昔のちゆニュース
◇平成15年◇
02月17日:ビートネオンが龍騎のキャラソンを配信 06月22日:教科書検定で黒人さんの唇にダメ出し 07月19日:ソーサがコルクバットを使用 08月17日:安倍麻美はオタク向けアイドル? 09月15日:少年チャンピオンとブロッコリーがカードゲーム 09月22日:ファミコン20年 10月01日:「ガンダムSEED」最終回 10月12日:カレー将軍・鼻田香作 10月19日:エッグマンの挑戦 11月28日:井狩春男さんと「光に向かって」 |
平成15年2月17日 | ビートネオンが龍騎のキャラソンを配信 |
カラオケに行くと、「この曲が配信されてるなんてスゴイ!」「この曲が入ってるのに、あの曲はダメなんて…」といったことが、よくあります。 たとえば、“セガカラ”に配信されている「ミスター味っ子」の曲。オープニング主題歌の「ルネッサンス情熱」が入っていないのに、マイナーなイメージソング「味皇料理会会歌」はあります。 「遠くフランスにいる下仲よ…。聞こえるか、この我々の心の歌声が。『くちへん』に『未だ』と書いて味と読む。重ね求めよ、料理の工夫。 腕だ! 心だ! (中略) 精進せいよ!」という間奏の台詞までバッチリ歌詞表示されて親切です。 また、最近では、仮面ライダー関係の主題歌でなぜか唯一どこからも無視されていた「仮面ライダーZX」の「ドラゴン・ロード」が“HyperJoy”に配信されたのが良かったです。 そんな感じで、アニメや特撮の曲なんて、イメージソングはおろか、主題歌でさえなかなか配信されないのが普通です。 ところが先日、“ビートネオン”が「仮面ライダー龍騎」のキャラクターソングを2曲も入れてくれました。配信されたのは、仮面ライダーナイトの歌と、仮面ライダー王蛇の歌。 嬉しいことですが、ちゆとしては、仮面ライダーゾルダの歌が配信されなかったのが残念です。 仮面ライダーゾルダは、「龍騎」に登場した4人目のライダー。変身するのは金持ちでハンサムでナルシストなスーパー弁護士です。キャノンやランチャーなど、強力な飛び道具をたくさん持ち、剣やムチで戦っている敵を遠くからバシバシ砲撃して倒します。 必殺技は「エンドオブワールド」。全火力による一斉砲火で、全身にダイナマイトを巻いた老人の集団がガソリンスタンドに突っ込んだような規模の大爆発を起こします。他のライダーの必殺技は単なるキン肉ドライバーだったりするので、かなり凶悪です。 そして、何よりちゆが魅力を感じるのは、そのゾルダを演じる役者・涼平さんのキャラクターです。 身長188cm。本業はモデル。NTT DOCOMOなどのCMにも出演した彼ですが、公式ホームページのプロフィール欄には、「好きなアニメ:ガンダム・バイファム・エルガイム・ザブングル・ボトムズ」と明記されています。 また、涼平さんはガンダムのゼータプラス(単なるゼータではなく、ゼータプラス)に並々ならぬ執着をお持ちで、ことあるごとに「ゼータプラスが好きだ」「ゼータプラスが好きだ」と発言しておられます。 特にスゴかったのは、「電撃ホビーマガジン」に掲載されたトーク。 同じコーナーで、他のライダーを演じる役者さんは撮影秘話などを話しているのに、涼平さんは自ら改造したプラモデルを持ち込んで解説を始めてしまいます。 「このハロは基本的にティターンズのカラーなんですよ」 「改造のポイントは手ですね」 「グリップできるようにMGジムクェルの手首に替えてあるんです」 「糸鋸で一部分切断して、ヤスリで削ってクラフト用ドリルで穴を」 「画期的でしょ? これはぜひバンダイさんで商品化して欲しい」 写真集のプロフィールでは「自他共に認めるおもちゃフリーク」という言葉遊びで誤魔化していましたが、こいつは真性です。 ちなみに全然関係ありませんが、かつて仮面ライダーブラックを演じた役者さんは特撮オタク過ぎて他の出演者から避けられており、「いっしょに撮るのがイヤ」という理由で、新しく撮影する予定の場面を以前のフィルムの使い回しで済まされたという伝説があります。 さて、そんな涼平さんが熱唱しておられるのが、仮面ライダーゾルダのイメージソング「消えない虹」。 「あかね色の」という歌い出しで、いきなり「あっかっねっ色っのっ♪」と素敵に軽快なスタッカートを炸裂させるなど、さすが涼平と唸らせる見事な仕上がりです。レコーディングに7時間かけたというだけのことはあります。 その独特の高音・リズム感・音楽センスに、繰り返し聞いているとイントロだけで笑ってしまうようになります。 トークライブにて、涼平さんご自身が「1日3回以上聞かないでください、脳がおかしくなるので」と仰られたそうですが、まったくその通りです。 ネットアイドルちゆは「消えない虹」のカラオケ配信を応援しています。 |
平成15年6月22日 | 教科書検定で黒人さんの唇にダメ出し | |||||||||||
最近あまり更新してなくて、申し訳ありません。 更新頻度でウロンちゃんに負けてるのはさすがにどうかと思いますので、今後はもう少し頑張ります。 そんなわけで、今日は2ヶ月以上前のニュースでごめんなさい。 先日、英語の教科書の検定で、文部科学省が「黒人さんの唇の厚さを誇張して描くのは読者の誤解を招く」と意見。それを受けて、出版社が挿し絵を修正しました。
黒人さんを描く時は男ならマイケル・ジャクソン、女ならナオミ・キャンベルにしなければならないという例のアレですね(整形後のマイケルは白人ですけど)。 少し敏感すぎるような気もしますが、面倒を避けるには早めの自主規制が一番。オトナの対応ですね。 ところで、この辺の問題意識が薄かった時代の漫画を読むと、今では不可能な民族デフォルメが満載です。 たとえば、「鉄腕アトム」に出てくる黒人さんはこんな感じ。 「ブードゥー」「ブードゥー」言いながら襲ってくるのは、さすが手塚治虫先生です。 現在では、「オバケのQ太郎」の自主回収や「あんみつ姫」の出版停止など、このような漫画の多くが、主に「黒人差別をなくす会」(親子3人でやってる市民団体)の活躍で発禁になっています。 ところが、ごく最近の漫画でも、意外と編集者の根性試しみたいな描写はあります。たとえば、平松伸二先生の「マーダーライセンス牙&ブラックエンジェルズ」を読むと……。
この世界では、アメリカ黒人は脳みそカラッポの筋肉バカなのが当たり前。微生物や昆虫が光に寄って移動するように、このゴリラは女性を見るとレイプに行くエロ生物です。 さりげなく「白人女め〜!」とか口走ってるのがヤバイですね。 これに対して、主人公側の日本人(モデルは松田優作)は激怒。「おめえを見てるとよお アメリカって国その物に思えてくるぜ!」「アメリカもおめえと同じ…見境なく女を犯すレイプ野郎だって言ってんだよオオオ〜〜!!」と、怒りの鉄拳! なんだかすごいパンチで、黒人さんの右腕がコナゴナのミンチになりました。 平松先生のアメリカ嫌いがビンビン伝わってくる場面ですが、先生ほどの巨匠になれば、危険発言もフリーパス、物理法則もノーサンキューなのですね。 ところで、漫画の中で国辱されるのは、黒人さんだけではありません。 定番は「キン肉マン」のラーメンマン。弁髪、ドジョウヒゲ、額の「中」の文字、倒した敵をラーメンにして食べる(アニメ版)など、数々の特徴が 同じように、言い出したらキリがないのが「キャプテン翼」。各国代表チームに大体1人か2人は間違った人がいて、たとえばスウェーデンユースの監督は眼帯にバンダナの海賊ルックです。
ウズベキスタンなど、人口の8割がトルコ系のウズベク人で実際の代表チームはこんな感じですが、「キャプテン翼」では金髪の白人しかいませんでした。 確かに、ウズベキスタンなんて「UFO少年アブドラジャン」を作った国という程度の認識しかありませんけど。 あと、こういう話題で出てきそうなのは、世紀末をいいことに自称・救世主が殺戮を繰り広げまくるよい子の漫画「北斗の拳」。 しかし、アミバ様とかユダ様とかハート様とか極めつけの変態がゴロゴロいるわりに、どいつもこいつも哺乳類ヒト科からはみ出している感じで、すでに国籍がどうとかの問題ではなく(アイン除く)、武論尊先生何にも考えてなさげなのに全然オッケーです。 |
平成15年7月19日 | ソーサがコルクバットを使用 | ||
去年の今ごろのちゆニュースで、近所の商店街で見かけた七夕の短冊を紹介させて頂きました。「ぼくは天さいになりたいです」「ぜい金がなくなりますように」などなど。 ところが今年は、天下の朝日新聞が老人ホームの短冊を紹介してくれました。 10歳の男の子が「お年玉が6万円になりますように」と願うのは微笑ましいですが、72歳女性が「宝くじで1億円当たって世界一周」と願うのは痛々しいです。他の短冊も同様で……。 ●「白い雲に乗って、遠くへ行きたい」(89歳男性) ●「赤坂に帰りたい」(82歳女性) ●「さしみ、酒」(75歳女性/病気でお酒が飲めなくなった方) ●「もう一度、19歳に戻りたい」(73歳男性) わざわざ「社会的、経済的に恵まれないお年寄り」が暮らす施設を取材したとのことで、なんともエグい記事でした。 記者は「願い事の一つひとつに、それぞれの歩んできた人生と世相が透けて見える」とまとめてますが、そんなのでいいんですか。 ……と、10日以上過ぎた七夕の話題を前置きに、今日の本題は1ヶ月半ほど前のニュース。メジャーリーガーのソーサ選手が、禁止されているコルクを仕込んだバットを使った事件です。 本人は、「ファンが見ている打撃練習の時、ボールがよく飛ぶと喜ばれるからコルクバットを使っていた。それをうっかり試合で使ってしまった」と釈明します。 ソーサさんと言えば、大リーグの試合の始球式を故・小渕総理が務めた際、キャッチャーとして総理の球を受けた選手。その縁で、総理が亡くなる半年前に首相官邸を訪問したりしてます。 彼と同じ背番号のユニフォームをプレゼントされて大はしゃぎする総理大臣の姿は印象的でした(平成11年5月3日毎日新聞)。 そのソーサ選手、結局「わざとじゃなかった」ということで、軽い処分で済みました。 でも、世論調査では米国人の半分以上はソーサの言い分を信じてないそうです。日本でも、深夜のスポーツ番組「うるぐす」のアンケートで、3人に2人が「故意だったと思う」と回答してます。 余談ですが、「うるぐす」と言えば、最近は元ジャイアンツの江川投手が野球より競馬の予想に夢中。それも「第44回だから4という数字にちなんだ馬があやしい」など、オカルトが入っています。 以前、趣味のワインの本を出して「トンデモ本の世界」シリーズで紹介された前科のある江川さん。彼の勘違いを止める人間は周囲にいなさそうなので、そのうち素敵な競馬必勝本を出してくれそうです(番組の本よりハジけたやつを)。 ともあれ、ソーサ選手の主張は表向き認められたハズなのですが、先月27日に放送された「プロ野球好珍プレー」でも、「なんとも苦しい言い訳」と言い切られたりしています。 ところで、その「好珍プレー」で、横浜ベイスターズの期間限定マスコットキャラクター・ブラックホッシーが紹介されていました。 元々、ベイスターズのマスコットは、ホッシーという頭が異様にデカく、イヤらしい目つきで気味の悪い生き物(カープパビリオンさんの12球団マスコット研究室の解説が詳しいです)。 ブラックホッシーはその亜種で、色々な意味で黒いヤツ。そのパフォーマンスはバク転やフェンス登りに始まり、巨人ファンの子供を追い回したり、相手チームの客席に向かって煙を吹きつけたり、巨人の練習の邪魔をして高橋由伸に蹴られたりと多彩です。
