2007年2月14日 | このページの内容について | |
2001年ごろ、「1ch」という掲示板が話題になりました。 日本のインターネットの歴史の中でもひときわ珍妙な掲示板でしたが、短期間に色々な出来事があり、消えてしまったログが多いので、全体像が把握しづらいです。 ばるぼらさんの「教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書」という本では、
……と、簡潔にまとめられていますが、残念ながら、牛丼からスタートして吉野ヶ里遺跡に至る珍事件の数々について、具体的には触れられませんでした。 そこで、このページでは、予備知識がない人にもできるだけ分かりやすいように、「1ch」にまつわる出来事を時系列順に紹介しています。 |
2001年6月の出来事 | 西和彦さん、2ちゃんねるに怒る | |||||
「1ch」誕生のきっかけは、2001年の6月でした。 2ちゃんねるの「アスキーの西氏が取締役を退任」というスレッドで、アスキーや西さんに関する話が書き込まれていたところに、ウワサの西さんご本人が登場。
……などと、ネットで匿名で発言する人たちへの怒りを露わにする西さん。 そして、このスレッドが「Part10」まで伸びたところで、ついに西さんは自分の戦う相手を見出します。
この辺りの西さんの主張について、バトルウォッチャーの哭きの竜さんは次のようにまとめています。
ちなみに、まったくの余談ですが、プロの煽り屋については、最初に「プロ固定」という単語が誕生したきっかけは、『カイジ』の利根川さんの説教だったという説もあります。 それから、8月には、この西スレッドのオフ会が開かれ、参加した2chの管理人・ひろゆきさんが牛丼を2杯食べたことで、西さんが怒る一幕もありました(この話は少し長くなるので、詳細は「補足:牛丼オフ会事件」というページに分けました)。 |
2001年9月の出来事 | 「1ch」発表 | ||
そして、2001年9月29日。 西さんは、2chに対抗して「1ch」という掲示板を立ち上げると発表しました。 当時のimpressの記事によると……。
また、スタッフの1人・あめぞうさんは、次のように理想を語りました。
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2001年10月の出来事 | 1ch、開局初日 | ||||||||||||||||||||
そして10月5日、ついに1chがスタート。 その日の様子は、バトルウォッチャーの哭きの竜さんが記したところでは……。
荒らし行為については、もちろん荒らした方が悪いに決まっているのですが、その酷さを見せるためにあえて荒らされた状態のままで放置しているという主張には、ちょっと理解しがたいものがあります。 これについて、たとえばTECHSIDE.NETさんは「1chが狂ってます」という感想を述べました。 一方、「ダサいホームページ作成マニュアル」のMIZさんは、「表示が遅すぎる」「企業がバックにいるという信頼感を微塵も感じさせないデザイン」「アクセシビリティの低いユーザーインターフェイス」など、基本的な問題点を指摘しています。 また、「1ch」という名称や、「“2ちゃんねる”へ宣戦布告!!」という報道をされたことで、それに興味を持って初日からアクセスした人の多くは、普段2ちゃんねるを利用している人でした。 そういった人たちが1chをどういう風に眺めていたかという空気は、次のようなLちゃんのコメントから察せられると思います。
まあ、このコメントは口が悪すぎるかも知れませんが、それほど悪意のない人の感想でも、「最初は2chから来る人ばかりになるのは予想された(当時のスラッシュドットなど参照)のに、ほとんど対策してなくて初日からサービスを中断してしまうのは、有料化を予定している企業運営の掲示板にしては甘すぎるのではないか」という感じの声が多かったと思います。 |
2001年10月の出来事 | 1chの削除基準 | ||||||||||||||
