◇児童向け恋愛小説のSSを書いてみました◇ | |||
・このページは、あなたが18さいになるまで、よまないことを、おすすめします。 ・このページは、おとこのひとむけです。 ・このページは、へんたいむけです。 ・このページは、フォア文庫の児童小説『ラブ偏差値』の二次創作小説ですが、たぶん原作を知らなくても大丈夫です。
・「ラブ偏差値」の主人公はれんげちゃんですが、脇役メインの4巻、6巻、7巻が好きです。 ・特に7巻の、実は中身は黒かった優奈ちゃんが好きです。
・原作では当て馬キャラなので、がんばって、優奈ちゃんが幸せそうなお話を考えてみました。 ・なるべく児童小説っぽい文章を目指したつもりです。 ・文庫本20ページぶんくらいの文字数です。 |
1 初えっちは ちょいビター!?
「こんな初体験の相手はイヤだ! っていうテーマで考えてみたんだけど」
練習した通りに、あたしはしゃべる。
「やっぱり、お父さんとか、先生とかはイヤだよね? あと、棒きれを入れられたりとか、動物にやられちゃうのも、サイアク。それで、考えたんだけど」
あたしはクーラーボックスから、つららみたいな氷のかたまりを取り出した。
「犬のおしっこをね、冷凍庫で凍らせたの。ざっしゅ犬のおしっこで作った氷でヴァージンを奪われたら、一生、尾を引くと思うんだ」
犬なだけに──と続けるのは、やっぱりやめた。
あんまり品のない子だって、思われたくないから。
「このおしっこが、れんげちゃんの初体験の相手だよ」
「うーっ! うーっ!」
さるぐつわをしたから、れんげちゃんはしゃべれない。
スカートとショーツは脱がせて、M字かいきゃくっていう姿勢で縛ってある。
れんげちゃんは、あたしに何をされても抵抗できないんだ。
れんげちゃんはモテる。
なのに、れんげちゃん自身はいつも気づかない。
(とぼけてるの?)といじわるくかんぐってもみたけど、どうやら本当にわかってないらしい。
れんげちゃんは鈍感。
そういうところ、ちょっとだけイライラする。
ほら、今だって──。
あたしが、れんげちゃんと翔君を地下室に閉じ込めた理由なんて、れんげちゃんは全然わかってない。
翔君は、れんげちゃんが好き。
れんげちゃんが翔君を好きになったら、きっと、ふたりはとてもお似合いだ。
でも。
あたしは──
(もう、あきらめない)
ラブ偏差値に、背中を押してもらったから。
恋のひとことアドバイス。
『もう少し自分の心を解放してあげてはいかがですか?』
『恥じることはないのです。恋とは、そのように、あらゆる手段をこうじて、全身全霊でするもの』
だから、あたしは、あらゆる手段をこうじる。
「おしっこでつららを作るのって、けっこう大変だったんだよ」
「ウーッ!! ウーッ!」
天真らんまんなれんげちゃんだって、ひどい初体験をしたら、きっと、恋がこわくなると思う。
そしたら、翔君とれんげちゃんの仲も進まない。
大好きな友達のれんげちゃんにこんなことをするなんて、心がすごく痛むけど。
『恋とは、本来、そのように、矛盾に満ちた、身勝手なもの。ただし、身勝手を通せば、心は痛みます。恋をつらぬこうとするならば、同時にあなたはその痛みをもひきうけなければなりません。しかし、そこに、人としての成長があります』
だから、あたしは、れんげちゃんのあそこを指で広げて、ワセリンを塗った。
友達のここに触れるなんて、なんだか不思議な気持ち。
「ちょっと痛いけど、我慢してね」
「ゥゥーッ! ゥウウッ!!」
つららみたいなおしっこのかたまりの、先がほそい方を、押し当てる。
氷だから、すべりはいいと思うんだけど。
「じゃあ、入れるね」
ちからいっぱい、押し込む。
「ゥゥゥウウウゥゥゥッッ!!」
もう少し!
「んゥウウうぅッ!」
パキパキパキパキ、って音がした。
思ったほどきれいに入らなかったけど、つららの3分の1くらいは、れんげちゃんの中。
のこりは、くだけて床にちらばった。
もちろん、タンポンを入れるのなんかとは、全然ちがう手ごたえ。
あそこから血が出てる。
いちおう、成功したのかな。
「ううぅぅぅぅぅぅぅぅ……っ」
れんげちゃん、涙を流してる。
「……さるぐつわって、なんでサルなんだろうって思ってたけど、そっか、いまのれんげちゃんの顔、本当にサルみたい」
まともな人間だったら絶対できない、みっともない顔。
でも、犬のおしっこがショックっていうより、もしかして、単に痛いだけ?