その飽きさせない動きは、阪神タイガースのマスコット・トラッキーに似ています。 トラッキーは、10連続バク転・足だけでフェンスから逆さブラ下がりといった技や、選手と絡むパフォーマンスが得意。 敵チームの選手にジャイアントスイングをかけられたり、ホームランを打った味方チームの選手に喜びのラリアートを決められたり……。阪神がサヨナラ勝ちでもすれば、トラッキーは真っ先にグラウンドに飛び出し、歓喜の輪の中でボコボコにされます。 そんな癒し系のトラッキーですが、「暴力を連想させる」「抗議電話も多い」とかで、タイガース営業部はラリアート禁止令を発令。今年4月には、7年間トラッキーの中に入っていた人を交代させてしまいました。 それ以来、トラッキーの動きがイマイチになり、以前の人の復帰を願うファンが署名運動が行ったりしています(「私達のトラッキーを返して!」)。 その交代前のトラッキーと、動きがよく似ているブラックホッシー(今年6月に登場)。 「好珍プレー」の番組内でも、「トラッキーの命とも言えるマスコット魂をホッシーゾへ注入」したと説明されており、諸般の事情でハッキリと言えないながら「中の人」を「魂」と表現したのかと思われます。 ところで、阪神タイガース公式ホームページの掲示板に、昨日の試合からトラッキーの動きに以前のキレが戻っているという書き込みがありました。 それに対して、「トラッキーの現在の中身と知り合い」だという人が登場。以前とは別の人だけど、先代に似せて頑張っているのだと説明します。真相は分かりませんが、今の人が努力してくださっているのなら、それはそれで応援したいです。 でも、18年ぶりにタイガースの優勝が見えた今年。できれば、暗黒時代の7年間、楽しいパフォーマンスでファンの心を癒してくれたあのトラッキーに、甲子園で選手と一緒に優勝の喜びを味わって欲しいと願います。 |
平成15年8月17日 | 安倍麻美はオタク向けアイドル? |
今年3月、「モーニング娘。」の安倍なつみさんの妹・安倍麻美さんがCDデビューしました。 姉と違う事務所からデビューし、「姉とは無関係に渋谷で偶然スカウトされた」と言い張る彼女。もしかしたら事実なのかも知れませんが、とても信じられません。 世間では、「なっちの妹というだけ」という声も多いです。でも、「生まれつき美形」や「生まれつき巨乳」が才能なら、「生まれつき人気アイドルの妹」だって一種の才能だと思います。 ところで、「妹」と言えば、オタク業界では人気の属性。「妹」であるという以外に何の特徴もないキャラクターは、アニメやエロゲーでもたくさん見ました。 ならば安倍麻美さんは、アニオタに支持される妹アイドルになれるでしょうか? まず、彼女は18歳。妹にしては年増過ぎるかも知れません。もちろん、エロゲーではどんな幼女でも設定18歳以上(おるすばんやちびっこ選挙)ですが、それを除けば、昨今は妹の低年齢化が進んでいます。 でも、アニオタ的最重要妹の1人である「同級生2」の唯ちゃんも18歳でしたし、ギリギリセーフでしょう。 さて、安倍麻美さんのダンスは、姉や「モーニング娘。」の人たちと比べても、非常に素朴な動きです。「デ・ジ・キャラットにょ」のエンディングの小学生5人組の方がよほど動いてます。 足はあまり動かさず、手を伸ばしたり、ひっこめたり……。80年代にはこんなのもいたっけ? という感じで、どことなく「アイドル伝説えり子」を彷彿とさせないこともないです。処理能力の低いポリゴンのようにも見え、それはそれでオタク向けなのかも知れません。 ファーストシングルの歌詞は、「生きてく理由だとか、死んじゃいけない理由、どっちも納得いく答えは教えてもらえないし」で始まり、最後は「あなたは生きているだけで、もう十分自分らしく生きている、特別な事を何かする必要なんて初めからないよ」と、突然自己完結。最初は歌い手が悩んでいたハズなのに、いつのまにか聞き手がアドバイスされちゃってます。 自分の存在理由とか勝手に悩み出して、脳内自分探しの旅に出た挙句に「僕はここにいてもいいんだ」「おめでとう」「おめでとう」で終わる展開は、「新世紀エヴァンゲリオン」の最終回に通じると思います。 そして、歌唱力も 曲はスローテンポで同じような繰り返しが多く、子供が歌いやすいように配慮したアニメソングみたいです(この場合は歌手のための配慮でしょうが)。それでも、TBS「U−CDTV」で飯島愛さんといっしょにカラオケに行った際、「自分の歌なのに字幕見ないと歌えないの?」とツッコまれていましたが。 一方、セカンドシングルで気になるのは、曲中に突然現れる謎の奇声。不安定な金切り声で「あなたの涙をヌーグゥッテェーアゲッタィイー」とか言われても困ります。作曲者の意図に歌い手の技量が追いつかなかっただけだと思いますが、どうして誰も止めなかったのでしょうか。 この辺りも、怪音波のような歌声でファンを中毒にさせる人気エロゲー声優・長崎みなみさんと似た効果があるのかも知れません。 あと、先日発売された写真集では、ビキニの胸元は見せているのになぜかウエストはひた隠しにしており、アニオタ的には帽子とバンダナで厳重にハゲをガードしている最近の高橋名人が連想されます。 以上、まとめると、 ●妹キャラ ●ダンスが一昔前のポリゴンっぽい ●歌詞がエヴァンゲリオンっぽい ●歌声がエロゲーの主題歌っぽい ●写真集が高橋名人リスペクト ……という感じで、アニオタ向けアイドルだと言えないこともないような気もやっぱりしませんね。 大きな欠点は、せっかくの「妹」なのに、「お姉ちゃん」の「妹」だということ。やはり、妹の王道はお兄ちゃんっ娘です。 これがもしも伊集院光の妹で、「頭も良くてカッコいい」と兄を心から尊敬している美少女なら、もう少し違ったかも知れません(そう言えば、高校野球の地方予選で本名・伊集院光の選手がいて可哀想でした)。 また、アニオタは基本的にコギャルや非処女がキライ。そういった「遊んでる」感じの子は鬼畜エロゲーの陵辱対象に過ぎず、恋愛ギャルゲーの本命キャラは清純系です。 その点、安倍麻美さんは以前、「高校のクラスメートから流出した」という喫煙現場の写真を「ブブカ」に載せられており、少しイメージを下げています(「フライデー」ではなく「ブブカ」なのが彼女の微妙なところ)。 まあ、そもそもアニオタは二次元が好きだからアニオタなのですけど。 しかし、そのサブカルくささやイヤな具合いのマイナーさ加減で、安倍麻美さんはアニオタ寄りではあると思います。アニオタに寄っているということは、つまり世間からは遠ざかっているということですが。 ネットアイドルちゆは安倍麻美さんを応援しています。 |
平成15年9月15日 | 少年チャンピオンとブロッコリーがカードゲーム |
少年ジャンプに、「遊戯王」という漫画があります。初連載「天然色男児BURAY」を13週で打ち切られた高橋和希先生が、4年半の時を経てジャンプに帰ってきた2度目の連載です。 「遊戯王」の序盤は、いじめられっ子がオカルトアイテムで裏の人格に目覚め、闇のゲームで悪い奴を廃人にしていく展開。イメージ的には、「魔太郎がくる!」と「ブラック商会変奇郎」を足して2で割ってペプシコーラを混ぜたような感じでしょうか。 代表的な登場人物は、高校生にして社長の海馬サマ。ゲームに負けた復讐のために100億円かけて殺人テーマパークを建設したり、「海馬コーポレーションでは残酷な心を持つ者が有能な人材となるからね」と言って殺人鬼を雇用したり、ゲームに命をかけるあまり「オレはカードで死ぬなら本望だ」「貴様のカードでオレの首を掻き切れ!」などの珍台詞を発したりで、一部の偏ったファンに愛されています。 ともあれ、その漫画の中で登場したカードゲームを、コナミが商品化。高橋先生の平成11年の納税額が4億円を超えるほどの大ヒットになりました。絶大な人気を誇る少年誌・ジャンプと、手段を選ばずゲームを売る企業・コナミのコンビがハマったのです。 そこで、その二番煎じを狙って、絶大なキワモノ度を誇る少年誌・チャンピオンと、美少女キャラでアニオタから搾取する企業・ブロッコリーがタッグを結成。「カオシックルーン」という企画を始めました。 こちらも「遊戯王」と同じように、最初にチャンピオン誌上で漫画を連載し、認知度を上げてからカードゲームを発売する作戦。 ところが、その漫画の描き手にチャンピオン編集部が推薦したのは、なぜかエロ漫画家の山本賢治先生でした。 山本賢治先生と言えば、頭にアンテナを乗せた少女の出てくる不条理エロ漫画や、内臓の出てくるエロ漫画を描く人。 女の子が気持ちの悪い巨大ダコと普通にラブラブエッチしたり、巨大ガエルの群れが幼女を輪姦したり、薬で敏感にした少女の体にバラバラ死体を押し付けて感じさせてみたり、両手を切断してダルマファックしたり、万人受けしない(褒め言葉)シチュエーションも多いです。 当然、今回のカードバトル漫画でも山本先生は突っ走ります。主人公は、飛行機事故で一人だけ生き残った少年。人肉を食って生き延びたと周囲から白眼視されており、「うまかったか? 人間の肉は」「焼いて食ったのか? それとも刺身か? んん?」などと同級生になじられたりしてます。 そして、第1話から人死にまくりの内臓出まくり。カードの力でモンスターを操れるようになった眼鏡デブが「面白い面白いよコレッ アハッ アハハハハッ たまんねえェ!」