10月5日の午前1時に始まり、その日の夜に閲覧専用モードになった1chでしたが、10月14日に再開します。 それから1chは、「おばあちゃんの知恵」板などを新たに設置。Lちゃんの10月22日の更新によると、当時の「おばあちゃんの知恵」板の様子は……。 ちなみに1chの利用規約を見ると、書き込みを削除するかどうかの判断基準は、
……とのことで、おじいちゃんの玉袋スレとか効果的な嫁のいびり方スレとか「みちこさん 飯ぁまだかの?」スレが削除されたのは当然だと思います。 しかし、たとえばこのスレッドでは、次の発言も削除されずに残されました。
その他、ニュース板で白血病治療薬の開発への協力を呼びかけるスレが削除されたり、映画板で「2度と見たくない映画」スレが削除されたり……。 「2ちゃんねらー=キチ害」というスレッドは削除されないのに「1ちゃんねらー=キチ害」というスレッドは5時間で削除されるなど、「悪意」の有無の判断はあいまいでした。 特に恋愛板では、「はじめてのHどうだった?」というスレが削除され……。
……つまり、恋人同士のキスは反社会的で非常識な行為であるという主張で、これが本当に1chの公式見解だとは考えにくいです。 しかし、この発言は削除されず、スタッフによる否定や訂正のコメントも付かなかったので、これが1chの方針だとスタッフが認めているようにも見えて、「接吻の話を書くと削除されるのか」「その程度で法的措置と言い出すのか」と、利用者を困惑させました。 そんな中、特に削除されやすかった発言は、1chの運営側への批判でした。 たとえば、「いなか板」では、「いなか」という板名は地方在住者への侮辱だという批判が出たところ、「ことば狩を意図した嫌がらせ書込み行為」だと削除されました(長くなるので、この詳細は補足:「いなか板」問題というページにまとめました)。 また、削除されるたびに、繰り返し同じ質問を投稿する人もいましたが……。
この発言もすぐに削除され、別の場所に、次のようなスタッフの発言が出ました。
しかし、PANAMさんの発言はほとんど削除されてしまっていたので、本当に「プロバイダーに対して通告するに値する」ような行為だったのか、傍目にはよく分かりませんでした。 |
2001年10月の出来事 | 「STAFF@NTWさん」事件 | |||||||||||||||
10月23日に、1chの「窓口」板に「”削除”について」というスレッドができました。 スレッドを作ったのは、1chを動かしている実質的なリーダーの1ch.tv発行人さんで、削除する基準を明確にして欲しいという質問への見解を示してくれたのですが……。
まもなく、このスレッドが丸ごと削除されました。これに対して、 ・「読んだ人が気分を悪くするような書き込みは一切禁止」という利用規則を掲げる「人にやさしい掲示板」で、運営者の発言が「貴殿の奴隷でも部下でもありません」「へりくだるサービスをご希望ならどうぞ、そのような場所をご利用ください」というのはどうか ・「窓口」に運営者自身が書き込んだ1chの公式見解を、何のアナウンスもなくスレッドごと全部削除してしまうのはどうか ……といった批判が寄せられますが、それも削除されてしまいます。 その後、1chの「ネットウォッチ板」に「昨夜の窓口でのやり取り」というスレッドが作られました。 1chでは、「いなか板」の管理人はinfohandsさん、「教育板」の管理人はけんすうさんという感じに、「板」ごとに管理人がいて、それぞれの「板」を自治のような形で管理しています。 当時の「ネットウォッチ板」の管理人はSTAFF@NTWさんという人で、むやみに書き込みを削除しないことで、利用者に人気がありました。 「昨夜の窓口でのやり取り」スレについても、STAFF@NTWさんは削除しようとは思わず、まずは自分の見解を述べて、ユーザーの理解を求めることにしたそうです。
