平成13年8月16日 | リーフ公式サイトの掲示板が閉鎖(前編) |
平成8年。かつて国民機とまで呼ばれたPC98が、Windows95の登場によってその座を追われつつあった頃。 1本のエロゲーが発売されました。 その名は「雫」。 サウンドノベル型のエロアドベンチャーゲームの先駆けで、当時はニフティの会議室やクチコミで評判になりました。 ゲームを開始すると、学生の主人公が教室で授業を受けている場面から始まります。 シャーペンをカリカリと走らせたり、どこにでもある普通の授業風景です。しかし、主人公は唐突に世界滅亡の妄想に浸り始めます。 地球上の全ての土地が新型爆弾で焼き尽くされて滅亡。人々は指や耳たぶがちぎれながら逃げ惑い…。 そんな光景を妄想しながら、主人公は言い知れぬ興奮に駆り立てられ、脈打つ快感に息を荒げるのです。授業中に。 ところがその時、突然クラスメートの女生徒の1人が「くすくすくすくす…」「あははははは…」と笑い出します。 そして、「セックスセックスセックスセックスせっくすせっくすせっくすせっくすせっくすせっくすせっくすせっくすせっくす…」などと叫んだかと思うと、自分の顔を爪でガリガリと引っかいて血まみれになって保健室に運ばれてしまいました。授業中に。 その女生徒の姿を見て、親近感を抱く主人公。…そんなインパクト抜群の導入で、物語はスタートします。 どこか病んでいますが、しかしそれでもエロゲーですからヒロインの美少女も出てきます。 初登場シーンは、学校の屋上。そんなところに1人で何をしているのか、彼女は次のように教えてくれました。 「私、ここで毎日、電波を集めているの。普通の電波を集めるときは金属のアンテナを使うけど…でも、私の電波は金属のアンテナじゃ集められないから、身体を使うの。私がアンテナになるの」 どうやら、ヒロインも壊れていたようです。このゲームにはマトモな人間は出てこないのでしょうか。 …などと思っていたら、ちゃんと普通の女の子も出てきました。明るく元気で好奇心旺盛なバレー部員、コロコロと表情が変わってよく喋る美少女・さおりんの登場です。 さっそく、1プレイ目はさおりんとラブラブになろうと決意。サクサクと物語を進めていきます。 そして… エンディング:毒電波に操られたさおりんが、自らの手でハサミを喉に突き刺して「これ…ゆめ…だよね…?」と言いながら死亡。 南無阿弥陀仏。なまじさおりんが普通の明るい少女だっただけ、よけいに救われませんでした。 そんなこんなが初プレイで、ちゆは一発で「雫」が好きになってしまいました。 なお、このゲームはアダルト描写も充実。 毒電波に操られたさおりんが絶望感たっぷりに陵辱される鬼畜シーン、毒電波で発情したさおりんとのラブラブ萌え萌えエッチシーンなど、お好みに合わせて濃密なグチャドロでお楽しみ頂けます。 さて。 そんな「雫」を作ったのがリーフ。神戸を本拠にするエロゲー製作会社、(株)アクアプラスのブランドです。 処女作は平成7年の「DR2ナイト雀鬼」という脱衣麻雀ゲーム。続いて「Filsnown」というRPGを作って、「雫」は3作目になります。 「雫」の次には、さらにシナリオを練りこんだ同系統のゲーム「痕(きずあと)」を製作。これも、一部ファンから熱い支持を受けました。 そして、平成9年。リーフは「To Heart」を発表します。 それまでのリーフのイメージに反したほのぼの明るい学園青春もので、エロシーンを省いてプレステ版を発売しても何の不都合もない代物でした。 「リーフのことだから、どこかにグチャドロの鬼畜な陵辱シーンや主人公かヒロインが死んで終るバッドエンドが存在するに違いない」 発売当初にそう信じていたことが、今となっては懐かしく思い出されます。 ともあれ、ダーク系で鳴らしたリーフの音楽・シナリオ・演出・その他をすべて萌えキャラの創出に注ぎ込んだ「To Heart」は大ブレイク。 個性的な電波を発散する「雫」「痕」と比べて広く受け入れられる内容だったこともあって、爆発的に広まりました。 というか、マルチ大人気。 そして、リーフはコミケに企業ブースで参加して紙袋などを販売。3時間待ちという夏休みのビッグサンダーマウンテンよりも待たされる行列を作りました。 リーフは、「一部のファンが認める濃いソフトハウス」から、一躍「エロゲー界のトップブランド」になったのです。 |