と笑いながらチーマーを殺したと思いきや、次の瞬間には別のキチガイが操るモンスターに食い殺されます。 そんな感じで、基本的に敵は全員変態異常性格者。そのカードの使い道も、次のような感じです。 ●物体を自在にすり抜けられるモンスターを使って、風呂をのぞく ●何でも切断できるモンスターを使って、女の子の体中の毛を剃り落とす ●触れたものの摩擦をゼロにできるモンスターを使って、女の子が履いてるパンツの摩擦をゼロにして落っことす その後も、胴体から真っ二つになった男が「助けてくれぇ」と這い寄ってくる「スウィートホーム」な場面があるかと思えば、幼女体型の16歳がお兄ちゃんの言いつけで首輪&スクール水着姿になったり……。それでいて、山本先生ご本人はインタビューで「僕は、この作品を怪獣マンガと思って描いているんです」と主張。 何にしても、「遊戯王」ファンの少年たちを狙うには少々フリークス過ぎます。 ちなみに山本先生は、以前連載したエロ漫画で主要キャラをほぼ皆殺しにしてヒロインを植物人間にした際、あとがきで「あれじゃカワイソー? いいじゃん、あんだけメチャクチャやった女が最後にハッピーに渡米してシアワセにくらしましたなんて話死んでも描けません!」と発言。 正当防衛でも不可抗力でも、先生の漫画で人を殺したキャラは幸せになれない模様です。 当然、「カオシックルーン」も真っ黒な最終回が予想されますが、今のところ女性陣の直接の殺人描写は避けられています。運が良ければ主人公の男が植物人間になる程度で済むかも知れません。 しかし、別の漫画のあとがきで、「いや〜みんな死んじゃいましたねェ〜 最初のウチはお乱と影葉だけは生き残る予定だったのになぁ おかしいなぁ」と述べた山本先生。最初は生き残らせる予定でも、うっかり筆がノッて全員殺しちゃったりしそうです。 そんなこんなで、間違ってもヒットしないでしょうし、もうどこ狙ってるのか分からないチャンピオン&ブロッコリーの企画。 いくら漫画が面白くても、「カード欲しい」とも「ゲームしたい」ともまったく思いませんが、こんな単行本に「でじこもオススメ!!」という帯が付いているだけでとても素晴らしいです。 ネットアイドルちゆは山本賢治先生を応援しています。 |
平成15年9月22日 | ファミコン20年 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
今年でファミコン生誕20周年ということで、ファミコン通信が「最も心に残ったファミコンソフトは?」というアンケートをしていました。 1位は「ドラクエIII」で、以降も「スパルタンX」「さんまの名探偵」「ゼビウス」「スペランカー」などなど、懐かしい名前が並びます。 そこで個人的に気になるのは、漫画やアニメを原作にしたキャラゲーの順位。「キャラゲーが10本あれば、9本はクソで1本は超クソ」などと言われますが、結果からキャラゲーだけ抜き出してみると……。
「キャプテン翼」や「カプセル戦記」など、数少ない良作は納得の順位。「ファミコンジャンプ」や「北斗の拳」も、確かに別の意味で心に残っています。 シリーズものでは、「ドラゴンボール」関連が6本もベスト100内入り。原作の七光りのスゴさが感じられますが、「ロードランナー」や「ワギャンランド」や「魔界村」より「ドラゴンボールZ外伝 サイヤ人絶滅計画」の方が多くの人の心に残っているという結果はどうなのでしょうか。 「ドラゴンボール 神龍の謎」 ドラゴンボールのゲームと言えば、一番記憶に残っているのは「神龍の謎」。ギャルのパンティーをはくとスピードアップし、ダメージを受けなくても勝手にお腹が減っていって餓死する悟空の姿が、忘れたくても消えてくれません。 これはヤムチャが最も輝いているゲームでもあり、原作ではほとんど活躍していない狼牙風風拳が、100ぐらいしかない悟空の体力を一度に30も削ります。 しかも、その当たり判定はおおらかで、当たってないように見えて当たっていたりする凶悪な技です。まあ、結局慣れればザコなんですけど。 また、このゲームには宇宙一の殺し屋・クリリアンなる敵が登場。 見た目は単なる化け物なのに名前がクリリンに似ていて、宇宙一の殺し屋のくせにヤムチャよりはるかに弱い……。当時のちびっ子には意味不明の存在でしたが、攻略本によると、実は鳥山明先生がゲームのために直々に描き下ろしたキャラだそうです。
イラストを見る限りでは、やはり4本腕で緑色の肌をした奇形クリリンのようです。鳥山明先生は何かクリリンに怨みでもあるのでしょうか。ちなみに、この攻略本でも「クリリアンは弱いぜっ!」「クリリアンはえらく弱いぜっ!」と何度も念を押されています。 問題は、人類の大半は6面より先に進めないだろう凶悪な難易度なのに、このせっかくのオリジナルキャラが11面に配置されている点。このゲームを遊んだ経験のある人でも、こんなヤツ見たことないという方がほとんどだと思います。 そんなこんなで、純粋にゲーム単体として見るとアレですが、発売されたのはタイガースが前に優勝した次の年という大昔。ファミコン初〜中期の思い出として、とても懐かしいソフトです。 「ドラゴンボールZ III 烈戦人造人間」 一方、ファミコン終焉期に発売された「ZIII」は、もう少しファンキーなゲームとして記憶しています。 フリーザとの戦いで死んだ(と思われていた)悟空を生き返らせるため、ドラゴンボール集めに出かけたピッコロたち。 地球のボール集めなんて亀仙人レベルの実力があれば十分ですが、なにしろ前作(「Z II」)を出してからあまり原作が進んでいません。オリジナルエピソードで水増ししないと、ゲームが1時間ぐらいで終わってしまうのです。 そんなわけで、ジェット機より早く空を飛び、核兵器以上の怪光線を放つ超戦士たちが、数々のおつかいミッションに挑まされます。 ドラゴンボールを飲み込んでしまった恐竜がいる ↓ 薬草を手に入れる ↓ 薬草を下剤と交換 ↓ 下剤を恐竜に飲ませる ↓ ナレーション「たいりょうの・・・といっしょに ドラゴンボールが でてきた!」 ヤムチャ「クリリン! ボールを とって きてくれ!」 クリリン「なんで オレが?!……」 ヤムチャ「おまえは ハナが ないから くさくないだろ?」 ナレーション「クリリンは しぶしぶボールを とりにいった… Zせんしは 5シンチュウを てにいれた! もちろん そのあと よくあらった!」 しかし、このゲームのキモは、何と言っても天津飯です。 天津飯と言えば、新気功砲の連射でセルを足止めし、「おのれ……!! たかが天津飯ごときにジャマをされたか……!!」と悔しがらせたほどの中途半端な実力者。 ちなみに、ただの気功砲と新気功砲の違いは悟空にすら分からないらしく、「新気功砲!!」と技を放つ天津飯に対し、悟空は「やめろ天津飯ーっ!! もう気功砲は使うなーっ!!」と叫んでいました。 原作では自分の実力を過大評価した言動が多い天津飯(例:「餃子はオレがおいてきた。ハッキリいってこの闘いにはついていけない」)ですが、このゲームでは、妙に身の程をわきまえています。 【天津飯語録1】岩山の入り口が塞がっていて入れない場合 天津飯「む!? オレの3つのめには わかるぞ。このガケは いわがうすく すぐ こわれそうだ! しかし オレたちの ちからでは このやまごと こわしてしまいそうだ!…… なにか てきどな ばくはつぶつが あると いいんだが…… たとえば ダイナマイトとか」 手加減できないんですか? その気になれば素手で大陸を消し飛ばせる男が、ちょっと岩を崩すだけでダイナマイトに頼るのは情けないです。 【天津飯語録2】行く手を一般人に邪魔された場合 悟飯「このひと ちきゅうじんなのに どうして ヤツらの もんばんなんか しているんでしょう?」 クリリン「なにか よわみでも にぎられているんだろう…… いずれにしても やっつけて ムリヤリ ここを とおるわけには いかないな」 天津飯「なにかで ヤツのちゅういを そらして あのばしょから どかすことが できればなあ…… よし! ここに ダイナマイトを しかけて おおきなおとを たてて もんばんを ひきつけるんだ!」 とにかくダイナマイトが大好きな天津飯。作戦も姑息です。一般人を傷つけずに進みたいなら、太陽拳でも使って超スピードで突破すれば十分なハズですが。 【天津飯語録3】誘拐されたブルマが捕まっている基地を発見した場合 天津飯「まて! さわぎをおこすのは まずい! ブルマが ころされるぞ! ほかのばしょから きづかれないように いこう」 そして天津飯たちが遠回りしてブルマを助けに行くと、一足早く正面から突っ込んでいたベジータがブルマを救出完了していました。これが縁でベジータとブルマの仲が進んだのだとすると、ヤムチャがフラれたのは天津飯のビビリが原因です。 ともあれ、そんなおつかいを終えると、ようやく原作に沿ったエピソードが始まります。 【原作の流れ】 悟空が心臓病で倒れる → ベジータたちが17号・18号に敗北 → ピッコロがセルと遭遇 → セルが17号・18号を吸収して完全体に → セルゲーム開始 → 16号死亡 → 悟飯がセルを倒す 【ゲームの流れ】 悟空が心臓病で倒れる → ベジータたちが17号・18号に勝利 → ベジータたちが16号にも勝利 → ピッコロがセルと遭遇 → ナレーション「セルは人造人間たちを吸収して完全体になってしまうのだろうか? はたしてZ戦士たちは、それを阻止することができるであろうか? おわり」 ……あまり原作に沿っていませんでした。 そして、うざったいスタッフロールやエンディングは一切ナシ。心臓病で倒れたままの悟空のセリフとともに画面が停止して動かなくなります。 これがキャラゲー黒歴史に燦然と輝く、伝説の「こんどは オラが やる!」です。もちろん、10年待った今でも「こんど」は訪れていません。 「ドラゴンボールZ外伝 サイヤ人絶滅計画」 「Z III」に続いて発売されたのは、人造人間編の続きでも何でもない「外伝」でした。 ちゆはこのゲーム開始早々、次の場面に出くわして驚いた記憶があります。
さて、どうせ売れるんだから原作無視で作っちまえという前作の流れを律儀に受け継いだ「外伝」。 開き直って完全オリジナルストーリーですが、ピラフ様がデンデのフリをして悟空たちをだますエピソードなど、原作へのリスペクトはあまり感じらません。