……というような文章を用意したSTAFF@NTWさんが、「昨夜の窓口でのやり取り」スレッドに投稿しようとしたところ、ちょっとした問題が起きました。 1chでは、悪意のある人間がスタッフになりすまして変な発言をしないように、スタッフは自分の名前を赤い文字にして書き込むことができます。 普通の人がスタッフの名前で書き込みをすると、投稿者名は「STAFF@NTWさん」となりますが、本物のスタッフならば「STAFF@NTWさん」という表示にできるのです。 ところが、その日の夜は、たまたま1chの「スクリプトの修正」があったため、赤い名前で発言することができなくなっていました。 そこで、STAFF@NTWさんは上記の文章の投稿はあきらめて、
……として、ニセモノ防止のため、赤い名前が使えるようになるまで発言を控えると伝えました。 すると、その数時間後、STAFF@NTWさんのところに、1ch.tv発行人さんから「『内部情報のリーク』だとの指摘のメール」が届いたそうです(「システム変更時にトラブルがあり」という発言が、「内部情報のリーク」だということのようです)。 そして、1ch.tv発行人さんは、ネットウォッチ板全体を停止させました。 この後すぐ、STAFF@NTWさんはスタッフを辞任してしまいます。 辞任した数時間後、STAFF@NTWさんが、2ちゃんねるの1chウォッチスレッドに現れます。
……とのことで、愚痴をこぼしたり、スタッフ辞任までの経緯を説明したりしてくれました。 なお、ネットウォッチ板はすぐにアクセス可能になりましたが、まもなく、「昨夜の窓口でのやり取り」スレッドは削除されてしまいました。 その後、STAFF@NTWさんのホームページに、「1ch.tvへの希望」というコンテンツが作られました。
この時期、STAFF@NTWさん以外にも、MIZさんやinfohandsさんといったスタッフも辞任して、1chのスタッフに占める2ちゃんねるを憎んでいる人の割合が高まりました。 |
2001年10月の出来事 | 「勤務先企業」事件 | ||||||||||||||||||||||||
10月25日の朝ごろ、1chの「おばあちゃんの知恵板」がアクセス不能になりました。 1chのメニューから、「おばあちゃんの知恵」のリンクをクリックしても、「おばあちゃんの知恵板」に移動せず、「Forbidden」というエラーメッセージが表示されるのです。 これについて、なぜエラーが出るリンクをメニューに残しているのかという質問が出ると……。
つまり、「おばあちゃんの知恵板」は、「おばあちゃん、山に捨てた」などと書き込む人が多かったので一時閉鎖したけど、嫌がらせ行為をした人に反省を即す(促す?)ために、「調整中」といった説明は付けず、あえてリンク切れの状態にしているそうです。 これについて、はじめて1chに来たユーザーが「おばあちゃんの知恵板」を読もうとトップページのリンクをクリックしたら、エラーが出てワケが分からないといった批判が寄せられます。
ここから、次のようなやりとりになりました。
すると、1ch.tv発行人さんは、上記のやりとりをスレッドごとすべて削除。 質問をしていたYSNさんは、「削除された質問の再掲」というスレッドを作りますが……。
1chは、書き込みをした人のリモートホストを記録しています。 たぶん、1ch.tv発行人さんは、書き込みの記録からYSNさんが勤めている企業がどこなのか知ったと思われますが、どうしてそれを言う必要があるのでしょうか。
この件については、1chのスタッフのけんすうさんも、1ch.tv発行人さんに「謝罪をするべき」と進言したそうなのですが……。
つまり、「なぜリンク切れが放置されているのか」という質問に答えるとき、質問者が企業からのアクセスだったので、純粋に業務時間内に仕事以外のことをしているのは良くないと思って注意した……ということなのでしょうか。 掲示板の運営者が、1人1人のユーザーの就業規則を気にかける。さすが「人にやさしい掲示板」ですね。 なお、1chのスタッフの富士見いおたさんは、この件について、次のような謝罪案を出しました。
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2001年11月の出来事 | 「電子雑誌」宣言 | ||||||||||||||||||
そんなこんなで、当時の1chには、たくさんの批判や要望が書き込まれては、削除されていました。 11月2日、1chのスタッフの富士見いおたさんが、次のように発言します。
