平成13年4月24日 | 荒木飛呂彦がタイ・カッブを描く |
ニコラ・テスラをご存知でしょうか。 発明王エジソンのライバルと言われた、ユーゴスラビア生まれの発明家です。 交流電力の原理の発明者ですから、現代の生活における電力の重要性を考えれば、ライト兄弟やフォン・ブラウン以上に人類に貢献した人物だとさえ言えます。 交流電力の研究の後は、無線による電力送信と情報伝達を核とした「世界システム」の実現を夢見るも挫折。 晩年は「無限エネルギー装置」「粒子破壊兵器」などの空想的な発明アイデアに取り組みました。 また、「膨張・収縮の周期に合わせて爆破すれば、まるでリンゴを割るように地球を真っ二つにできる」という、地球二分割破壊法も一部で有名です。 日本ではオカルト系の方々に好まれ、マッドサイエンティストの代名詞のように扱われるケースが多いです。 そういえばオウム真理教も、阪神大震災の時に「テスラが発明した地震兵器による攻撃だ」と言っていました。 テスラ関連の漫画としては、大塚英志&大野安之の「超鉄大帝テスラ」が熱狂的なファンを獲得していますが、次に挙げる作品も有名です。 「―変人偏屈列伝― NIKOLA TESLA」 原作・構成:荒木飛呂彦、作画:鬼窪浩久・藤井伸幸 荒木先生&鬼窪先生は、アシやってた関係です。 平成元年の「スーパージャンプ」6号に掲載された読切ですが、残念ながら単行本には未収録です。 嫉妬にかられたエジソンが、「球」恐怖症のテスラにビリヤードの球をグリグリ押し付けながら、「きさまはクビだ! テスラァァァーーー! もうおれの前に二度とそのツラ見せるんじゃあねーぜこの変態がッ!」となじる場面がやばすぎます。 子供たちの憧れの発明王に、こんなドス黒い一面が。 実際、直流電力を推進するエジソンは、テスラの交流電力を潰すためにあんなことやこんなことをしましたが、そんな黒いエピソードはよい子の伝記には間違っても出てきませんし。 もしかして、コレのせいで単行本化できないとか。 さて。 いつものように前置きが長くなってしまいましたが、この変人偏屈列伝の第二弾が、なんと12年ぶりに発表されます。もちろん原作は荒木飛呂彦先生、作画は鬼窪浩久先生です。 5月2日発売の「オールマン」No.10から、2号連続で掲載されます。 その名も、「変人偏屈列伝エピソード2 タイ・カッブ」。 生涯通算打率3割6分7厘、4191安打。メジャーリーグで数え切れない大記録を打ち立て、球聖と呼ばれた男。 あのベーブ・ルースを上回るファンの投票を得て、大リーグ史上最初の殿堂入りの栄誉を獲得した男。 自他共に認める史上最高の打者、それがタイ・カッブです。 しかし、彼は差別者です。 遠征先のホテルで黒人のドアマンを刺しました。罵声を飛ばされた片腕の身体障害者に殴りかかったこともあります。鼻が黒人のように丸かったベーブ・ルースのことをネグロと呼びました。 日本に来たとき、自分の持ち物がホテルからなくなったため、「日本人ほど野蛮な人種はいない」とあちこちで言いふらしました。 また、一番になることへの執念は異常なほどで、試合後のシャワーも、自分が一番に浴びなければ気がすまなかったといいます。 まさに天才と狂気。 この奇人を、日本が誇る変態漫画家(褒め言葉)・荒木飛呂彦先生がどう料理するのか。 ニコラ・テスラと同様、なかなか単行本に収録されないと思われます。この機会に雑誌でチェックしなければ、必ず後悔するでしょう。 ≪平成17年2月14日・追記≫ 「変人偏屈列伝」は、平成16年の3月にめでたく単行本化され、ニコラ・テスラやタイ・カッブのエピソードも収録されました。 |