頭のターバンで触角がないのを誤魔化しているピラフ様ですが、そもそも体色が違います。いつもテカテカの緑色の肌の人がある日突然青色になっていたら一瞬でバレそうです。 それでも悟空たちを出し抜いて、ドラゴンボールを7つ集めたピラフ様。しかし、叶えた願いは世界征服ではなく、単なる壊れた別荘の修復でした。 そんな感じで微妙なゲームですが、いちおう「原作が好きなら楽しめる」レベル。 ファミコン版「タッチ」(タッちゃんとカッちゃんがボールを武器に戦う横スクロールアクションで、隠しパスワードは「みなみとHしてしまいました」)など、原作が好きなほどカセットを叩きつけたくなるクソゲーに比べれば全然OKです。 ネットアイドルちゆとしては、スーパーファミコンの「超武闘伝2」あたりが無難にオススメですけど。 |
平成15年10月1日 | 「ガンダムSEED」最終回 | ||||||||||||||||||||||||||||
ガンダムシリーズの最新作、「機動戦士ガンダムSEED」が最終回を迎えました。 「アニメージュ」の年に一度の人気投票では、2位の「あずまんが大王」の4倍近い票数で圧倒的な1位。日経新聞の記事にも「『第二次ガンダムブーム』ともいえる」ほどの盛り上がりだと書かれており、商業的にも成功したらしいです。 そんなわけで今日は、この番組を見ておられなかった方向けに、「ガンダムSEED」とはどんなアニメだったのか、ご紹介したいと思います。 毎週見てた方には今さらの内容ばかりで、申し訳ありません。また、ちゆの記憶だけで書いている部分もありますので、「〜について描写されてない」などは、単に見落としている可能性もあります。 なお、「宇宙空間を羽ばたいて飛行する鳥型ロボット」など、SF考証の問題については、言い出したらキリがないのでなるべく触れないことにします。 また、「ガンダムというタイトルでなければ別だけど、ガンダムとして見ると……」という見方も避けて、なるべく単体のアニメとして見たいと思います。 主人公・キラくん 第1話で、突然戦闘に巻き込まれた民間人のキラくん。なりゆきでガンダムに乗ることになると、いきなりガンダムのOSに文句をつけます。「無茶苦茶だ! こんなOSで、これだけの機体を動かそうだなんて!」 そして、キーボードを叩き始めると、わずか数分でガンダムのOS書き換え完了。ガンダムの性能がバツグンに良くなりました。 適切なたとえではないかも知れませんが、はじめてパソコンに触れる人が「このWindowsってヤツ、無茶苦茶だ!」と言って、その場でWindowsより高性能のソフトを開発してしまうような感じでしょうか。 超人的な能力ですが、実は彼は、受精卵の段階で遺伝子を操作することで人為的に作られた、生まれつきスポーツ万能で成績優秀なイケメン君なのです。 「SEED」の世界では、同じように遺伝子操作された人間がたくさんいて、その多くが宇宙コロニーに暮らしています。 ナチュラル:普通に生まれた人。主に地球に住む。 コーディネーター:遺伝子操作された優秀な人。主に宇宙コロニーに住む。 そして、このコーディネーターとナチュラルが、戦争をしています。 キラくんは中立の国に住む民間人でしたが、友達グループといっしょに戦闘に巻き込まれ、安全な地域まで、地球側の戦艦で移動することになりました。 当然、地球側の戦艦なので、コーディネーター軍が攻撃してきます。しかし、ガンダムを上手く操縦できるコーディネーターは戦艦でキラくんだけ。そこで、自分と友人の身を守るため、キラくんはガンダムで戦うことになります。 「一見〜ですが、実は……」 そんな感じで、どうにか安全に戦艦を降りられる場所まで移動したキラくんたち。ところが、キラくんの友達の1人・フレイさんは、戦艦を降りないと言い出します。 「これでもう安心でしょうか、これでもう平和でしょうか。そんなこと全然ない。世界は依然として、戦争のままなんです。私、自分は中立の国にいて、全然気付いていなかっただけなんです」「本当の平和が、本当の安心が、戦うことによってしか守れないのなら、私も……」 自分の国のため、危険を承知で戦いたいという彼女。「自分だけ安全な場所にいられれば良い」という人が多い中、なかなか見上げた言動です。 その発言に、友人たちも「フレイの言ったことは、俺も感じてたことだ」と同調。「それに、彼女だけ置いていくなんてできないしさ」と、同じく戦艦に残ることに決めました。 ところが、「ガンダムSEED 公式ガイドブック」に掲載された福田監督のインタビューによると……。
だったら、そこで感動的な音楽を流さないでください(サントラによると、この場面で流れていた曲の名前は「平和の祈り」)。 画面の上では肯定的に描かれていますし、そもそも「ここで戦艦を降りたら話が終わってしまう」「脇役の葛藤などに時間を割けない」という話の都合もあって、この辺りの展開は多少無理があってもお約束。そんな隠しメッセージを仕込まれても読み取れません。 また、その友人たちのキラくんへの思いについて、福田監督は次のように述べています。
……あれ、そんな描写でしたっけ? ちょっとビデオ再生。 艦に残る決意をした友人たちも、キラくんについては、「あいつは降りるよな、きっと」と考えています。 そして、脱出用のシャトルに乗り込むキラくんに、自分たちは残る旨だけ伝えて、笑顔で別れの挨拶。「これも運命だ、じゃあな」「生きてろよ!」と、こころよくキラ君を送り出すのでした。
理解があって、思いやりもあって、キラくんは本当にいい友人に恵まれてますね。……って、こいつら、顔にも口にも心の声にも出さないけど腹の中はドス黒いという「設定」なんですか?
最初から難癖をつける目的で見たりしなければ、この場面の描写から「友情の矛盾点」は読み取れないと思います。劇中で肯定的に描かれていた内容に、「一見〜ですが、実は……」と後から言われても。 そんなにうがった見方をしなければ制作者の意図が読み取れないのでしたら、作った本人以外には絶対分かりません。 とは言え、視聴者が制作者の意図通りに作品を受け取る必要はありませんし、制作者が作品の意図やテーマを視聴者に伝えたくないということなら、何の問題もないんですけど。 機動昼メロ戦士・種付けキラきゅん さて、もっともらしい動機を述べて軍に志願したフレイさん。ところが、実は彼女、前の戦闘で父親が死んだショックでおかしくなっていたのです。頭の中は、憎いコーディネーターを殺しまくってやるという復讐心でいっぱい。 そこで、艦内で最大の戦力であるガンダムのパイロット・キラくんを、自分の体でたらしこむことにしました。「そうよ、みんなやっつけてもらわなくちゃ……」
そうして童貞(?)を捨てたキラくん。フレイさんに感化されて、性格も変わります。 キラ「敵はどこだ!? ストライク、発進する!」 副長「まだ敵の位置も、勢力も分かってないんだ。発進命令も出ていない」 キラ「何のん気なこと言ってるんだ! いいから早くハッチ開けろよ!! 僕が行ってやっつける!!」 ところが、実はフレイさんには婚約者がいました。それは、キラくんの友人の1人・サイくんです。 突然婚約解消を言い渡されたサイくん、びっくりしてフレイさんを問い詰めますが……。 フレイ「あたし、ゆうべはキラの部屋にいたんだから!」 サイ 「え……キラ? どういうことだよ、フレイ? キミ!?」 キラ 「もうよせよ、サイ。どう見ても、キミが嫌がるフレイを追っかけてるようにしか見えないよ」 サイ 「なんだとぉっ!」 キラ 「ゆうべの戦闘で疲れてるんだ。もうやめてくんない?」 さすがにブチ切れたサイくん、一発殴らせろと向かっていきます。しかし、相手は遺伝子操作で運動神経も超人レベルのキラくん。軽く腕をひねり上げられてしまいました。 そして、とどめの一言。「やめてよね。本気でケンカしたら、サイが僕にかなうはずないだろ」 そのままサイくんを地面に投げつけ、しりもちをつかせるキラくん。友人の婚約者を寝取った上、これほどの屈辱を与えるとは。逆ギレにもほどがあります。 ちなみに、サイくんはこの後、キラくんに負けじとガンダムを操縦しようとしますが、まともに歩かせることもできなくて泣き崩れます。
そして、勝手にガンダムを動かした罰として、1週間の営倉入りに。 ちなみに、キラくんが勝手に捕虜を解放した時や、別の人が勝手に戦闘機を動かして撃墜された時は無罪でした。 福田監督は、「キラは友達から差別を受けてる」つもりで作っていると発言していますが、放送を見る限りでは、キラくんはみんなから必要以上に優しくされ、サイくんだけ差別されているように思えてなりません。 「敵を皆殺しにするまで戦争は終わらない!」 ともあれ、キラくんの前に、すごく強い(という設定の)敵が現れます。その名は「砂漠の虎」。どの辺が虎なのかというと……。
趣味が悪いとかそういう次元ではありません。ついでに、彼が乗る機体もモビルスーツと言うよりゾイドに近いものです。 ともあれ、このコスプレイヤーが、キラくんに問いかけてきます。「戦争には制限時間も得点もない」「なら、どうやって勝ち負けを決める? どこで終わりにすればいい?」 普通に考えれば、降伏文書に調印した時が終わりでしょう。しかし、さすが虎は一味違います。「やっぱり、どちらかが滅びなくてはならんのかねぇ?」 そして、対決。キラくんの活躍で、戦闘は地球側の勝利に終わり、虎も「勝敗は決した。残存兵をまとめて引き上げろ」と部下に命令します。 ところが、勝敗が決した自覚はあるのに、虎本人は特攻してきます。「言ったはずだぞ! 戦争には明確な終りのルールなどないと!」「戦うしかなかろう、互いに敵である限り。どちらかが滅びるまでな!」 何だかよく分からない信念に基づいて、「砂漠の虎」は死んでしまいました。 外交の手段としての戦争なら、相手を滅ぼすまで戦う必要はありません。負ける側にしても、自分たちが滅びるよりは先に「これ以上戦争を続けても損なだけ」というラインがあると思います。 しかし、どうも「砂漠の虎」の認識では、戦争は国益のためにやるのではなく、相手が憎いというだけの理由で殺し合うもののようです。そこに損得勘定はないので、当然、終了条件など考えません。 この場面だけ見ると、「砂漠の虎」が歪んだ戦争観を持った変態さんのようです。ところが、放送を見続けると、どうも「ガンダムSEED」世界の大人はみんな同じような認識らしいことが分かります。 そこで、公式ガイドの福田監督インタビューを見ると……。
