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平成17年2月6日 「しがない記者日記」騒動

 朝日新聞の1月19日の夕刊に、「ブログっておもしろい!」という記事が載っていました。

 それによると、ブログは「新しいホームページの形として注目され、簡単に作成・更新できると人気」で、「尻込みせず、自分のブログを作ったら世界が広がりそう」とのこと。
 また、ブログを楽しむポイントは、「ブログをコミュニケーションの道具としてとらえ、ネット上の人間関係においても互いを尊重することが重要」だそうです。

 さて。

 最近、現役の新聞記者の方のブログも増えましたが、その中の1つが「しがない記者日記」です。
 管理人は朝日新聞の記者の方で、ブログ内では自分の勤めている社名を伏せて、「NHKと朝日新聞がやりあっている。というより、明らかにNHKがひどい」と擁護したりしていました。

 1月29日。そんなブログに寄せられたトラックバックに対し、記者さんは「右翼大好きミーハーサイト」と題して次のように述べます。


 トラックバックという欄にいくつかあるからクリックしてみた。

 オー、NHK、というか、右翼大好きミーハーサイトだ。おもろい。

 論理は破綻してるし、「検閲」のなんたるかもわかってない。政治家に事前に番組を見せる、という行為じたいの重みもさっぱりわかってない。自分と意見が違うと「アカ」「サヨ」「プロ市民」とレッテルをはって議論をごまかす

 でもおもろい。こうやって人間の思考力って退化するんだな、と
 人間から猿への逆ダーウィンの退化論を実証できそう。
 みんなで観察してみよう


 「レッテルをはって議論をごまかす」ことを否定しながら、「右翼大好きミーハーサイトだ」というレッテル貼りから始まるのが素晴らしいです。
 「おもろい」以下のくだりも、なかなか相手を尊重した文章ですね。そこまでコキおろしながら、論理がどう破綻しているのかなど具体的に触れないのは、「向こうは『右翼』なんだから説明するまでもない」という意識でしょうか。

 当然、たくさんの反論コメントが付きますが、それを受けた2月4日の更新は……。


 南京大虐殺がなかったとか、従軍慰安婦は存在しなかった、みたいなニュアンスの、それこそ捏造コメントまでいろいろ届いて、最初はうんざりして、ばっさり削ろうかと思ったけど、思いとどまった。というか、読むのが(時間的にはしんどいけど)おもろくなってきた
 なぜそんなウソを信じるの? 一方的なナショナリスティックな歴史観を持ちたがるの? どんな人がそう思うの? と好奇心がわいてきた

 次の企画記事のヒントになりそうな気もしてきた。(略)誹謗中傷する方へ。せめて年齢・年代を書き添えてください。どんな人がどんな意見を言うのか知りたいので。


 相手を「おもろい珍獣」あつかいして優位に立とうとするスタンスは、前の文章と変わりませんでした。
 その時点で、本当に問題だったのは何か分かっていないと思われます。

 その6時間後の更新では、従軍慰安婦について何点か述べた上で……。


 私も素人なんで、細々した部分をつつかれても反論できませんが、物足りない方は、吉見教授が書いた岩波新書やら、国連の文書をご参照ください。
 正直めんどくせーなあ、とも思うけど、昔本で読んだことを再勉強する機会を与えてくれた方々には感謝してます。これ、本心。


 記者さんのオススメ文献は吉見義明教授の「従軍慰安婦」でした。
 のちに否定された記述も多く、少なくとも、このデリケートな歴史の問題に対して「これ1冊でOK!」なんて本ではないのですが……。
 そもそも、そんな有名すぎる文献は読んだ上で反論している人がほとんどだと思いますが、記者さんの頭の中の「右翼」はよほど不勉強みたいです

 またもコメント欄にたくさんの反論が寄せられ、2月5日、記者さんは「新記録」という文章を更新します。


 おお、新記録
 1日で1198アクセス。
 2ちゃんねるの影響力ってすごいなあ。
 (略)
 しかしそれにしても、ミソクソにけなす人が何度も見てくれるってのが不思議。
 不快だったら見なきゃいいのにね
 実はファンになってくれたのかな。
 ありがとう

 目標2000。


 ……記者さん、こわれちゃった

 この後、「プライバシーを暴くようなコメントが掲載され、知人より『ちゃんと管理するべきだ』と強いご批判をいただきました」ということで、思い切って自分の書いた文章ごと全部削除
 新たに、「ページはやめませんよ」という文章をアップロードします。


 「右翼の連中はしつこくて怖いから、1時間ごとにコメントのページをチェックできないなら閉鎖したほうがいいよ」とまた注意されました。「1個1個削ればいい」ってことですが、1日中パソコンに向かってる時間はありません。
 コメントは載せられませんが、このページはやめませんよ。


 ……ああ、記者さんはまだ「右翼」と戦っておられたのですね
 単に面白そうだから「みんなで観察してみよう」と寄ってきただけの人も多いのですが、記者さんには全員「右翼」に見えている様子。せっかく自分のブログを作ったのに、なかなか世界が広がりませんね

 そうして、読んだ人がコメントを付けるのも不可能な設定になり、トラックバックはビシバシ削除されていき……。ブログはコミュニケーションの道具ではなく、単にホームページを簡単に作成・更新できるツールと化しました
 結局、「ページはやめませんよ」以外には、「今朝のウンコも絶好調だった」みたいなどーでもいい料理の話だけが残ります。

 そして、2月6日、次の文章がアップロードされました。


 誹謗中傷、脅迫まがいの発言、一方的な公開質問状…と、まあ、100人近いッ人たちが、すさまじい袋だたきを始めるわけですね。(ちなみに一昨日のアクセスは7000を超えていたんで目標は成就しました)
 こりゃ、参った。さすがに対応できませんわ。
 事実がどうであれ、袋だたきにはかないまへん。多勢に無勢。
 よって敗北宣言。


 「悪いのは向こうであって、本当に正しいのは俺なんだ」と言わんばかりです。こんな偉そうな敗北宣言、見たことがありません。

 それから、「小林よしのりファンにおすすめ」という記事が更新されました。


 最近小林よしのりファンになった方への皆様におすすめ本。

 ▽田原総一朗・小林よしのり「戦争論争戦」幻冬舎文庫

 これなら両方とも「サヨ」「プロ市民」じゃないし、抵抗感ないでしょ? 安いし、薄いし読みやすい。小林が田原に徹底的にのされてます。


 ……記者さん、なぜか敵は「小林よしのりファン」と認識した様子。そして、再びオススメ文献攻撃です(しかも本のセレクトがナンセンス)。
 この記事はコメントが許可されていたので、さっそく反論が寄せられます

 >残念ながら、小林氏はもうネットでそれほど支持されていません
 >ネタが古すぎ。あんた本当に新聞記者?
 >物凄いズレップリですね

 それからまもなく、ページの中身がすべて削除されました

 そんなこんなで、記者ブログが燃え上がる事件が多いですが、今回の件は、その定番ルートを1週間ちょっとで駆け抜けたコンパクトなケースという感じでした。

 ……「ブログっておもしろい!」ですね。

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