平成13年8月17日 | リーフ公式サイトの掲示板が閉鎖(中編) | |
昨日のニュースで、「雫」「痕」「To Heart」を作った関西のブランド・リーフが、人気ソフトハウスになったことをお話しました。 そのリーフ黄金時代の3作品は、高橋龍也さんが話を作って、水無月徹さんが絵を描いたものです。 リーフの成功は、その高橋&水無月コンビの力によるところが大きいとされ、両者は一部ファンの間でカリスマ的な支持を得ています。 ところで、ソフトウェア業界では当たり前ですが、リーフは人の出入りが激しいことで有名です。 早い時期に退社したのは、「雫」の音楽を作った折戸伸治さん。もしかすると高橋&水無月コンビ以上に、リーフ躍進に貢献された方です。 下川専務(現・社長)との不仲で解雇されたという噂もありますが、いちおうは「一身上の都合で」とのこと。 折戸さんは退社後、「ONE」「Kanon」に参加。「泣きゲー音楽界にこの人あり」という名声を獲得しました。 その後、プログラムの生波夢さん、背景の鳥のさんなどなど、黄金期を支えた主要メンバーは次々と退社していくことになります。 一方の新規入社組は、「ハーレムブレイド」の音楽などで知られる米村高広(CHEMOOL)さん、同人で有名だった原田宇陀児さんなど。 さらに、かつてヒット作「Piaキャロットへようこそ!2」の原画を手がけたみつみ美里さん・甘露樹さん・鷲見努(CHARM)さん等を、 「ビ・ヨンド」のシナリオライター・む〜む〜さんも加えて、関西とは別に新しく東京開発室を設立しました。 そうして平成10年、リーフは「WHITE ALBUM」を発表。 主人公は最初からアイドルの恋人がいるという設定で、浮気を前提にして、裏切りの痛みにカタルシスを感じるゲームでした。 これは高橋&水無月コンビではなく、原田宇陀児さんが脚本、古参の河田優(らーYOU)さんが原画を手がけたもの。 平成11年には、「こみっくパーティー」が登場。 同人誌即売会でオタク活動をしながら女の子をゲットするというファンタジーもので、製作は同人作家が多い東京開発室。CD−ROMドライブが2つ以上あるパソコンでは起動できないといった豊富なバグでも有名です。 平成12年は、「まじかる☆アンティーク」。 さらに新しく入社した椎原旬さん&はぎやまさかげさんを中心に作られ、発売後まもなくしてお2人は退社されました。 こうして見ると、優秀なスタッフをかき集めて、グッズ販売で商魂たくましく資金を稼いだ割に、ゲームの新作は年に1本ペース。 特に水無月&高橋の黄金コンビの新作が何年も作られていないことに、不満を漏らすファンもいました。 ここで、少し話を脱線。挙げればきりがありませんが、リーフに関しては次のような話題もあることもご紹介しておきます。 ●コミケ事務局との確執 平成9年の夏からコミケに参加するようになったリーフですが、そのファンの数に比べて整理人員が少なく、他のブースに迷惑との苦情が。 そんなこんなでコミケスタッフと揉めたりして、平成11年の冬でリーフはコミケから撤退しました。 ●「こみっくパーティー」開催 コミケ撤退後、ゲーム「こみっくパーティー」の中に登場した同名の即売会を、現実世界で本当に開こうと企画。 ボランティアでスタッフ参加されたファンの方をして、「所詮…リーフにとって俺達は捨て駒なんですよね…」と言わしめるイベントでした。 ●同人誌の締め付け かつてはクチコミや同人誌を中心にファンが盛り上げたリーフですが、段々とテキストや画像の利用規制を強化。 最終的にはリーフ同人誌の書店売りを禁止しました。 ●「痕」おまけシナリオ問題 「痕」のゲーム本編をクリアした後に遊べる「おまけシナリオ」が、講談社の「ショートショートの広場(1)」に収録されている「できすぎ」に「酷似」(リーフ公式見解)。 発売直後から言われていたことですが、最近になって講談社から抗議を受けたらしく、正式に謝罪文を出しました。 ※ 関連する話題として、「雫」も大槻ケンヂさんの小説「新興宗教オモイデ教」を「下敷き」にしたことも付記しておきます。 ●コナミが「ビジュアルノベル」を商標に出願 「雫」や「痕」は「ビジュアルノベル」と銘打たれていますが、なぜかその言葉をコナミが商標に出願。弁理士の方に「弊所ならば、このような出願はお勧めしないのですが」と不思議がられています。 そんなこんなの出来事と前後して、平成13年2月9日。リーフの最新作「誰彼(たそがれ)」が発売されました。 ちゆは未プレイですが、話に聞く限りでは「駄作ではないが、リーフの最新作として『雫』『痕』『To Heart』クラスのものを期待しておられた方々は失望した」という感じだそうです。 そしてその直後、いわゆる葉鍵板2・14事件が起こります。 ちょうど「ちゆ12歳」の開設日にあたる2月14日、ネット上に552文書と呼ばれる怪文書が出回ったのです。 その中身は、平成12年の春から夏にかけて、一部のリーフ関係者が内輪でこっそり愚痴をこぼしていた掲示板のログ。 それを信じるならば、高橋&水無月の黄金コンビはすでに平成12年夏の時点で退社。また、「WHITE ALBUM」の脚本を担当した原田宇陀児さんも12年5月で退職しておられました。 さらに、そのログの中には、原田さんが辞表提出前後の心情を吐露しておられた部分もあり、リーフ社内の寒い人間関係やボロボロのチームワークが明らかになりました。 たとえば退社の10日ほど前、原田さんは「書きたくねえー。脅されて書いてるからね、いま」「『ウチで出せば何でも売れるから』的発言をされてがんばろうかって気になるやつもいねえんじゃないか」と発言。 そして、医者に言われた神経衰弱を理由に辞表を提出したとき、下川専務(現・社長)に次のように言われたそうです。 「医者の電話番号おしえろ」「他の大きいメーカーから質問がきたら、プロジェクト放棄と答えるぞ」「プライドがあったらコミケには出られんよなあ」 その翌日の原田さんの書き込みは、「悔しいよ、めちゃくちゃに」「大罪は、ああ、判ってる、いざとなったら部下を切れる上司の言葉に振り回されたってことだ。くそっ。悔しい。悔しい 悔しい悔しい!」……。 他にも、「新入社員のモデラーが一人消えました・・・急に来なくなったそうです。電話連絡があり、退職したいとのこと」というのは日常茶飯事。 仮入社の段階で「なんか会社の空気悪いし、辞めよかぁ? 今のうちやで」と言っていたのに続けてしまったことが最大のミスだった、という発言もありました。 また、高橋&水無月コンビが退社した際には、「(送別会もなくて)自分も、軽く会釈しただけ。2年半同じ場所で仕事した人間なのに。ああ、この寒さがリーフだね・・・」というコメントも。 余談ですが、下川専務、高橋さん、水無月さんなどあらゆる人間が2chをチェックしているという発言もありました。 2chに関しては「情報洩れ早すぎ。しかもなんか尾ひれついてるし」とのコメントもあって、誤報を交えながらも内部の人間が呆れるほどの速報性だったようです。 ともあれ、多くのファンが本気で吐き気を覚えたという事件でした。 切望された高橋&水無月コンビの新作がリーフから出ることは永久にあり得ず、「雫」「痕」「To Heart」の主力スタッフはすでにバラバラ。 そういえば、誰かが書いた、こんな仮想小説がありました。
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平成13年8月18日 | リーフ公式サイトの掲示板が閉鎖(後編) | ||