いや、当たり前ですけど。というか、福田監督が「みんなは『相手を全滅させないと戦争は終わらない』と思っている」という前提で話を作っていることに驚きです。 作ってる人の考え方が変だから登場人物も全員変になったということでしょうか。 また、そもそも視聴者には「SEED」世界の戦争の原因が謎です。 劇中では、戦争の原因はナチュラルとコーディネーターの間の差別感情だけで済まされています。しかし、両者の緊張が武力衝突に発展したきっかけは、地球軍がいきなり宇宙コロニーに核を撃って24万人を殺した事件。 報復に核を撃ち返される可能性のある攻撃を実行するには、当然、その甚大なリスクに釣り合うだけのメリットがあったハズです。まさか「相手が憎い」というだけで、共倒れを覚悟して撃ったわけでもないでしょうし。しかし、その肝心な部分がサッパリ描写されていません。 もちろん、戦争が単なる舞台装置なら、開戦の経緯などには触れず、現にある戦争という状況の中でのドラマを描けばいいと思います。 しかし、
……という話なら、戦争の終わらせ方に当然深く関わるだろう、戦争の発端をすべて裏設定にした意味が分かりません。 余談ですが、「ニュータイプ」5月号のインタビューにて、両軍がどういう戦争の終わらせ方を想定しているのか、福田監督が答えてくれています。
……そんな裏設定があったとは。本編には外交のガの字もありませんでしたけど。どうか「砂漠の虎」にその辺のところキッチリ教えてやってください。
敵に資源を依存しながらの戦争……。その設定だと、現時点ですでに生殺与奪を握られていませんか? 状況が想像できません。 また、脚本の吉野弘幸さんによると、初期の設定では、コーディネーターたちは外宇宙へ出て行きたがり、ナチュラルたちは出て行かれたら困ると言って戦争になった、という話を組んだとのこと。 どうも、この肝心の戦争の原因について設定が確定していないか、少なくともスタッフ間で共通の認識がないようなフシがあるのですが……。「相手を皆殺しにする」以外の戦争終了パターンが登場人物の誰にも想定できない理由がそれだとしたら、いくら何でもあんまりです。 マルコ・モラシム 砂漠の虎の次に出てきた敵は、マルコ・モラシムという名前。アナグラムすると「シモムラ・コマル」となり、設定制作の下村敬治さんとの関連が気になります。そして、公式ホームページの下村さんのコラムを読むと……。
ああ、下村さん困ってるんですね(福田監督に)。それで、キャラクターにそんな名前付けちゃったと。 強引な恋愛 子供向けの漫画やアニメでは、恋愛にも「捨てられた子猫を可愛がる意外なカレの姿に一目ぼれ」といった分かりやすい説明描写が付きます。 でも、恋愛に理由はありませんし、「なんでこの娘がこんなヤツのことを?」と思うことは現実にもザラ。アニメでも、恋愛描写を変に説明的にしなくてもいいと思います。 しかし、やはり物には限度というか、「ガンダムSEED」で繰り広げられる強引なカップリングには違和感があり過ぎます。 たとえば、コーディネーターのDさんの場合。 戦闘で捕虜になったDさんが、拘束されて医務室のベッドで寝かされていました。すると、そこにナチュラルの女の子が入ってきます。なぜかおびえているようなので、軽く話しかけてみると……。 彼女はこんな形相で、泣き喚きながらDさんの顔面に向かってナイフを振り下ろしてきました。間一髪、よけるのが遅ければDさんは死んでます。 ……どうやら、彼女は先の戦闘で彼氏が死んでしまったらしく、自分のカレが死んだのに、こんなコーディネーター野郎が生き長らえているのが許せなくなり、捕虜のDさんを殺そうとしたみたいです。 それ以来、Dさんは何となく彼女のことが気になるようになりました。どうやら彼女を好きになってしまったようです。 Dさんは所属していた軍も勝手にやめて、彼女といっしょにテロリストとして戦うことに決めました(もちろん母国に帰れば極刑でしょうし、Dさんは軍の要人の息子なので家族にも迷惑がかかるでしょうが、そういった葛藤をDさんはテレビ画面に出しません)。 ちなみに、設定によると、Dさんは「狡猾な性格」だそうです。 人間ポップコーン プロデューサーの竹田青滋さんのインタビューによると、
ということで、
……「戦争の怖さ」が「北斗神拳の怖さ」と同じベクトルですが、土曜夜6時の地上波でコレをやったこと自体がエラいような気もします。 ヒロイン(?)・ラクスさん キラくんには、コーディネーターの親友がいます。その親友にもやはり婚約者がいて、名前をラクスさんといいました。 そこでキラくんは、再び寝取り属性を発動。最終回の前には、キラくんはフレイさんと別れて、ラクスさんとラブラブになっていました。 さて、そのラクスさん、無防備にパンモロを見せるなど、序盤は単なるおつむの弱い人として描かれていました。
ところが、福田監督のインタビューを見ると……。
パンツを見せたりしながら、相手が自分にとって「使える」人間かどうか試していたとのこと。やな奴ですね。確かに劇中でも、自分の考えを聞かれると答えをはぐらかして「あなたは?」と聞き返す場面が多かったです。 しかし、たまに彼女が自分の考えを口にするときも、思わせぶりなだけで具体性は皆無でした。「戦争は難しい」発言にしても、それ以上の言及は一切なかったので、それが経験からくるものなのか、本で得た知識なのか、とにかく悟っているのか、映像からは一切分かりません。 そして、物語終盤。ラクスさんは戦艦を盗み、ナチュラル側でもコーディネーター側でもない第三勢力を結成します。 ところが、ラクスさんがその軍勢で何をしたかったのか、視聴者には分かりません。とりあえず攻撃されたら撃ち返すなど、最後まで行き当たりばったりな行動しかしていなかったように見えます。 ちなみに、最終回の直前にラクスさんが長々と語っていたセリフは、「わたくしたち、人は、おそらくは、戦わなくても良かったはずの存在……。なのに、戦ってしまった者たち。何のために? 守るために? 何を? 自らを? 未来を? 誰かを撃たねば守れない未来、自分、それは何? なぜ? そして、撃たれた者にはない未来。では、撃った者たちは? その手につかむ、この果ての未来は? 幸福? 本当に?」 ただ思いついた疑問を羅列しただけの中学生ポエムに見えますが、最後までこんな感じで、問題提起以上のことは口にしませんでした。 どうも福田監督の脳内では彼女はスゴイ人物らしいのですが……。劇中の描写からは、「実は分かっている人間」と言うより、「天然に見せかけているけど実は分かっている人間のように見せかけてやっぱり天然」に思えます。 状況の変化 コーディネーター側のガンダムのパイロットは、キラくんの親友です。そこで、物語の中盤までは、「敵味方に分かれた親友同士が、それぞれの正義のため、ガンダムで戦う」というコンセプトでした。 ところが、そんなキラくんと親友も和解。2人で仲良くラクスさんの第三勢力に加わり、いっしょに戦うことになります。ついでに実は生きていた「砂漠の虎」も仲間になりました。 一方、コーディネーター側もナチュラル側も、それぞれ軍のトップがキチガイ化。大量破壊兵器を撃ち合う殲滅戦を始めます。 朝日新聞の福田監督インタビューによると、「世界大戦的な戦争をリアルに描く」ことを目指していたハズですが、いつのまにか「悪いヤツのせいで戦争が起こっている。正義の主人公たちが行っくぞ〜!」という構図になってしまいました。 最終回「終わらない明日へ」 「TV Bros」の福田監督インタビューによると……。
これを踏まえた上で、いよいよ最終回。 「SEED」のオープニング主題歌の出だしは、「たどりつく〜場所さえも〜分からない〜♪」ですが、まさにそんな感じの内容です。 さて、キラくんは物語序盤で、自分を慕ってくれていた女の子が乗った脱出シャトルを目の前で落とされ、ずっと後悔していました。 最終回でも、それと同じようなシチュエーションになります。元彼女のフレイさんの乗った救命艇が、敵に落とされそうになったのです。「今度こそ助ける」と思ったのも束の間、敵の攻撃が救命艇を直撃。フレイさんは死にました。 ところが、キラくんの前に、フレイさんの幻覚が現れます。 「ありがとう……ごめんね……ずっと、あやまりたかった……(略)……あなたはもう、泣かないで……(略)」 しかし、その後のキラくんには大した活躍もありませんし、最終回でわざわざ同じ失敗を繰り返した意味もよく分かりません。フレイさんに謝らせるだけなら死ななくてもできますし。 過去のガンダムの名場面を形だけ真似しておけば、ガンオタが絶賛してくれるとでも思ったのでしょうか。 ともあれ、両軍のトップ(みたいな立場の人)も、それぞれ次のような最期を迎えます。 ナチュラル側:戦闘中、戦艦のブリッジで艦長と軍のトップが仲間割れのケンカ(片方が発砲)。他の乗組員はどちらの味方をするでもなく、2人をブリッジに残して全員退去。そのまま敵艦に撃たれて、戦艦大破。 コーディネーター側:最高評議会の議長が、命令を聞かない部下を撃つ。撃たれた部下も撃ち返し、議長は死亡。直後、武装した敵兵が乗り込んでくるが、その場にいた他の軍人は全員戦いもせず持ち場を放棄して逃亡。 ……軍人たちのありえない行動の連発に、「砂漠の虎」が優秀な軍人だと言われていたのが納得できました。 そこで、コーディネーター側の軍を、ほとんど何の伏線もなく現れた穏健派の議員が武力制圧。「現在、プラントは停戦協議に向けて準備をはじめています。それに伴い、プラント臨時最高評議会は、現宙域におけるすべての戦闘行為の停止を、地球軍に申し入れます」というアナウンスをしたところで、エンディングテーマが流れ出しました。 両軍とも戦力は残っていますし、これまでの描写がお互いに訳の分からない憎しみだけで殺し合っている異常な状況だったこともあって、視聴者には、この唐突な描写で戦争が終わったとはとても思えません。 また、もしもこの最終回で「話し合いでの戦争解決」が実現されたのなら、その最大の功労者はほとんどエキストラに等しい脇役に過ぎなかった穏健派の議員です(視聴者のほとんどは「誰この人?」という感じ)。 スタッフのインタビューなどによると、どうも穏健派の議員さんたちはテレビに映っていないところで色々と活躍していたようなのですが、何しろそんな描写は1つもありませんでした。 一方、キラくんやラクスさんは、発射された核ミサイルを撃ち落とすなど、戦闘中に対処療法で死傷者数を減らす努力で精一杯。戦艦を盗み出すくらいですし、もちろん「話し合いによる解決」など念頭になかったと思われます。 主人公たちの存在は何だったのか、特にフレイさんの犬死にの意味が分かりません。 そういえば、「砂漠の虎」との問答以来、戦う理由について悩んでいたキラくん。ラクスさんに影響され、物語中盤〜終盤では、「僕たちは、何と戦わなきゃならないのか、少し分かった気がする」「こんなことを終わらせるには、何と戦わなくちゃいけないと思いますか? 僕は、それと戦わなくちゃいけないんだと思います」などと発言するようになりました。 しかし、キラくんが思う「それ」とは「何」なのかは、最後まで説明はありませんでした。もちろん、キラくんが「それ」と戦う描写もありません。あの発言のとき、彼はいったい何と戦うつもりだったのでしょうか。とりあえず、自分の意見は思わせぶりにほのめかし、難しい問題を他人に問いかけるだけの態度はラクスさんそっくりでしたけど。 そんなこんなで、何もかも放り投げられた脱力の最終回でしたが、スタッフロールが流れ切った後で、主人公であるキラくんが、締めの一言を漏らします。 「どうしてこんなところに来てしまったんだろう、僕たちの世界は……」 それはひょっとしてギャグで言っているのですか? 聞きたいのはこっちです。本当に、どうしてこんなところに来てしまったんでしょう、このアニメは。 まとめ 公式サイトのインタビューで、福田監督はこう述べました。
