※微グロ注意
の日記
3月24日(月) 晴れ

子どもの頃、脳は頭蓋の中で回転していると思っておりました。
「頭の回転が早い」とか「鈍い」という言葉を、そのままに受け取ったのでしょう。
しかし、白い骨に囲まれた真っ暗な空洞の中を、ピンク色のグロテスクな塊が
ゆるゆる、ゆるゆると回転するイメエジは、不思議と快く感じられたのです。


3月25日(火) 晴れ

本当は脳は止まっており、回転しているのは、私たちの立っている地面なのだそうです。
この地面が回っているなど、まるでおとぎの国の話のようです。
しかし、脳がゆるやかに回転する様子は、まぶたを閉じるだけでありありと想像されます。
今日も旦那様が帰ってこなかったので、そんなことばかり考えていました。


3月26日(水) 晴れ

むかし、何かの本で、内側を鏡張りにした大きな玉の中に入った男が発狂する話を読みました。
スプーンに映した自分の顔でさえ、まるでアメーバが伸縮するように、ぐにゃりと歪んで奇妙な像をかたちづくります。
もしも球状の鏡の中に入れば、その歪みが四方八方ありとあらゆる角度から無限に襲いかかってくるのでしょうか。
全方位に果てしなく伸び広がる自分の像。それは恐ろしい地獄絵図となって迫り、中の者を狂わせるのでしょうか。
しかし、私には、まあるく無限に広がっていく鏡面に映し出されるのは、回転する自分の脳の姿ではないかと思えてならないのです。


3月27日(木)  曇り

ヤフーオークションで球状の鏡を探しましたが、売っておりませんでした。


3月28日(金) 曇り

くるり。くるり。私の脳が回る音が聞こえます。
旦那様の脳は、ぎたり。ぎたり。油を差していない自転車のような音がします。
なぜなのでしょう。
今日も旦那様は、あの女と遊んでいました。


3月29日(土) 曇り

のたのたとゼンマイの切れかかった玩具のように、旦那様の脳の回転は不格好です。
すこし動いて、止まって。ぎぎぎと軽く唸ったあと、ぎたりと半回転。すぐに力尽きて、ふいと動かなくなります。そしてまた思い出したように、ぎぎぎ、ぎたり、ふい。ぎぎぎ、ぎたり、ふい。
旦那様の音、ぎぎぎぎたりふぃ。
不快な音。


3月30日(日) 天気などどうでもよいのです

aaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa
aaaaaaaaaaaa


3月31日(月) 雨

頭蓋を割ってみました。
脳の色は想像していた通り、少年のほっぺたのような、うっすらと赤い桜色でした。


4月1日(火) 曇り

旦那様の脳髄の軸には、サビが湧いていたのでした。
サビは知らぬ間にウジウジ、ウジウジと繁殖しているものなのです。
きれいに掃除してから、回転を滑らかにするため、慣らし運転もしなければなりません。
ミニ四ファイターの話では、弱った電池でトロトロと回すのが良いそうです。
旦那様の電池は、単三でしょうか、単四でしょうか。
不思議なことに電池ボックスが見つかりませんが、要は、回転させれば良いのでしょう。
慣らし運転ですから、設定は低速にしておきます。
取り出した旦那様の脳を入れて、蓋を被せてから、電源を入れました。
ぎゅる、ぎゅる……。
絵の具をたっぷりとつけた絵筆に、ぴゅうと息を吹きかけた時のように、ピンク色が飛び散って、ガラスの内側を鮮やかに染め上げました。
それは旦那様の脳の色です。
ぎゅるぎゅるぎゅるぎゅるぎゅるぎゅるぎゅるぎゅるぎゅるぎゅるぎゅるぎゅるぎゅるぎゅるぎゅるぎゅるぎゅるぎゅるぎゅるぎゅるぎゅるぎゅるぎゅるぎゅるぎゅるぎゅる。
桃色の肉が、あちらに、こちらに、くるくると走ります。
もとの形が分からないほどの回転。美しい色。心地よい音。
これなら、もう大丈夫でしょう。
これから、私たちの幸せな生活が始まるのです。






















-バーチャルネットヤンデレ若奥様・ちゆ19歳- 完






いつものちゆ12歳