平成14年4月13日 | テレビを見ると傷害事件を起こす? | |
先日、米国で「10代前半にテレビを見る時間が長いほど、大人になってから傷害事件を起こす可能性が高くなる」という研究結果が発表されました。 その辺の話題では法律で規制をという話が出てきますが、ちゆはアニメや漫画が好きなので、「自分の好きなものを規制されるのはイヤ!」という立場になります(結論が先)。 でも、それをそのまま言っても、大人の世界では単なるワガママで片付けられてしまうらしいので、適当な理屈を付けなければなりません。 とりあえず思いつくのは……。 「テレビを見ると暴力的になるなんてウソ」 「それどころかストレス解消に役立っている」 といった主張でしょうか。 前述の調査については新聞記事だけでは不明な点もありますが、テレビと暴力の関係については、古くから調べられています。これについて、少し考えてみましょう。 日本では、平成11年に発表された総務庁の調査結果があります。 テレビで暴力シーンを多く見ている子どもは、あまり見ない子どもに比べて、暴力を振るったり、万引きをしたりする割合が高いという結果です。 これを受けて日経新聞は、「暴力番組が子どもの攻撃行動を助長する」と断言しました。でも、この調査だけでは、そのような結論は出せません。
ただし、(2)の第3の原因については、「握力の強さ」「背の高さ」「近所の少年が暴力的であるか」など、「暴力番組」「攻撃行動」に関連しそうな227の要因について同時に調べた調査があります。 すると、それらの要因が等しくなるように考えても、やっぱりテレビ暴力の視聴と攻撃行動に関係がありました。 つまり、「テレビ視聴」と「暴力」の関係は、別の原因による見せかけのものではないと思われます。 さて、これに対して、「暴力番組を観るとスカッとするから、かえって実際の暴力は少なくなる」という意見があります。いわゆる「カタルシス効果」です。 しかし、多くの実験や統計調査の結果は、残念ながら「カタルシス効果」の存在に否定的です。 暴力的な番組を見た後は、少なくとも一時的に暴力行為が増えます。また、高校生のフットボール選手は、1週間の試合のシーズンの間、スッキリするどころか敵意を増大させていきます。 もちろん、そんな数個の例だけで言えるほど単純な話ではありませんが……。少なくとも子供に関しては、「カタルシス効果」はないと言えるようです。 ところで、上記のような調査は、現実社会で実際にという話ではなく、あくまで短期間の影響についてです。そこで、現実社会での影響を長期的に検討する「パネル調査」も行われました。 8歳の子供たちを調べて、「攻撃的な子ほど、テレビで暴力を多く見ている」という結果が出てから、11年後に再び同じ少年たちを調べます。 すると、8歳のときにテレビ暴力をたくさん見ていた子は、見ていなかった子よりも、ずっと攻撃的でした。 そして、「8歳のときにテレビ暴力を見ていたこと」は11年後の攻撃性を予測しましたが、「8歳のときに攻撃的であること」は11年後の暴力を予測しませんでした。 この結果からは、テレビを見ることが攻撃行動の原因であり、その逆ではないと考えられます。 以上、ここに書いたことだけ見ると穴のありそうな調査ではあります。パネル調査の結果には、解釈の余地もあるでしょうし。 実験が行われた頃の米国の暴力番組と言えば、西部劇など人が瞬時に死ぬタイプ。日本の番組のように痛がって死ぬものと同じに考えるのはマズイかも知れません。 とは言え、これらの調査や統計の手続きは概ねまっとうです。少なくとも学者さんの世界では、「テレビ暴力の視聴は攻撃行動を助長している」と見るのが自然のようです。 「テレビを見ると暴力的になるなんてウソ」 「それどころかストレス解消に役立っている」 などと主張するのは、あまり得策ではありません。 ……と、長々述べてみましたが、「暴力的な番組を見たら暴力的になる」なんて、個人的には当たり前だと思う次第で。 むしろバイオレンス劇画など、読んだ後で人を殺したくなってなんぼだと思います。一時的な反応だけでなく、性格形成にまで影響するならなお良し。他人に影響も与えられない表現なんかゴミです。 ですから、見る人を犯罪に走らせるような表現があるのは前提として、そこから「暴力を減らすこと」と「表現の自由」を天秤にかける話をしなければならないと思います。 そういえば、ボクシングのヘビー級チャンピオン決定戦が公開されてから数日は、米国で殺人が増えるそうです(興味深いことに、白人ボクサーが敗れた時は白人への殺人が増え、黒人ボクサーが敗れた時は黒人への殺人が増加)。 では、公共の安全のためにボクシングを禁止するべきなのかと、そういう類の話ですね。 そこで、もう1つの調査結果を持ち出してみます。 子どもたちに、「なぜテレビの暴力を真似するのは良くないか」「なぜテレビを長く見過ぎるのは良くないか」といったことを考えさせてから、上記のような調査を行いました。 すると、テレビ暴力視聴時間と攻撃行動とは、ほとんど関係がなくなったのです。 子供がしっかりとテレビに向かい合えれば、暴力映像の影響は受けません。もちろん、そう自然になれるものではないので、親の働きかけが大切です。 結局、テレビごときに絶対の洗脳力があるはずもありません。私たちの大切な表現の自由を制限し、世の中を無菌状態にしなくても、家庭のしつけで対応できる問題なのです。 ……と、ここで表現の自由の大事さを切々と語るべきなのですが、ちょっと無駄に長いニュースになってしまったので以下省略。 ネットアイドルちゆは、アニメや漫画を応援しています。 |