福田監督は、これに失敗してしまったのでしょうか? いえ、違います。実は「TV Bros」のインタビューにて、「問題提起に対する解答の部分は、最終回で描かれるんですか?」と聞かれた監督が、次のように答えています。
そう、「人間は言葉の動物」で、「人と人とが心で分かり合えるなんていうのは嘘」ですけど、なんか感じられるんです! ……「SEED」の場合、異常な描写不足に加えて「一見〜だけど実は……」という演出フェイクもあるので、もはやニュータイプじゃないと感じ取れない領域だと思いますけど。 ともあれ、公式ホームページのインタビューにて、福田監督が「一番注目して欲しい点は?」「ストーリーです」と答えているにも関わらず、同じホームページのアンケート「SEEDのここが好き!」では「お話が面白い」という意見が最少数派でした。 確かに、戦闘描写が楽しめる回もありましたし、面白いキャラクターもいました。でも、少なくともストーリーに関しては、最終回まで見て脱力感しかありません。 他の平成ガンダムに比べて「SEED」が良かった点として、ちゆが自信を持って挙げられることと言えば、エロ同人誌のネタにできる女性キャラが多いことくらいでしょうか。 どうしてこんなところに来てしまったんだろう。 |
平成15年10月12日 | カレー将軍・鼻田香作 | |||||||||||||||||
今さらですが、今年になってから「究極のラーメン」や「究極のカレー」といった「ぴあ」の特集本がなぜか「包丁人味平」を表紙に起用しています。 でも、「包丁人味平」については、「名前は知ってるけど読んだことはない」という方も多いようなので、少し説明させて頂きたいと思います。 料理で勝負する漫画は、たくさん作られました。 少年チャンピオンなら、サメ肉の料理を作る際に材料の生きたサメを素手で倒すところから始める「鉄鍋のジャン!」。コミックボンボンなら、女の子が納豆のネバネバで動けなくなる「ビストロレシピ」……。
そんな料理勝負漫画の草分け的存在が「包丁人味平」です。地雷包丁と称してマグロを火薬で爆破して刺身を作ったり、火炎放射器で魚を焼いたり、料理と言うよりは曲芸に近い技の連発。 さらに、味平が魚料理で勝負する時になって突然「実は味平は魚アレルギーだった!」と明かされるなど、「実は月光は盲目だった!」に匹敵する後付け設定もステキです。
ちなみに、無事に魚アレルギーを克服した味平は、お刺身をたいらげて「おれは今なにか自分自身がひとまわり大きくなったような気がする!」と大イバリでした。 なお、この漫画の原作者・牛次郎先生は、後に出家して住職になり(主な著書は「霊魂の書」「生と死の般若心経」)、奈良県厚生年金受給者のつどいで講演する(演題は「知らない世界」)などの活動をしておられます。 一方、作画のビッグ錠先生は、この後もラブホテル経営漫画「ごくらく王」などの素晴らしい漫画を描き続け、ミュージカル出演などで活躍しています。 さて、その味平の敵には、調理場にハエが1匹いただけで150人の料理人をクビにした包丁貴族をはじめ、変態料理人が多いです。 しかし、そんな中、ブッチ切りで人間を超越しているのは味平の父ちゃん。その絶妙の包丁さばきにかかれば、鯛の生け作りも次のように……。
この父ちゃん、わりと親バカなので、味平のピンチには助けにきてくれます。しかし、そのお説教はもはや日本語として成立していません。 例:「ムリなことだとは、わかりきっている!! しかし…しかしっ!! ムリなこととは不可能ということではないっ」 ところが、そんな父ちゃんをも凌駕する究極のバカ料理家が、「包丁人味平」に登場していました。それがカレー将軍・鼻田香作です。 残念ながら知名度は低く、Google検索のヒット数は「味皇様」が1万6000件、「海原雄山」が8000件、「鼻田香作」が100件でした。しかし、海原雄山が出現する10年も前にこんなにも料理に情熱を燃やしたアホがいたということを、この場で布教させて頂きたいと思います。 さて、鼻田香作が登場するのは、味平の全エピソードの中でも最も面白いカレー戦争編です。 ふたつのデパートが駅をはさんだ北と南に同時開店し、どちら側に多くの客が来るかがすべてデパート内のカレー屋で決まるという戦い。単に美味しいものを作るのではなく、お子さまカレーで子供のハートをつかんで親を引っ張ってこさせるなどの駆け引きが熱いです。 味平と反対側のデパートのカレー屋を経営するのは、単身アメリカに渡ってスキヤキと天プラで大もうけして帰ってきた若き実業家・マイク赤木。 「六年ぶりに母国へ帰ってきたおれには目的があった!! カレーライスでの日本征服だ!! 必ずやってみせる! いや、やらなければならないのだ!! なぜならわたしはマイク・赤木だ!!」 そして、そんなマイク・赤木をして、「この男をインドのレストランでみつけた時、わたしはこれで日本を征服できると確信したのだ!!」と言わしめる料理人がカレー将軍・鼻田香作です。 10歳の時からカレーのキッチンで働き、世界各国のカレーで有名な料理店を転々。カレーの味を30年間追い求め、鍛え上げた鼻で6000種類のスパイスをかぎわける男。
モヒカンに鼻マスク……。19XX年に世界が核の炎に包まれていれば時代の最先端だったかも知れないファッションセンスです。 カレー戦争の中、味平のカレーに少しだけ客を奪われた鼻田香作は、こう言いました。 「クックッククク… カレー将軍とよばれ、カレーにかんしては世界中にも右にでる者はいないといわれる この鼻田香作のカレーの味にこれだけ接近したのは今までおまえひとりだ」 さすがカレー将軍、相手を褒めるためのセリフの半分以上が自分を褒める言葉に占められています。 そして、味平が苦労して作ったカレーを、ちょっと食べただけで完璧に再現。その実力を見せつけられ、味平もビックリです。 しかし、そんなカレー将軍に対抗して、味平は「味平カレー」を完成させました。その素晴らしい出来には、鼻田香作も絶賛します。 「カレー将軍といわれるこのおれでさえ、ほろぼれとするようなみごとな味だった…」「世界中のありとあらゆるカレーを口にしてきたこのおれがはじめてであった味だ!!」「カレー将軍といわれるこのおれでさえウットリしたあの味…すばらしいカレーだ」 もうカレーを褒めてるのか自分を褒めてるのかよく分かりません。 ともあれ、「あの味平カレーに! 味平カレーに勝ちてえんだ!」と、闘志を燃やす鼻田香作。実業家のマイク・赤木は、資本力を武器に値下げ攻勢で味平カレーを潰そうとしますが……。 鼻田「料理の勝負は味でつける!! 値下げ作戦など一流の料理人のすることではない!!」 赤木「し、しかし鼻田くん…それではキミが必ず味平カレーに勝つという確証はあるのかね!!」 鼻田「わたしはカレー将軍 鼻田香作だ」 そして、彼はついに究極のカレー・ブラックカレーを完成させます。 それは、まるでライスの上にコールタールでも流したような真っ黒のカレー。見た目は「こんなのが くえるのだろうか」、味は「おいしいといえばおいしいのかな」という感じですが、なぜか一度食べると病みつきになってしまい、つい毎日食べに行ってしまうという魔術のようなカレーです。
このブラックカレーがとんでもない数の客を集め、さすがの「味平カレー」も完敗。ついに味平も敗北を認めます。
そして、ここからが「カレー戦争編」のクライマックス、鼻田香作ワンマンショーです。 「思い上がるんじゃねえぜ味平。いったいこの俺を誰だと思ってるんだね。いいか 俺はカレー将軍 鼻田香作だぜ」 「みろ この客たちを。みんな俺の作ったブラックカレーに酔いしれているじゃねえか。こいつらはもう俺のブラックカレーなしでは生きられなくなるんだぜ」 「その気になりゃあ俺は日本中の人間を俺のカレーのとりこにしてみせることだって出来るんだぜ クアーッカッカッカカカ」
「さあ みなの者 このカレーの神様の足元にひざまづくのだ!」 「俺は神様だ クァーッカッカカカカカ 神だ――っ」 ……実は、鼻田香作はすでにカレースパイス中毒で発狂していました。そう、ブラックカレーは麻薬入りのカレーだったのです。
ちゆは、これほど衝撃的な結末を迎えた料理漫画を他に知りません。 料理漫画には奇作・怪作が多いですが、出発点がコレなら当然でしょう。 そして、鼻田香作の社会的最期を見届けた後、味平は次のようにつぶやくのでした。「料理の道とはおそろしいものだ……一歩まちがえば優秀な料理人を廃人に化してしまう……」 もう絶対に料理がどうとか言うレベルではないのに、たった一言で料理の話として無理矢理まとめてしまった伝説の名言です。 ネットアイドルちゆはカレー将軍・鼻田香作を応援しています。 |
平成15年10月19日 | エッグマンの挑戦 | ||||||||||||||||||||||||||||||||
