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平成13年8月29日 ニフティ会議室の名誉毀損、地裁判決

 インターネットが主流になる前は、会員制のパソコン通信が賑わっていました。その最大手がニフティです。

 ニフティは、「アニメフォーラム」「特撮フォーラム」「コメディーフォーラム」といった具合にテーマごとの「フォーラム」に分かれており、その中に設置された会議室やチャットで交流が行なわれます。

 数年前、そんな中の1つである「本と雑誌のフォーラム」会議室で揉め事が起こり、訴訟沙汰に発展しました。
 先日、その地裁判決が出ましたので、ことの経緯を簡単にご紹介したいと思います。

 発端は、三枝さんの発言の中にあった「片をつける」という表記。それに関して、神名さんという方が指摘をされました。


 蛇足ながら。
  ×「片をつける
  ○「方をつける
 だよね、日本語。


 これに、三枝さんは反論。次のような議論になります。

 三枝さん「辞書で調べると、”片がつく”で合っている」
 神名さん「”方”には最終的な落ち着き場所という意味があるから、かたをつける(=おさまらせる)の漢字には”片”より”方”が相応しい」
 三枝さん「小学校では”方”に統一して教えたりするが、実際には”片”も使われている」
 神名さん「小学生でさえも”間違い”と認識するような表記をあえて押し通すことに、どれほどのメリットがあるのか疑問だ

 そんな会話に、A〜Eさんという方が加わってきます。ご自身で仰られていたプロフィールによると、ライター志望・東大卒・うつ病の方だそうです。

 A〜Eさんは、「方をつける」は誤りという意見の持ち主。
 「いい加減、日本語を間違ってるを認めて、謝りなさい」と主張して、「『神名さん=帰国子女でよく日本語を知らない主婦』に一票」などと述べます。

 これに対して神名さんは、「あなたの妄想特急の勢いには、ほとほと感服いたします」「日本語さえまともに綴れない・読めない『自称東大卒』に至っては、むしろ同情すらしております」などと反論。

 その後も会話は続いて、A〜Eさんが神名さんを「小中学校で児童・生徒の苛めの対象になってる憂さをネットで晴らす、変態的国語教師」に例えるような場面もありました。

 ともあれ、そんなやり取りが平成10年の末。その翌年の2月に、A〜Eさんがニフティを相手に訴訟を起こしました
 要求は、「”妄想うんぬん”などと、名誉を傷つけられた。慰謝料100万円を支払って、神名という人物の本名と住所を教えろ」という感じです。

 それから2年と半年。今月の27日に、ようやく東京地裁の判決が出ました。

 裁判長は、

 「言論による侵害に対しては言論で対抗するのは表現の自由の基本原理。パソコン通信は必要かつ十分な反論をすることが容易な媒体だ」

 ということで、会議室での両者の書き込み内容を検討。
 その結果、一連の書き込みは侮辱的だと認めたものの、そのきっかけはA〜Eさんの挑発的な発言で、A〜Eさんも反論していると指摘します。

 そして、

 「(一連の書き込みは)正当な言論の行使として許された表現行為の範囲内だ。(神名さんは)不法行為責任を負わない」
 「原告が必要十分な『対抗言論』をできている以上、社会的評価が低下する危険性は消滅した

 と、判断。「一連の発言は名誉棄損にあたらない」ということで、A〜Eさんの訴えは棄却されました。

 以上、興味深い判例ということで、何かのご参考になればとご紹介しました。

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