平成13年5月12日 | ラブひな以上!?大反響のチャンピオン新連載 | |||
「覚悟のススメ」「鉄鍋のジャン!」「グラップラー刃牙」…。そんな雄度の高い、激濃の漫画群が少年チャンピオンの魅力でした。 しかし、それだけでは雑誌は売れません。世間から遅れること10年余、ついに秋田書店もメディアミックスなるものの存在を知り、そして気がつきました。 時代は萌えだ。 そうして始まったプロジェクト・萌え。すでに「しゅーまっは」や「ななか6/17」といった萌え作品の連載が始まっています。 そして何を血迷ったのかブロッコリーと提携、巻末読者ページにでじこを起用しました。この件は3月30日、4月6日にお伝えしました通りです。 さて。 そんな少年チャンピオンが先週から、さらなる萌え層の取り込みを狙って、脅威の新連載をスタートさせました。 その名は、「エイケン」。 タイトルを考えた人は、チャンピオンにはすでに「フジケン」という漫画が連載していることを忘れていたのでしょうか。 しかし、そんな「エイケン」が今、局所的に大ブレイクしています。 まだ連載は始まったばかり。第1話と第2話しか発表されていないにも関わらず、2ちゃんねるのエイケンスレッドに鬼のようなレスがついていくのです。 ジャンプならばともかく、チャンピオンの新連載としては異例のことです。 スレ1:88cmFカップ鷲掴み!『エイケン』 スレ2:111cm!?チチは小学6年生『エイケン』2階目 では、この超話題作が、実際に2chでどのような評価を受けているのか見ていきたいと思います。 >エイケン読んだら小ゲロ出たよ >読もうと思っても眼が拒絶する >服と髪型のセンスが知的障害者と狂人を足したような宇宙人テイスト >最終兵器だな …とにかく大反響です。 ここで、エイケンの内容を簡単にご紹介します。 基本プロットは、何の個性も魅力もないダメ男が自分以外全員美少女の「エイケン部」に入れさせられ、コケた拍子に乳を揉んだり、うっかり着替え中のところに入ってしまったりするラブコメ。 では、肝心の女性陣の品揃えは。 巨乳のヒロイン(88のF)。長身の体育会系女(99のG)。チャイナ系お嬢様。見た目は幼女の天才科学者。中身は恥ずかしがり屋の美少女だと思われるクマの着ぐるみ。 …そして、フリフリのエプロン姿の爆乳小学生(111のH)。
…萌えますか? 作者は代々木アニメーション学院のマンガ・コミックプロ養成科の卒業生。第1話のスミッコに、「松山せいじ先生より♪」という熱いコメントが掲載されています。
アンタ、漢ですよ…。 ともあれ、異様な盛り上がりを見せるエイケンスレッド。 ついにエイケンウッチャーたちは、自らをエイケニストと呼称。憎しみを通りこして愛着を感じる人たちまで登場します。 >この板よんでたら、ずっと昔からエイケンを読み親しんでいるような錯覚が襲ってきた >もはや嫌っていた自分が過去の愚物 >アンチすら仲間にしてしまったこのスレは、永く語り継がれていくことだろう。エイケニスト、永遠なれ もちろん、こうして最終解脱を遂げたエイケニストたちについて行けない人も続出。 >ここのスレの住人はみんなヒロポンでもやってんのか!? >俺には駄目だ…もうこの漫画にはついていけない こんなにも語られ、憎まれ、奇妙な愛着さえ覚えさせるエイケン。 チャンピオンに新しい萌えの風を吹かせる救世主となるのでしょうか、単なる駄作として時の流れの中に忘れ去られていくのでしょうか。 果てしない迷走を始めたチャンピオンの、明日はどっちだ!? |
おおまかな内容 | ||
「エイケン」の松山先生は3年前、少年ガンガンに「裏剣道ZERO」という漫画を連載していました。 「裏剣道ZERO」は単行本も出ていませんが、少年ガンガン平成10年No.03から同年12月号まで連載されていました、全12話の作品です。 「No.○」と「○月号」が混在しているのは、いったん月刊誌から隔週刊誌に切り替わった少年ガンガンが、なぜか瞬速で月刊誌に戻った、その過渡期にあるからです。 そうした発刊ペースの揺らぎの他、パイレーツに密着取材してみたり、誌上アイドルオーディションを企画してみたり、当時のガンガン編集部は微妙に混迷していたように思います。 そんな時期にひょっこり連載を勝ち取った漫画、それが「裏剣道ZERO」です。 物語は、ヒロインの霧恵さんと幼なじみの零(ぜろ)くんとの、久しぶりの再会から始まります。 霧恵さんはいきなり入浴シーンで全裸を披露。零くんは零くんで再会早々、霧恵さんの乳を揉みしだきます。 しかし、そんな零くんは古来より伝わる対妖怪用の剣術、裏剣道の「王道」の使い手。悪事を企てる裏剣道の「邪道」の使い手たちを倒す使命があるのです。