「これ、はずしてあげるね」
さるぐつわをとると、れんげちゃんは大きく息をした。
「ふぅーッ、ふぅーッ、ふぅーッ」
その息づかい、メタボっぽいよ?
「れんげちゃん、氷、ちゃんと奥まで入ってる?」
「ふぅっ……、い、いたいよ、いたいよぉ」
あたしはだまって、れんげちゃんの髪の毛をひとたばつかむと、思いっきり引っ張った。
ぶちブチぶちブチぃッ!
「いぎゃッ!!」
まぬけな悲鳴をあげる、れんげちゃん。
「あたしの。質問に。答えるの。氷。奥まで。入ってる?」
ひとことずつ区切りながら、はっきりと言う。
「ひっ……ふぅ……ひぃっ……」
れんげちゃんは、まともにしゃべれないみたい。
でも、コクリ、ってうなずいた。
「入ってるんだ」
コクコク。
「痛い?」
「いたい、いたい……」
それは言えるんだ。ふしぎ。
本当は、そんなに奥まで入ってないのかもしれないけど。
でも、れんげちゃんがどう思ってるかが、かんじん。
「ほけんの時間に習ったよね。ここに、男の子のを入れてもらうのが、えっちなんだよ」
「ふぅっ……、ひぅ……」
「だから、これが、れんげちゃんの初えっちなんだよ。わかる?」
つららの先が少し刺さって折れただけだから、本当は、えっちっていうより、ヴァギナにれっしょうを作っただけって感じだけど。
「ひぃ……、ふっ……」
れんげちゃんってば、ひとの話を聞いてないみたい。
もうひとたば、かみのけをつかんで、おどす。
「わかる?」
「ひっ、わ、わかる……」
かみのけを引っ張る。ぐいぐい。
「なにがわかるの?」
「……え、あ、これが、ウチの……初えっち……」
いいながら、れんげちゃんの顔がゆがんでいく。
自分でくちに出させたほうが、すこしは実感がわくのかな。
「じゃあ、溶かしてあげるね」
用意していた、ドライヤーを取り出す。
左手で、れんげちゃんのを広げて。
右手で、そこにドライヤーをあてがう。
「……えっ」
「スイッチ、オン」
ブォォーッ。
氷が入ったあそこに、温風を流し込む。
「熱い、熱いッ」
「がまんして、れんげちゃん。あ、ほらっ、入れたのが出てくるよ」
氷が、ドライヤーの熱で溶けて、もとのおしっこに戻る。
ブォォーッ、ぴちゃぴちゃ。
れんげちゃんのまたのあいだから出てきた犬のおしっこが、床にこぼれる。
「あはっ、れんげちゃん、おしっこしてるみたい」
「熱、熱いッ、やめてぇ……」
ちょっと、期待してた反応とちがうかも。
ぴちゃぴちゃ。
せっかく、犬のおしっこでヴァージンをうばったのに。
ブォォーッ。
れんげちゃんは、「痛い」とか「熱い」とか、肉体的な苦痛のことばかり。
ぴちょんっ。
あたしは、れんげちゃんの心をきずつけたいのに。
もっと、「くさい」とか「きたない」とか「結婚するまで大事にしたかったのに初めての相手が動物のはいせつぶつだなんてみじめだよぉ」とか、言ってほしかったんだけどな。
鈍感なれんげちゃん。
とりあえず、思いついた中で一番ひどいことをしてみたんだけど、失敗だったかなぁ。
2 初めてあたしは口にした。
れんげちゃんの向かいには、翔君を縛りつけた椅子がある。
さっき拉致してきたばかりのれんげちゃんとちがって、翔君は監禁2日目。
最初はすごく抵抗されたけど、ようやく、ちょうきょうの成果が出てきたって感じ。
いまも、翔君の椅子には、図工の時間に木材を切るときに使う、万力がセットされてる。
前に学校で、翔君が、一円玉をたくさんはさんで、つぶしてるのを見たことがある。