「雫」「痕」でカルトな支持を得て、「To Heart」でエロゲー界のトップブランドにのし上がったリーフ。 しかし、その劣悪な社内環境から優秀な人材は次々と離れていき、今年2月に発売された起死回生のソフト「誰彼」も、ファンの期待に応えられるほどのソフトではありませんでした。 以上のことを一昨日と昨日でお話ししましたが、今日は、そんなリーフに関する最近の話題です。 最初から今日のニュースの分だけ書けばよかった気もしますが、あまり深く考えないことにします。 つい先日、パソコンでそれなりに人気を博したゲーム「こみっくパーティー」が、ドリームキャストに移植されました。 5月24日から6月28日、6月28日から7月26日、そして7月26日から8月9日。順調に延期された後に発売されたそのソフトは、しかし、またもファンの非難の声にさらされました。 主な理由は、3つです。 割れまくりの低質な音声、プレイしづらく改悪されたシステム、そしてプレイ中に突然ゲームが停止するなど多数のバグ。 特にバグに関しては、「セーブ中にハングアップして、ビジュアルメモリのデータが全部消えた」という方もおられます。 リーフでは現在「調査中」だそうですが、もしも本当にソフトに原因があるのでしたらかなり致命的な欠陥だと思われます。 ただし、郁美ちゃんのCGが追加されて最後も変わっているなど、ドリームキャスト版だけの利点もあるとのこと。 郁美ちゃん萌えの方などは、あえて地雷に踏み込む勇気も必要かも知れません。 ところで、リーフには公式ホームページがあります。 その掲示板の常連だったというFrom dusk till dawnさんは、8月20日の日記で、昔のことを次のように振り返っておられます。 「ありとあらゆる批判が渦巻き、それが議論を呼び、しかもそれらが許容されるというかなり太っ腹なBBSでした」。 しかし、現実世界で開催した「こみっくパーティー」への不満が多数書き込まれた頃から、その掲示板も変質。 リーフに批判的な書き込みは問答無用で削除されるようになりました。 また、リーフにプロバイダのメールアドレスを教えて認証キーをもらった人しか書き込めないのですが、批判的な発言をすると、その認証キーも使えなくなってしまいます。 さらに、数多くのNGワードが設定されて、「水無月」「原田宇陀児」など退職したスタッフの名前や「バグ」「2ちゃんねる」「LEAF美少女解体真書」といった単語を含む書き込みは不可能に。 批判の「批」の字が含まれているだけでも駄目という徹底ぶりに、昔の空気を懐かしむファンからは「やり過ぎ」の声も挙がりました。 さて。 そんなオフィシャル掲示板に先日、ちょっと変わった書き込みがありました。 詳しくはエロゲーオタク研究さんが8月14日に紹介しておられますが、たとえば次のような文章です。
なお、竹林明秀さんは「誰彼」の脚本を担当された方。 かつて講談社から抗議を受けたシナリオを書いた青紫さんとよく似た文体の方で、「『青紫には二度と書かせない』と講談社に約束したために『誰彼』では『竹林』の別名を使った」という噂もあります。 ともあれ、同じようにして、単なる頭の悪い書き込みに見せかけた「誰彼最悪金返せゴルァ」「講談社と揉めましたね」などの発言が繰り返されます。 数日後、それに対してリーフは次のような措置を取りました。
荒らし行為に対する報復&見せしめ措置として、実メールアドレスを晒したというわけです。 確かに、リーフの「掲示板インフォメーション」には、「当社に対する批判発言は禁止」などの利用規約に違反した人は予告なくメールアドレスを公開すると明記されていました。 上の書き込みをされた方も、それを覚悟の上で投稿されたはずです。 それでも、まさか本当にやるとは思いませんでしたけれど。 ともあれ、その9時間後には「只今をもって当掲示板を終了させていただくことをお知らせいたします」という突然の告知。 「書き込みはできないが、読むだけはできる状態」が2日ほど続いた後、掲示板は完全に閉鎖されてしまいました。 404エラー。ページが見つかりません。 ただ悲しくなりました。 |