昨年10月21日のニュースで、「ホーリーランド」という漫画についてご紹介させて頂きました。 引きこもりのユウ君が、自室で1日5000回の素振りを2年間続けてみたら本当に強くなって、夜の街でヤンキーを狩るお話です。 作者は、森恒二先生。 「ベルセルク」の作者・三浦先生によると、森先生は「学生時代だけでも倒した相手の数は数百人」「極真黒帯・木刀持った右翼・ナイフ持った黒人・ミス湘南などを倒した」という豪傑で、バイクで事故って死にかけた際にマンガの神の啓示を受けたのだそうです。 そのためか、「ホーリーランド」の中には作者の実体験からくる格闘うんちくが頻出します。 「護身術の本などで、時々刃物の奪い方を目にするが、あれはどうだろうか? 僕(作者)自身が不器用なのもあると思うが、刃物を奪おうとして手にケガを負った事がある」などなど。 素人の読者としては、そういった「ホーリーランド」の記述は正しいのかハッタリなのか気になります。 ちゆも以前、ホーリーランドに書いてある「1対多のケンカの時は、弱い敵から倒すべき」という説は本当なのか?というアンケートをさせて頂きましたが、思ったより意見が分かれてよく分かりませんでした。 そんな感じで、2chの武道板に「ホーリーランドってあってるの?」スレッドが立ちました。内容は、だいたい次のような感じです。 「あれとかどうですか? レスリングのタックルに対して手刀で迎撃」 「ブッチャケ無理」 「手刀落とす前に組み付かれてアポーーん」 「その通りですね。本物のタックルは本当に早い」 「アスファルトに投げられて立ち上がり逆転KOするユウ君」 「一応リュックサックでダメージ軽減したってことになってますね」 「柔道家に投げられてリュックサック一つで大丈夫!ってのは」 「投げられたら死ぬ。普通」 「おそらく60kg台のユウでは即死でしょう」 「せめて肋骨は折れて背骨も歪んで欲しかった」 「ユウのバックには衝撃緩和できる宇宙素材が詰まってたとか」 「振り上げた角材もろともハイキックで相手をブッ倒すユウ君」 「あれってかなり無理ぽじゃないですか?」 「あれギャグ漫画だから何やっても良いんだよ」 「自室でシャドーやるだけであれだけ強くなるなんて」 「誤ったフォームを覚えるのがオチ」 「指導者が随時フォームの修正とアドバイスを加えていかないとダメ」 「ユウは一応天才ってことになってますから」 そんな穏やかなムードの中、エッグマンというハンドルネームの方が登場。武道板の有名人・胴締め剛術家さんに因縁を付け始めます。
さっそく、「オフで実際に会ってボコボコにすれば?」と煽られますが、
これに、「エッグマンって格闘技はやってるの?」「何時どこで勝負するのか発表してくれ」といった煽りが入り、
さらに、「半年は長いな。六週間後にしてくれ。だいじょうぶ!エッグマンはやればできる子だから」の一言で、対決の日は6週間後に決定。 格闘技の本やビデオを買ってきたというエッグマンさんに対して、「本当に強くなりたいのなら、ちゃんとした指導者についたほうがイイよ」という忠告が入りますが……。
「ユウ君は漫画のキャラだぞ」というツッコミが入りますが、もちろんエッグマンさんは気にしません。胴締め剛術家さんが使う柔道と柔術への対策を練り出します。
その後の情報で、エッグマンさんは19歳の無職と判明。 「そんな奴が夜中の公園でトレーニングか。まさにホーリーランドだな」「無職で公園で木刀振って枝折ってるのか?」といったツッコミが入ります。
……広い世の中、電波が実在するのも事実ですが、こういったエッグマンさんの発言はいかにも作っている感じに見えます。
ところが、ここで当の胴締め剛術家さんが、次のように発言します。 「卵君からメールが届いていましたが、どうやら彼は本気のようです。携帯の番号と画像を本当に送ってきました」 これを受けて、スレッドも盛り上がります。「実はエッグマンの今までのレスはネタではなく本気だったのかもしれない。つまり彼は真性の(ry」「あれ全部本気だったの? それって…(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル」 ちなみに、送られてきた画像の特徴は、次のような感じだったそうです。 ●かなり痩せ型 ●サングラスで顔はよく分からない ●カワサキのバルカンらしきバイクにまたがっている 胴締め剛術家さん曰く、「おそらく エッグマンは『T2』を意識しているのではないか?と思われます。体型が全然違いますが、本人はノリノリなんでしょうね」「皮ジャン着てるんですが、死ぬほど似合ってません。髪型も服装も乗っている単車すらも浮いています」 もちろん、「実は全く関係ないヤシの画像だったりして…」という可能性も高いですが、スレッドでも、「何かちょっと違う意味でこわい相手のような気がしてきます」といった声が出るようになりました。 なお、この時点で、2人の戦力差は次のように絶望的。
しかし、エッグマンさんはすでに勝利を確信しています。
「それって単に乳酸がたまってるだけでは?」というツッコミも、もちろん無視。ついに新スレッド「【素振りと】卵男の挑戦【シャドウのみ】」が立てられました。 そこに、再び胴締め剛術家さんが登場。「卵に電話かけると本人らしき人物が電話に出てくれました」ということで、次のような会話をしたそうです。 胴「もしもし、お前、エッグマン?」 卵「……誰?」 胴「お前の大好きな胴締め剛術家ですけど」 卵「…………」(5秒ほど沈黙) 胴「もしもし? …おい! なんか言えって! コラ! 卵!」 卵「………………プッ」 そうして電話を切られた後、「用件はこちらから伝えるから、電話をかけてくるな」というメールが届いたそうです。 胴締め剛術家さん曰く、「どうやら彼が対人恐怖症なのは間違いないようです。電話ですら、他人とのコミュニケーションが出来ないようでした。案外、可哀想な子なのかもしれませんね」 それでも携帯の番号は本物らしいということで、「何のために電話番号を胴締め剛術家氏に教えたのかよく分からない」「せっせとネタ書き込んでて、ご苦労な人やなと思ってたんですが、マジモンやったんですか」「うーん、これってまじでやばいんじゃ?」という声が増えました。 ところで、実はここに至っても、エッグマンさんがそもそもなぜ胴締め剛術家さんを敵視しているのかよく分かりません。スレッド内では、次のように推測されました。 「胴締めはホリランスレで作者の森を妄想漫画家とコキ降ろしていた点に遠因があると思う。ホリランは脳内武道家にとってまさにホーリーランド、貧弱な自分をユウに置き換えて脳内妄想で武道歴を積んでいた。しかし、有名コテハンによって無残にもその幻想を打ち砕かれてしまった。その幻想を糧に生きていた卵マンは日に日に胴締めへの恨みを募らせていく」 しかし、エッグマンさんはこう反論。
これに対して、「君がホリランを”リアルだ”と認識するには、君自身がリアルなストリートファイトの経験がないとダメだと思うんだけど…」「童貞が一言。『わぁ、このダッチワイフ、すげぇリアルな挿入感だなぁ!!』」といったツッコミが入りますが、
さっそく、「先生、漫画返したくなくて休学したんですか?」とツッコまれますが、
この辺はもうどう見てもネタですが、とにかく自信たっぷりのエッグマンさん。 「本を読んでるだけでできるなら同締め氏も使えるっつーの」という意見に対しても、
そこで、またまた胴締め剛術家さんからの報告。「卵の野郎から嫌がらせとしか思えない程の大量のメールが届いてました。三行メールで157件も送ってくるなと言いたいです」 そんな感じで、エッグマンさんが指定してきた対決方法は次のようなもの。 1、彼の自宅のガレージで行う 2、京阪の駅まで一人で来い 3、立会人は彼の友人たちが引き受ける 4、勝負に負けた側は土下座の写真をネット上に晒す事 5、武板で謝罪文を掲載する事 「2chで立会いの相手を自宅に招くというのもある意味蛮勇としか言いようが無い」などの声が出ますが、もちろん彼は気にしません。 ちなみに、エッグマン家のガレージはコンビニほどの大きさで、今は使ってないとか。
などの発言からも、エッグマンさんの家はお金持ちみたいです。
これに対して、「しかし煉獄なんて言葉、どこで仕入れたんだ?」「たぶんるろうに剣心と言う漫画。小太刀二刀流という単語使ってたし」「おいおい、エッグマンが参考にしてる剣道の本やビデオってるろ剣のコミックスやDVDなんじゃないか? たぶんボクシングの本は満腹ボクサーとセスタスだろう」というツッコミも入ります。 ところが、ここで新展開。 「ちょっと待て、みんな。気のせいかと思っていたけれど、いくらなんでも共通点がありすぎる。“早撃ち”、“BWLのジャケット”、“バルカンのようなハーレータイプのバイク”、“ヘルズゲート”、“煉獄”、“親が金持ち”、そして何より“逝っちゃってる電波な内容”。卵、お前まさか…。おもちゃのさい○うという店に心当たりはないか?」 「ゲェッ!! ま、まさか…くっ、くっしー?」 そう、エッグマンさんの発言は、田丸浩史先生の漫画「最近のヒロシ。」の内容と妙に重なるのです。 「最近のヒロシ。」は、田丸先生が自分の漫画家生活を赤裸々に語った日記漫画。先生はモデルガンショップ「おもちゃのさいとう」の常連で、漫画でも、他の常連客とのやりとりが頻繁に出てきます。 その常連客の中に、すごい妄想癖のある兄ちゃんなどの電波さんが2人ほどいるのです。
くっしー君は、月に50万円稼げるチラシ配りという触れ込みのネズミ講に引っかかったり、親に事務所を借りて何の経験もないのにゲーム会社を始めたりする若者。 その言動から、エッグマンさんは実はコイツなのではないかという疑念が生まれたわけです。 たとえば、エッグマンさんには次のような発言がありました。
一方、「最近のヒロシ。」にも、仲間同士で早撃ちをしにチャーリーという店に行く話があります。 「偶然の一致にしては出来すぎ。これはやはりくっしーかジョニーのどちらかではないかと」「本当に細かい点が同じなんだってば。たとえばBWLのジャケット、早撃ちの練習会、ハーレータイプの大きなバイク。この条件を揃えるだけでもなかなか難しいと言うのに、彼が使った特徴的な単語『ヘルズゲート』『煉獄』。これも彼の知人が開いたHPの名前」 とは言え、漫画では「ジョニー」は25歳以上。胴締め剛術家さんが「最近のヒロシ。」を読んだところ、やはりエッグマンさんはジョニーではないそうです。 年齢や体格、“親が金持ち”などの条件が当てはまるのはくっしー君。しかし、“ハーレータイプのバイク”に乗っていたのはジョニーですし、“BWLのジャケット”を買ったのは田丸先生。条件が完全に一致するわけではありません。 「もしくは、くっしーやジョニーの新しい仲間だな。あいつらの影響をうけたら一発で変になりそうだもんなあ」「単に田丸の漫画読んだヲタが暴走しているだけ、という可能性の方が強い」などの推測が出ました。 果たしてエッグマンさんは、くっしー君なのでしょうか。エッグマンさんに質問が飛びます。