いまは一円玉じゃなくて、翔君のいんのうをはさんでるから、ハンドルをクルクル回したら、こうがんがペチャンコになっちゃうワケ。
そして、翔君があたしに逆らうたびに、一回転ずつ、ハンドルを回す約束。
あと何回転くらいで本当につぶしちゃうのか、あたしにもわからないから、ハンドルを回すとき、けっこうきんちょうする。
それは翔君も同じだから、ハンドルを回すと、すごくおびえる。
れんげちゃんの初えっちのあいだも、いつもの翔君だったら、「やめろ」とか言うはずだけど、あたしが黙っててって命令したら、いい子にしてた。
「いい子にできたね」
あたしは、くちびるが翔君の耳たぶに触れそうなくらい顔を寄せて、ささやいてみた。
男のひとは、そういうのが好きらしいから、いっしょうけんめい、甘い声(?)を出す。
「翔君?」
翔君は、れんげちゃんの方を見てた。
「なあ、ちゃんと、オレが優奈のいうこと聞くから、春野には、もう手を出さないで……」
くるくる、一回転ぶん、万力を締めた。
「わああぁぁッ!!」
翔君が、おびえた悲鳴をあげる。
「れんげちゃんのことは、ぎょう虫って呼ぶように、言ったでしょう?」
命令に逆らったら、万力を締めないといけない。
甘やかすと、くせになるもの。
あたしだって、大好きな翔君にこんなことをするのはつらいけど……。
そのかわり、翔君がいい子にしたら、うんとやさしくしてあげるからね。
万力のハンドルに手をかけたままで、あたしは言った。
「それで。ぎょう虫が。どうしたの?」
「な、なんでも……ない」
あたしにさからってもムダなのは、わかってくれてるみたい。
もう、翔君は何も言わなかった。
「ごほうびに、なにか食べさせてあげよっか」
そういえば、けっこう長いこと、食べ物をあげてなかった。
おなかがすいてるんじゃないかな。
あたしは、あめ玉をひとつ取り出すと、自分のくちにほうりこんだ。
「舌で、あたしのくちから取れたら、食べていいよ」
あたしは、翔君に顔を寄せる。
くちとくちが、すぐそばまで。
「お、おい……、優奈?」
翔君の手を、ぎゅ、ってにぎった。
「わからない? あたしの言ってること」
くちびるをもう少しだけつきだして、目をつむって、待つと──。
ちゅっ。翔君のほうから、くちびるを重ねてきてくれた。
「はむっ……」
あたしのくちびるのあいだに、翔君のぬるぬるの舌が、はいってくる。
舌ざわりであめ玉を探そうとして、うねうねと動き回る。
「んっ……ちゅぷっ」
右のほっぺたの中にあるあめ玉を、翔君が見つけた。
舌がとどかないみたいで、翔君は、くちびるがつぶれちゃうくらい密着してきた。
いっしょうけんめいのばした舌を不器用に動かして、あめ玉をさらっていく。
「ぷちゅっ……ぱっ」
ぬるり、って感じがして、一瞬外気にさらされたあめ玉が、あたしのくちから、翔君のくちに移るのがわかった。
本に書いてあった通り、好きな人とねんまくを触れ合わせるのって、気持ちいい。
翔君は、やっぱりおなかがすいてたみたいで、あめ玉をなめながら、ちょっとうれしそう。
それから、同じようにして、あめ玉を10個くらい食べさせてあげた。
途中で、翔君の鼻の穴にだっしめんをつめた。
鼻で息ができないから、早くあめ玉を見つけようとして、いっしょうけんめい舌を動かすの。
あと、ちょっといじわるして、くちをピタっと閉じて、翔君を拒絶してみた。
そしたら、翔君のベロが、すごい力であたしのくちびるをこじ開けて、むりやり入ってきたの。
求められてるって感じがして、すごくうれしかった。
3 ゲロって、うつるんですっ!
