平成14年10月21日 | 「ホーリーランド」重刷&巻頭カラー |
「ヤングアニマル」をご存知でしょうか。 最近アニメ化された「藍より青し」や「ふたりエッチ」で大衆人気を確保しつつ、「覚悟のススメ」の山口先生による漢漫画など佳作・良作も載っており、現行の青年誌の中では見所が多いのですがTVコマーシャルのセンスはどうかなぁと思う雑誌です。 そんな「ヤングアニマル」連載陣の中で、個人的に注目しているのが、森恒二先生の「ホーリーランド」という漫画です。 いじめられっ子で引きこもりの少年が、自室で現実逃避に何十万回もパンチの素振りをしているうちに本当に強くなってしまい、夜の街でヤンキーを狩るという物語。 要するに、ヒッキーが主役のストリートファイト漫画ですが、特筆すべきは、格闘場面の間に挿入される解説の森先生独特の語り口です。 (1)自問自答の多用 普通:TVやマンガでよく見られるボクシングのガードのような状態は、路上では有効ではない。森先生:TVやマンガでよく見られるこのボクシングのガードのような状態――果して路上では有効なのか? 否!!! (2)恥ずかしい言葉選び 普通:伊沢マサキは、路上用にアレンジしたボクシングの技術を持つ。森先生:ボクシングを路上(ストリート)用に特化(カスタマイズ)した究極の技術を持つ男――それが路上のカリスマ・伊沢マサキなのだ!! (3)作者の実体験を挿入 普通:よく護身術の本などで目にする「刃物の奪い方」は危険だ。森先生:よく護身術の本などで、時々刃物の奪い方を目にするが、あれはどうだろうか? 僕(作者)自身が不器用なのもあると思うが、刃物を奪おうとして手にケガを負った事がある。 (4)話の飛躍 普通:人は許容以上の精神的負荷を負うと、それを逃がす為に逃避的行動をとる。森先生:人は許容以上の精神的負荷を負うと、それを逃がす為に逃避的行動をとる。僕(作者)にも十代の不安定な時期、そういう経験がある。規則的に並んでいるモノや音など無意識に数えてしまうというものだ。ひどい時には新宿の地下道のタイルを端から端まで数えたりもした。確か4000以上あったはずである。 ……作者自身が新宿地下道のタイルを数えた話を何の脈絡もなく聞かされる漫画を、ちゆは他に知りません。 なお、森先生が語る格闘理論の信憑性については漫画だと思っておいた方が無難です。 作中でも、「この漫画はボクシングの教本ではないので厳密にフォームを解説はしていません。もっとくわしく知りたい方はジムへ行こう!」と読者に配慮されていました。 ところで、「ホーリーランド」では、1人で多人数を相手にするときは、弱い奴から確実に倒すべきだと解説されています。 格闘漫画の巨星「プロレス スーパースター列伝」では、ブッチャーに地獄突きを伝授したシンガポールの空手家が「一番強い奴から倒せ」と教えていましたが、どちらが正しいのでしょうか。 そんなこんなで、累計1300万部突破の「ふたりエッチ」と比べると、非常に謙虚な発行部数の「ホーリーランド」。 本屋さんで見かけることも滅多になかったのですが、最近、ちょっと多めに増刷されたみたいです。これを機会に、一度読んでみてはどうでしょうか。 ネットアイドルちゆは森恒二先生を応援しています。 |