平成17年5月3日 | 「小学六年生」がリニューアル | ||||||||||||||||||
30年くらい前は、「小学六年生」にも暑苦しい漫画が満載でした。 たとえば、当時の学園ドラマ「進め!青春」の漫画版。 主人公は、「青年の辞書に不可能という言葉はない」が口癖なので、あだ名が「ナポレオン先生」になった熱血教師です。 最終回では、有名校に推薦入試で合格した生徒が、ナポレオン先生に影響されて「戦わずして勝ったのでは男らしくありません」などと言い出し、推薦を断って一般入試に挑戦。 その受験に落ちてしまい、教頭先生(もちろん悪役)に罵倒されます。
彼が泣き崩れて置き去りにされたところで、熱血教師・ナポレオン先生の出番です。ナポレオン先生、とりあえず彼と海岸で取っ組み合いをしてから……。
この説教を受けて、彼も「ぼくはもうれつにハッスルしている」と言って立ち直るのでした。 ……平成生まれの人には信じてもらえないかも知れませんが、こういうのが人気だった時代があったんです。 そんな感じで、昔の「小学六年生」は、「巨人の星」の川崎のぼる先生や「ゴルゴ13」のさいとうたかを先生といった濃ゆい執筆人がズラリでした。 しかし、時代の流れとともに、そんな「小学六年生」も1冊230円から540円に値上がり。 連載漫画も、楠桂先生がカードキャプターさくら似の美少女を描く「幽子ちゃん100連発!!」や、小学生の男の子が女装した姿で美少女アイドルになって活躍する「少女少年」など、オタクの鑑賞にも堪えうる萌え漫画が増えました。 「性教育」という大義名分があるので、ナプキンやタンポンや生理痛の出現率が異様に高いのも特徴。 しかし、高田裕三先生の「ゴリ押し成就ドラマジ!?」では、たまたま胸のあたりに付着したカレー汁という言い訳のなんちゃって乳首が登場するなど、原則として乳首禁止ルールが存在するようです。
ただし、先日単行本 ともあれ、劇画が載っていた頃は30万部とか売れていた「小学六年生」も、最近は売り上げ不振。 日本雑誌協会のデータを見ると、「小学一年生」は今でも単体で28万部を誇っているのに、卒業までに23万人に逃げられています。
そんな「小学六年生」が、今年度から大幅リニューアルを敢行しました。 ZAKZAKの報道によると、「おませな現代の12歳に合わせ、『将来の職業は』『お金持ちになるには』など、超現実的な『ハウツーもの』を充実させる」そうです。 そのリニューアル第1号の目玉企画は、村上龍先生協力の「12歳のハローワーク」。 「一人前の大工さんは月収70万」「南極観測隊員は1日平均12時間以上働いて日給1万円」「スチュワーデスは3K職場」など、各職業の人たちの現実的なコメントが満載です。 編集部によると、「小学六年生は、親が子供に買い与える最後の本。最近はまた“教育ママ”が増加し、よりお勉強寄りの内容を、といった要請が増えてきています」という分析だそうです。 つまり、一発逆転を狙ったリニューアルというよりは、このままではママに「小学六年生」を買ってもらっているアホガキ層にすら逃げられてしまうという危機感から延命措置をしているようです。 それでも、いちおうオシャレ関連ページは存在しており、「男だって、眉毛を変えるとアカヌケる」などの情報が紹介されています。 ……「この企画は中学生気分を味わっていただくために、あえてフリガナをはずしています」といったノリは小学生をバカにしすぎだと思いますけど。 漫画は減らす方針で、今年から「あさりちゃん」すら消滅。「小五」から惰性だけで買い続けている層への影響が心配です。 その方向だとポケモンも削除対象だと思われますが、読者アンケートを見ると、今後取り上げて欲しいテーマの選択肢が「友情/勉強/健康/貯金/ポケモン/戦争/スポーツ/中学/受験/恋愛/クラブ活動/旅行/ファッション」だったりして、どうやらポケモンは勉強や恋愛に匹敵する重要コンテンツのようです。 そして、数少ない連載漫画の1つには西原理恵子先生を起用。 西原先生が以前「小学六年生」に連載した「はれた日は学校をやすんで」は、せつない系のポエミックな作風でしたが、今回は身も蓋もない系のファナティックな作風。 「おばさんは 何が言いたいかとゆうと きみたちの ひかりかがやく ひとみが とてもフユカイ」「知ってるか 360万円て人が買えるぜ」「でも おばちゃん 実はさくらももこより売れてるよ」といった話が延々と続きます。 西原先生が小六のテストに挑戦する回では、6年生1万人の中で7673位を記録した西原先生に対して、75位だった担当編集者が「7600番も下のおばさんが私より10倍稼いでるというのが腹立ちますね」と本音コメントを披露しますが、これは教育ママ的に好ましいネタなのでしょうか。 また、もう1人の目玉漫画家は安野モヨコ先生ですが、こちらは連載3回目で早くも予告なく休載しており、ちょっぴり先行き不安です。 あと、「めざせ連載!! ギャグ漫画バトラー」という企画では、週刊少年ジャンプの「純情パイン」(13週打ち切り)と「少年エスパーねじめ」(20週打ち切り)で知られる尾玉なみえ先生が登場。アンケート結果次第で尾玉先生の「小六」連載が実現するみたいです。 ともあれ、そもそも今のガキに「小学六年生」なんて名前の雑誌を売ろうというのが最初から無理難題ですから、迷走するのも当然かなと思います。 ネットアイドルちゆは「小学六年生」を応援しています。 |