翔君を縛った椅子を、れんげちゃんを縛った椅子のすぐ目の前まで運ぶのは、けっこう大変だった。
「実は、犬のおしっこのほかに、これも用意してきたの」
ふたりにむかってそう言いながら、あたしは、茶色いものが詰まったタッパを取り出した。
「すごいにおいでしょ?」
ぱかっとフタを開けると、茶色のドロドロがテラテラと光る。
鼻にだっしめんをつめたままの翔君には、においはわからないはずだけど。
「飲みこんじゃ、ダメだからね」
あたしは、れんげちゃんのくちに指をつっこんであごを開かせると、タッパの中身を流し込んだ。
「ぶぶぅっ」
くちじゅう、ネチョネチョでグチョグチョ。
れんげちゃんは、茶色い歯みがき粉を使ったみたいになった。
「ねえ、翔君、今度はこれを食べられる?」
れんげちゃんのくちの中のドロドロを指さして聞く。
翔君は、いつもよりあせって、大きな声で否定した。
「そ、そんなの、食えるわけないだろ!」
「ふぅん、翔君、ここにキスするのがイヤなの?」
翔君の頭をつかんで、れんげちゃんのくちに近づけた。
ふたりとも縛られてるから、抵抗はできない。
「だれとキスするのがイヤなのか、はっきりと教えてほしいな」
うんちを食べさせられると思って、あせった翔君は必死に言う。
「……ぎょう虫! ぎょう虫とキスしたくない!」
「ぎょう虫って、春野れんげちゃんのこと?」
「そ、そうだよ! 春野とキスしたくない! おねがいだから!」
ちょっと情けない、翔君。
れんげちゃんが青ざめてるのに、気づかう余裕もないみたい。
でも、仕方ないかな、うんちなんていやだもんね。
あたしは、いつも優しい翔君が好きなんだけど──。
れんげちゃんに優しい翔君はきらいだから、これでいい。
「じゃあ、翔君はだれとキスしたいの?」
翔君の顔を、れんげちゃんの茶色いくちに、もっと近づけさせる。
「……優奈っ! オレ、優奈とキスしたいから!」
「つまり、れんげちゃんとはキスしたくなくて、あたしとキスしたいの?」
「……そ、そう!」
「ちゃんと言ってくれないと、わかんない」
「……だからオレは、春野とはキスしたくなくて、鈴木、鈴木優奈とキスしたいんだ!」
背中がぞくぞくした。
翔君が、あたしとキスしたいって、必死になってる。
こんなにすてきな翔君のくちびるを、一度だけとはいえ、れんげちゃんなんかにあげるのは、惜しいんだけど……。
「あたしがいいって言う前にくちを離したら、10回くらい回すからね」
万力のハンドルに手をかけながら、翔君のこうとうぶをエイッっと押した。
ぴとっ。
翔君のくちびるのさきが、れんげちゃんのくちに接触してしまう。
「ほら、さっきみたいに舌を入れて、その茶色いのを食べるんだよ?」
翔君は、れんげちゃんとくちを触れさせたままで、かたまってる。
「舌を出すの」
万力のハンドルを軽く回そうとすると──。
「ぅ……え……おえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっ。うえぇっ、おえぇぇえええぇぇっっっぇぇぇええええぇぇぇぇっ!!」
がんばって舌を出そうとした翔君は、吐いちゃった。
ちからいっぱいこうとうぶを押さえてたし、おどしもきいたみたいで、翔君のくちは、吐いているあいだもれんげちゃんのくちから離れていない。
ねらいどおり。
翔君は、れんげちゃんのくちの中にゲロを吐いたのだ。
「うえええええええぇぇぇぇっ!」
つられて、れんげちゃんも吐く。
くちもとでゲロとゲロが交ざり合いはじめると、翔君は我慢できなくてくちを離した。
それからも、ふたりは一緒に吐きつづける。
「おえええぇぇっ」
「うぇぇぇええっ」
特にれんげちゃんのくちからは、自分の吐いたのと、翔君が吐いたのがミックスされて出てくるからきょうれつだ。
「れんげちゃんのファーストキス、ゲロの味だね」
涙を流しながらえずくれんげちゃんの耳元に、そっとささやいた。
「ファーストキスなのに、相手の男の子は『ぎょう虫とキスしたくない』とか『ほかの娘とキスがしたい』なんてイヤがって……。せっかく、あたしが作ってきた、おいしいカレーをくちに入れてたのに、れんげちゃんとキスしたとたんに吐いちゃうなんて。れんげちゃんとのキス、よっぽど気持ち悪かったんだね」
カレーはにおいがきついから、あたしがタッパを出したときには、れんげちゃんはすぐ、カレーだってわかってた。
でも、れんげちゃんは鈍感だから、だっしめんを鼻につめられた翔君が、それをうんちだと思い込んじゃったなんて気づかない。
つまり、あたしのあめ玉を夢中で食べてた翔君が、れんげちゃんのカレーは吐いちゃったことになる。
名づけて、れんげちゃんにサイテーなファーストキスの思い出を作ってあげる大作戦。
「ドラマとかマンガだと、レモンみたいだっていうのにね。れんげちゃんのファーストキスは、ゲロの味になっちゃったね」
ようやく、れんげちゃんは吐きやんだ。
「あたしのファーストキスは、アメをなめてたから、いちごミルクの味だったよ。翔君、あたしのくちのなか、はげしく求めてくるんだ。くちのなかを他人の舌でなめまわされるのって、すごく気持ちいいんだよね。あ、ごめん、れんげちゃんは、くちびるが少し触れただけでゲロ吐かれちゃったから、くちの中を男の子になめてもらったことなんか、ないんだよね」
実は、あたしもけっこう必死。
これで、ちゃんとれんげちゃんの心をきずつけられるのかな?