ウソをついていなければ、少なくとも田丸先生と同じ市内に住んでいて、「最近のヒロシ。」の登場人物たちと趣味や生活圏が近いのは確かなようです。しかし、
ということで、今のところ真相は分かりません。そのうち「最近のヒロシ。」にこの件が描かれれば面白いのですが。 ともあれ、エッグマンさんはいつもの調子。
さらに、彼は次のような練習メニューをこなしているそうです。 午前中=ウエイトトレーニング 正午=外食 昼過ぎ=サンドバッグとフットワーク 四時過ぎ=昼寝 夜=晩御飯 夜中=シャドーとロードワーク 深夜=ビデオでの技術研究 明け方=寝る 意外な努力に、「あれ。なんかちゃんとしたメニューですね」「まじめに考えて練習してるね」「てっきりユウよろしくワンツーを五千回ってのかと思いきや、一応メニュー組んでやってるのか…想像以上だ」という声があがります。 そして、エッグマンさんの態度も微妙に変化してきました。
とうとう、「正直、19でヒキの漏れはエッグの状態が羨ましい。金はあるし夜中とはいえ公園まで言って色々練習してるわけだし、ジムにも行ってるし。エッグがトレーニング続けてる点は素直に凄いと思うよ。ということでガンガレ」という人まで現れました。 もちろん、即座に「ヒッキーに言われてもなあ…」「エッグマンは全国の引きこもりの憧れです」といったツッコミが入りますが。 そんなこんなで、さすがに6週間では無理があると気付いたのか、エッグマンさんは薬物にも手を出します。
「プロテイン飲みすぎ。肝臓壊すなよ」などのツッコミが入る中、具体的な商品名を聞かれて、エッグマンさんが挙げたのは、
「お前ジャックハンマーにでもなる気か?」「ほとんど全部副作用バリバリのアナボリックステロイドとケアの時に使う薬だよ」「併用は副作用どころじゃねーぞ。特にHCG。人格崩壊起こしても知らんぞ。あ、もうしてるか」 さすがに心配する声が出ますが、エッグマンさんは超ストイックです。
「グラップラー刃牙」に登場したジャック・ハンマーは、明日を捨てた過剰ドーピングと日に30時間のハードトレーニングを自らに課し、薬物と滅びゆく肉体とのせめぎ合いの果てに、矛盾のみを条件に存在する肉体の境地に到達しました。 エッグマンさんも、まさにその世界を目指そうと言うのでしょうか。 さすがに、これには心配する声が続出。 「ビルダーが使うステロイドをオマエが使ってどうすんだ。ビルダーになりたいのか死にたいのかどっちだ?」「内蔵ボロボロになってまで勝ちたいか? まぁ勝てないけど。てことは勝てないのに内蔵ボロボロになってもいいのか?」「6週間あれば内蔵や女性化はともかく精神へのダメージは出てくるぞ」 ……「ホーリーランド」の世界から「最近のヒロシ。」の世界に移ったと思いきや、今度は「グラップラー刃牙」の世界へ。エッグマンさんの旅は終わりません。 約束の日まであと6週間。やっぱりネタだとは思いますが、ネタならネタでこれくらい仕込んでくれれば上等です。 ネットアイドルちゆはエッグマンさんを応援しています。 |
平成15年11月28日 | 井狩春男さんと「光に向かって」 | ||||||||||||||||||||
「この本は100万部売れる ベストセラーづくり100の法則」という本があります。 著者は井狩春男さん。本屋さんの取次の窓口に35年間座り、新刊書籍を毎日ながめているうちに、ベストセラーになる本を判別する能力を身に付けたという方です。 たとえば、「葉っぱのフレディ」を初めて見た時の感想を、井狩さんは次のように書いています。
奥付の著者紹介によると、井狩さんはその眼力で「出版不況の希望の星」「ベストセラーのつくり手」などと呼ばれているそうです。 そんな方が編集者を対象に書いた「ベストセラーの作り方」の本。どんな内容なのかと読んでみると、
おそるべし多数決の原理。 1999年には超汚染の雲か核の雨が降りそそぎ、わずかに生き残った人間も胴が2つで手足が8本の赤むくれのバケモノになっていると書かれた「ノストラダムスの大予言」だって、
ということになります。まあ、何しろ「ベストセラーの作り方」ですから、それくらい割り切った方が良いのかも知れません。「内容のある本」を目指そうなどという志は捨てて、ひたすら売り上げ優先の金の亡者になれということですね。 ……と思ったら、
いきなり精神論に傾く井狩さん。一見、いい子ぶりっこにも見えますが、むしろ「本の売り上げ部数だけで、作った人の心が清浄か汚れているか分かる」というデンジャラスな思想です。 ところが、実際のベストセラー本が売れた理由の分析を読むと、
「知恵ではない。心だ。それでベストセラーが決まる」「読者を脅すと本が売れる」 ……って、どっちですか。それとも、地球を明るくしようという清浄な魂をもって読者を脅せというアドバイスなのでしょうか。 さらに、井狩さんは中原中也と石川啄木が嫌いらしく、2人だけ名指しで例外に指定。
……「汚れた心の人がつくった本は決してベストセラーにはならない」という記述は、井狩さんの「そうだったらいいな」という単なる願望だったのでしょうか。 一方、日本人が「イザヤ・ベンダサン」という偽名を使い、「ユダヤ人から見た日本人論」を勝手にデッチあげた本については、
著者としてのマナーの悪さではイザヤ・ベンダサンは石川啄木の遥か高みを行くと思いますが、今度は「認めないぞ」とはならないようです。 そんな感じで、重箱のスミをつつくとキリのない本。たとえば、「法則47・ベストセラーの四大定番テーマがあります」という項によると、売れる本の四大テーマは次の通り。 ●恋愛がらみ ●食べること関係 ●ダイエットあるいは美容がらみ ●ちょっとした生き方本 ●お金にまみれて、がらみ ……「四大テーマ」なのに5つあります。韓国で「ファイブマン」のオモチャを買ったらなぜか6人いたとき以来の驚きです。 ともあれ、この手のノウハウ本に対しては、「だったら自分でベストセラーを作ればいいじゃん」という定番のツッコミがあります。 しかし、井狩さんがスゴイのは、ちゃんと自分で「ベストセラー100の法則」通りに本を作り、成功したと主張している点です。
この「光に向かって」は、おそろしく売れた割に、新聞や雑誌ではあまり取り上げられなかった不思議な本。数少ない書評を見ると、たとえば斎藤美奈子さんの「趣味は読書。」では、次のようにツッコまれています。
そんな「光に向かって」の奥付を見ると、著者の高森顕徹さんは、「浄土真宗親鸞会 会長」という得体の知れないプロフィールの持ち主です。 「浄土真宗親鸞会」とは、45年ほど前に発足した宗教団体。ためしに学研の「浄土の本」を見ると、
などと書かれていて、ちょっぴり不気味です。ともあれ、その「会長」の高森さんの本は、信者の方々にどう読まれているでしょうか。 親鸞会の機関紙「顕正新聞」の平成10年1月1日号に、1人の信者の方の体験発表が載っていました。 親鸞会には「特専部」という部門があります。医者や弁護士など、専門家の信者で構成される、フリーザ軍でいうところのギニュー特戦隊みたいな存在です。 その信者さんも、大学2年生のとき、専門家として親鸞会の力になろうと決意します。
しかし、医学部で待ち受けていたのは、6年間の厳しい勉強。26個の試験のうち18個を落とす悲惨な成績で、卒業も絶望的になります。
そして、「光に向かって」に載っているエピソードの1つに勇気づけられ、「国家試験に落ちたときが死ぬ時」と遺書を机の上に置いて猛勉強。ついに医師免許を取得するのでした。 ……そんな感じで、本来「光に向かって」は、「高森先生がリポビタンDを推奨しているから、会員全員リポD派」というくらい高森さんを尊敬している人たちが、正座して拝読するような本なわけです。 さて、会の内部だけで入手できた「光に向かって」の原本と、井狩さんが協力したという「市販版」の表紙を並べると、
元の本の臨死体験の出口みたいなデザインを癒し系に変えてしまったのは、井狩さんの功績ならエライと思います。 また、顕正新聞では「仏法にかなった家庭教育・社会生活の指南書」「光に向かって進むものは栄え 闇に向いて走るものは滅ぶ」などと宣伝されていた本に、「心をいやし元気がわくヒント集」「大切な忘れ物を届けにきました」という人畜無害なキャッチコピーを付けたのも良いでしょう。 まあ、元の本からの流用しただけの「光に向かって」というタイトルまでまるで井狩さんが考えたかのように書かれているのはアレですけど。
ちなみに、親鸞会にとって、「光に向かって」という言葉は宗教色を感じさせずに求道や布教への情熱を表現できる便利な言い回し。「顕正新聞」を見ても、次のように使われています。 用例1:「仏法との尊いご縁を大切にし、今生こそ、本当の幸せの身にさせて頂けるよう、光に向かって進ませて頂きます」(平成9年1月15日) 用例2:「今晩とも知れぬ、不定の命、一刻も猶予は許されません。『一向専念無量寿仏』の信念を磐石の如く肝に銘じ、ひたすら光に向かって突進させて頂きます」(平成9年10月15日) 親鸞会では、井狩さんの言う「社会を良くしよう、明るくしよう」といった世間のことには使わないわけです。 ともあれ、ちゆが気になるのは、井狩さんの次の主張。
……売れるハズのない本を自分の力でベストセラーにしたのだ、というわけです。 しかし、お説教を聞きに全国から1万人ほどの信者さんが集まってくる宗教団体のトップが本を出し、団体としても積極的に本の購入を勧めたのです。1人で何十冊も買って配る人も多く、売れて当たり前だったと思います。 まあ、井狩さんが本当に全然知らなかったのか、事情を隠して自分の手柄だと宣伝したかったのか、「たとえ宗教団体の本ではなくても、自分の力で60万部売れていた」と思っているすっごい能天気な方なのかは分かりませんけど。 ネットアイドルちゆは、ベストセラーにならなかった良書を作った「汚れた心」の人たちを応援しています。 |