…以上、学園ラブコメあり、お色気あり、バトルありの盛りだくさんにしようとして玉砕した、そんな感じの漫画です。 |
「エイケン」との絵の違い | ||||
確かに面影はありますが、本当に同一人物の絵なのか疑わしいほど描き方が変わっています。絵の種類が違うので、「どちらが上手い」とも言いがたいです。 目につく違いは、トーンの使い方でしょうか。 「エイケン」はトーンをベタベタ貼りたくって、デッサンの狂いを誤魔化していると言われています。 しかし「裏剣道ZERO」はあまりトーンに頼らず、むしろパソコンを覚える前の鳥山明のように、気合いで質感をペンのみで表現しようとしています。 なお、「エイケン」は徹底的な書き込みで、デッサンの狂いを誤魔化しているとも言われますが、その執拗な書き込みは「裏剣道ZERO」時代から変わっていません。 |
変わらない、巨乳愛 | |||
「エイケン」と言えば、乳揉みです。
この巨乳モミモミ精神は変わらぬこだわりとして、「裏剣道ZERO」から「エイケン」へと受け継がれています。 「裏剣道ZERO」の零くん、女と見れば無節操に揉みまくります。
なお、「裏剣道ZERO」の霧恵さんの乳はCカップ。 FとかGとかHとか言ってる「エイケン」に比べると控えめですが、やはり失業率の増加に伴って巨乳率も増加しているということでしょうか。 また、揉む際の擬音が「コネコネ」から「タップンタップン」「プルルンプルルン」に変化しています。 3年の間に、「コネコネは古い。時代はタップンプルルンだ」と思い直されたのかも知れません。…いや、3年前でも「コネコネ」はどうかと思いますけど。 |
女性キャラの品揃え | |||
ニュース本編でご紹介しました通り、「エイケン」は5〜6人の美女に囲まれた、いわゆるダメ人間ハーレム系ラブコメです。 一方、「裏剣道ZERO」はバトル漫画。どうしても汗臭い野郎がコマを占める割合が多くなります。 ですが、そこは松山先生。女性陣も各種取り揃えておられます。 まず、ヒロインの霧恵さん。それから、担任の女教師(先ほど乳を揉まれていた人)。そして、霧恵さんの二人の姉。 そう。「男の主人公が居候する家には三姉妹がいる」という日本の伝統を忠実に守っておられるのです。
そんなわけで、女王様タイプと、フリフリ衣装の童顔眼鏡っ娘。後者はエイケンの111cm小学生に連なる系譜だと思われます。 なお、エイケンでしばしば指摘される「女みんなデブ」現象は当時から健在。 で、コイツらも戦います。
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敵の首領:カイザー増瀬(ソゼ) | |||
敵の首領の名は、カイザー増瀬(ソゼ)。 最も作者の深い思い入れが深いと感じさせるキャラクターです。 元々は単なるいじめられっこだった彼。3ヶ月ほど登校拒否している間に、裏剣道の「邪道」の力を身につけます。
そして、直接いじめた者、見て見ぬフリをしてきた奴らにいじめっこの逆襲を開始。…問答無用で大量虐殺します。 曰く。「泣き叫びながら剣の生贄になるがいい!!!友の苦しむ姿を見るがいい。もはや見て見ぬふりはできない… 今までのようにこの私を…ムシすることはできない!!!ははははははははははッ 人がゴミのようだ!!」 これ、作者様の心の叫びじゃないですよね。 |
おわりに | |||
そしてクライマックスでこんなツラになった零くんが、真の敵である零くんの兄貴(両性具有)を倒し、この漫画は終わります。 最終回の最後のコマのすみっこには小さく、手書きのメッセージが書かれています。
巻末の著者近況に「さーて、ドラクエにゼルダ、トゥルーラブを遊び倒すとしますか。もちろんシレンもね(はぁと)」などと書かなければ、もっといい人でいられたのに。 ともあれ、これを書いているうちに「エイケン」に奇妙な愛着がわいてきました。これでちゆも、立派なエイケニストの仲間入りでしょうか。 ネットアイドルちゆは、エイケンをウォッチしています。 ≪平成17年2月14日・追記≫ 長い間単行本化されていなかった「裏剣道ZERO」ですが、「エイケン」のヒットによって、平成15年の8月に秋田書店から単行本が発売されました。 |