「ぅええええっ……」
ゲロといっしょに出た涙と鼻水で、れんげちゃんの顔はグショグショになった。
とってもブサイク。
トゥイーティーの手鏡を取り出して、れんげちゃんに、自分のきたない顔を見せてあげた。
「れんげちゃんがこんなにみにくいから、翔君も気持ち悪くて吐いちゃったんだね。これから、だれとキスしても、きっとみんな吐いちゃうよ。触れるだけで吐いちゃうんだから、れんげちゃんのくちびるは、ゲロ製造器だね」
くちゃくちゃにゆがんだ自分の顔を見ながら、れんげちゃんがまた泣き出した。
うわ、きもい。
「ほら、翔君の顔も見てみなよ。れんげちゃんと無理矢理キスさせられそうになったから、あんなに苦しそうだよ」
翔君もゲロまみれで、顔面そう白。
かわいそう。
こんなぎょう虫とキスするからだ。
ちょっとだけ、イライラしちゃった。
「あやまれよゲロ女」
にらみをきかせて、ぼすっ、とおなかをなぐった。
れんげちゃんは、うぷっ、なんて言って、またすこし吐いた。
「……ご、ごめ……なさぃ……」
おもしろい。
「もう一回、翔君とキスさせてあげよっか?」
やさしい声でささやいてみると、れんげちゃんは頭を振った。
「やだ……、もう……キスしたくない……、キスはいや……」
いい反応。
「キス、やだ……、ごめんなさい、ごめんなさい……」
きたならしい顔で、れんげちゃんが泣きじゃくる。
あたしは床に流れたゲロを掃除して、それを全部、れんげちゃんの体にぶちまけた。
もともとゲロまみれだったれんげちゃんは、ゲロの国の女王様みたいになっちゃった。
それから、大きな姿見を持ってきて、れんげちゃんの前にセットする。
みっともない自分の姿が、よく見えるように。
「……ぅぅ……」
れんげちゃんは、目を閉じてしまった。
それはダメ。
あたしはだまって、れんげちゃんのみぞおちを、つま先でけりあげた。
「ギャッ」
カエルみたいな声をあげて、れんげちゃんが目を開けた。
「目をつむったら、いきなり蹴るよ」
見えないのにとつぜん攻撃されるのって、すごくこわいから。
れんげちゃんはおびえて、目を閉じられなくなっちゃった。
「そうそう。そうやって、ちゃんと自分のかっこを見てないとダメだよ。あたしをごまかそうとしたら、いくられんげちゃんでも、ゆるさないから」
このセリフは、思ったよりも効果があったみたい。
れんげちゃんったら、すっかりあたしにおびえてるの。
いい気持ち。
なんだか、れんげちゃんの顔におしっこをかけてみたくなったけど、翔君が見てるから、がまんする。
はしたない女の子だって、思われたくないもの。
4 恋のテスト(八月)個人成績表
ぎょう虫は、カピカピにかたまったゲロを全身にこびりつけたまま、ぼんやりした目であたしと翔君のキスを見てる。
翔君ったら、すっかりキスの味にめざめちゃったみたい。
だんだん、舌の使い方もじょうずになってきた。
「ちゅぱっ、ちゆっ」
わざと音を立てると、すごくひわいな感じがした。
あたしは、うんとえっちな表情を作って、れんげちゃんに見せつける。
キスって、気持ちいいんだよって。
幸せだよって。
でも、れんげちゃんは、ファーストキスのゲロまみれ。
いい気味。
……そうだ、忘れてた。
ちょっとだけ翔君から体を離すと、あたしは、茶色い封筒を取り出した。
「れんげちゃんのラブ偏差値、あたしが採点してあげたんだよ」
封を切って、中のプリントを、れんげちゃんにピラピラと見せてあげた。
恋のテスト(八月)個人成績表
受験番号 23/学年 小六/性別 女/氏名 春野れんげ
総合順位 130000000/130000000
ラブ偏差値 0
総合評価
初体験の相手が犬のおしっこなんて、日本人全員の中で、いちばんひさんな成績です。
一生、恋愛はあきらめたほうがいいでしょう。
恋のひとことアドバイス
顔も性格も最悪だから、男の子から見るとあなたはとてもキモイです。
キスなんてされたら、吐いちゃいます。
そんなあなたが人間の男の子と恋愛をしようなんて、かんちがいもはなはだしいです。
せめてぎょう虫らしく、線形の彼氏と交尾して肛門で産卵死してください。
・児童小説らしく、描写はAまでにして、つららとか万力とかぎょう虫とかおしっことかうんちとか、なるべく小学生っぽい感じを目指しました。 ・茶色いタッパのくだりは児童小説レベルの叙述トリックのつもりですが、拍子抜けでしたらごめんなさい。 |