のマジシャンは、「(ブースターパックは)友達と交換して集めるという『トレード』のために存在するのです」「ホームページの中には、間違った情報、浅い考察のみで根拠のない結論に帰着しているものが見受けられます」「間違っても単なる誹謗中傷記事だけを鵜呑みにすることなきようお気を付けください」と一言多い反論。
 この辺の場外乱闘は、漫画の内容よりも面白かったです。

 ……さて、そんな前置きとほとんど関係がなくて恐縮ですが、最近話題のマジック漫画といえば、ボンボンに連載された「マジシャン探偵A」です。
 児童誌の制約の中で推理とマジックのドッキングという時点でダメそうな気がしますが、作者は「MMR」の石垣ゆうき先生

 「MMR」とは、キレる若者や不眠症について調べていくうちに、「市販のクッキーには目に見えない文字で『SEX』『SEX』と刻印されている」「平成の米騒動はヒトラーの末裔の仕業」といった衝撃の事実をデッチあげていき、最後は「1999年に人類は宇宙人に憑依されて異形の新人類と化すんだよ!」などと断言してしまう凄い漫画ですが、石垣ゆうき先生のナイスな画力のおかげで、当時の子供たちはけっこう本気で信じていました

 そんな石垣ゆうき先生が描いたマジック漫画はどうなったのか、「MMR」と比べてみると……。

『マジシャン探偵A』 『MMR』
『マジシャン探偵A』 『MMR』

 なんだってー!!

 ……いえ、本当はたまに「なんだってー!!」と叫んだり、ちょっとヒトラーが出てきたりするだけで、それほど「MMR」に似た漫画ではないのですが、もはや石垣ゆうき先生の絵で「なんだってー!!」と叫ぶだけでギャグとして成立するということは、ご本人も自覚してやっておられるようです。

 そして、最初の方は子供向け手品を絡めた「金田一少年の事件簿」みたいな話だったのが、気がつくと「くらえ!! 鳳凰の舞!!」「フン キサマの太刀すじは すでに見切っている!」というバトルを繰り広げているのもこの漫画の熱いところ。
 マジシャンのハズなのに原理はまったく不明だけど電撃が出せる古代エジプトの杖を使って敵を攻撃したりする辺り、手品とか推理よりバトルの方が面白いという真理に辿り着いてしまったようです。

 クライマックスでは、強敵の正体が実は親父だったとか、かするだけで絶命する猛毒を塗ったカードを投げつけて攻撃とか、「私にかまわず仕留めるんだ!!」とかで盛り上がった末に、主人公が空を飛び、仲間たちの生霊を背負いながら竜を出して攻撃していました。

 さて、そんな「マジシャン探偵A」と「MMR」の最大の違いはエロです。

 男5人がひたすら世紀末を語り合う男濃度全開の「MMR」と違って、「マジシャン探偵A」には、勝ち気でメガネの生徒会長っ娘や、自分の血を舐めながら「イイ‥‥たまらない‥‥ゾクゾクしちゃう‥‥」と笑うゴスロリ美少女14歳が登場。
 ちなみに、ゴスロリキチガイ娘は2話ほどしか出演していないのに読者投票では大人気で、わざわざコロコロではなくボンボンを買うような子供はやっぱりどこかおかしいと思いました。

 ともあれ、主人公がエロガキなので、女性キャラの多くがスカートめくり・女湯のぞき・おっぱいポヨポヨといったセクハラを受けているのですが、そんな中、やたらとガードが堅くて何のサービスもなかったのが、主人公の仲間の「キュラリーン」の効果音で変身する巫女さんでした。

 第30話「巫女危機一髪!!」は、そんな巫女さんにエロいことをするためだけに描かれたと思われるエピソードです。

 まずは冒頭、主人公が巫女さんにスカート(ハカマ)めくりを敢行しますが、巫女さんは古代エジプトの杖からバリアを放出してガード。その鉄壁ぷりを改めて見せつけて、読者をガッカリさせます。

 そこで、今回の敵が登場。物語の本筋は、十二星座の名前を冠した番人の部屋を順番に突破していくというちょっぴり聖闘士星矢な展開の真っ最中ということで、今回の敵はカニ座の番人です。
 目に見えない糸を使ったちょっぴり男塾な仕掛けで、巫女さんは捕まってしまいます。

 すると、カニ座の番人、「少し楽しませてもらおうガニ!!」と言い出して、いきなり巫女さんのハカマをめくります

『マジシャン探偵A』 第7巻131頁 『マジシャン探偵A』 第7巻130頁

 「おお〜〜!! なんと美しいおみ足!! 赤いハカマからのぞく真っ白い足!!! 何とも言えずビューティフルだガニ!!」と、カニ大喜び

 かの「聖闘士星矢」では、美形の猛者が多い黄金聖闘士の中にあって、カニ座のデスマスクは「まきぞえになったガキが結構いたかもしれんが これも悪をこらしめるためのささいなことだ! 戦争でもいちいち女子供をよけて爆弾をおとしているわけでもあるまい。それとおなじだクククク」などの名言を残したクソ野郎でした。
 この「マジシャン探偵A」でも、カニ座の番人はロリコンで足フェチの変態コスプレ親父ということで、カニ座は人間の最下層という少年漫画の伝統に忠実に従っています。

 ちなみに「聖闘士星矢」で最悪の発言は、乙女座のシャカの「きみがたすかるすべが、ただひとつだけある。大地に頭をすりつけ、このわたしをおがめ! それによって万にひとつきみはすくわれるかもしれん!」だと思いますが、こちらは美形で強いので、単に人間が卑しいカニ座よりはマシです。

 ともあれ、カニ座=変態の暴走は止まりません。「次は違うシチュエーションで楽しませてもらうガニ」と言いつつ、巫女さんのハカマを脱がせます

『マジシャン探偵A』 第7巻132頁 『マジシャン探偵A』 第7巻133頁

 脱がされる場面はけっこう危ない絵ヅラですが、小さいコマでサッと流すことで事なきを得ています。もちろんハカマを脱がす必然性など微塵もなく、とにかくどうしても着物姿にさせたかったんだという石垣ゆうき先生の強い意志が感じられます。
 「ハカマ姿もよかったけど白衣だけというのもシンプルイズベスト!! コ──フンするガニ!! まさにジャパニーズ着物超セクシーガニ!!」とハッスルするカニ親父が、なんだか石垣ゆうき先生の分身のように見えてきました。

 そして、ついに着物をめくりにかかる石垣ゆうき先生。

『マジシャン探偵A』 第7巻133頁

 男の子のスカートめくりは単なるイタズラですが、真性変態のオッサンが小学6年生を拘束した上でめくるのは、シャレで済まない絵ヅラです。
 さすがにこの辺が限界なのか、ここで主人公が助けに入り、わざと大量に出血して、見えない糸に血のりをこびりつけて見えるようにするという、マジシャンらしいんだか何だかよく分からない作戦でカニ親父を撃破。

 ついに巫女さんの下着は見えませんでした。

 ……と思ったら、最後の1ページで、主人公が大量出血で巫女さんを油断させた不意をついてスカートめくりを敢行。
 見えそうで見えないの連続で引っ張りまくって実は見えない方がエロいということを強くアピールした上で、でもそれはそれとして見たいという要求にもしっかり応えてくれるさすが石垣ゆうき先生!
 終わってみれば、このエピソード全体が最後のパンツを効果的に見せるためだけに練り上げられたようにも思える、見事な構成でした。

 ちなみに、「マジシャン探偵A」は先月のボンボンで大団円を迎えましたが、その最終回記念企画で、この「巫女危機一髪!!」が石垣ゆうき先生ご自身が選ぶ「マジシャン探偵A」Best1エピソードを受賞。添えられたコメントは、「描いていて楽しかった回です」という男らしすぎる告白でした。

 ネットアイドルちゆは石垣ゆうき先生を応援しています。

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