1chは、いつのまにか「掲示板」ではなく「電子雑誌」になっていたようです。 ですから、「なぜエラーが出るリンクをメニューに残しているのか」という質問の書き込みをして、削除されても再投稿したYNSさんは今後何を書き込んでもすべて削除。たとえ事実に基づいた論理的な批判でも、1chに都合の悪い投稿なら「編集者の胸算用一つ」で削除。 そういった判断に公平さは必要としないそうで、とりあえず「人にやさしい」というコンセプトは捨てたと思われます。 また、以上の方針は、富士見いおたさんの独断ではなく、1ch運営陣による御前会議で決定されたそうで……。
どうやら、「上皇様」があめぞうさん、「陛下」が西さん、「将軍」が1ch.tv発行人さんのことのようです。 このあんまりな言葉選びなどから、周囲の反応は、スタッフの名前を騙ったニセ発言だろうという感じでしたが……。
投稿者名を赤文字にした書き込みで、本物の発言だったと判明します。 それにしても、普通のペーパーメディアは、「自社に都合の悪い情報は載せません」とか「編集者に公平さは必要ではありません」とか自分から公言しないと思いますけど……。 という感じに、この発言に何か言いたくなった人は多く、たくさんの意見が書き込まれますが、さっそく次々と削除されていきます。当時の2chの1chウォッチスレッドによると、
……という状態で、そんな中、削除されなかった発言は、
「年金」というのは、1ch.tv発行人さんの別名です。 つまり、「地蔵とYSNは当誌に不要なので、貴殿らの投稿は全部没にします」と宣告された地蔵さんであっても、1chのスタッフに対して脅迫罪の構成要件に当たるような書き込みをすれば、「編集者の胸算用一つ」で残してもらえるようです。 これが1ch運営陣の考える「電子雑誌」なのでしょうか。 ……当初、「普通の人がコミュニケーションができ、安心できる場所を作りたい」(1ch.tv発行人さんの発言)、「一人でも、多くのひとが『世の中、まだ捨てたものじゃないな』『インターネットのおかげで、いい気分だ』『人間って良いものだな』『生きていて、良かったな』と思ってもらえる、ものを作りたい」(あめぞうさんの発言)という理想に燃えるスタッフが作ろうとしていた「人にやさしい掲示板」は、この夜、終わったのだと思います。
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2001年11月の出来事 | 反2ちゃんねるキャンペーン | ||||||||||||||
「人にやさしい掲示板」から「やさしさ」と「掲示板」を取り除いた後、残ったものは2ちゃんねるへの憎しみでした。
「玄さん」というのは、「2chの運営陣は情報操作をして金を儲けている」と証拠はないけど憶測で主張している人物です(詳しくは「教科書には載らない『1chの玄ちゃんスレッド』の歴史」を参照)。 それから、富士見いおたさんは「2chの被害者募集」スレッドを作ります。
これについて、アンチ2chの方向に進むよりも、1chを「人にやさしい掲示板」として充実させていく方が重要だという声が寄せられますが……。
ちなみに、同じ発言の中には、次のようなくだりもあり……。
富士見いおたさんの中で、 ・「ペーパーメディアでも、テレビ局でも、自分の組織に都合の悪い情報は流しません」 ・「ジャーナリストの本懐は『真実を問う』事です」 ……の2つがどうやって両立できているのか、傍目にはよく分かりませんでした。 |
2001年11月の出来事 | 「クーデター」事件 | ||||||
この時期になると、西さんはまったく姿を見せなくなっており、実際に動いているように見えるスタッフは、次の3人だけでした。 ■1ch.tv発行人さん(年金さん) 1chの運営主体である、バリュー・エクスチェンジ株式会社の社長。主な発言は、「私共は、貴殿の奴隷でも部下でもありません」「勤務先企業は、業務時間中に延々と私的書込みを認められておられるのですか」 ■富士見いおたさん 1ch.tv発行人さんを慕うスタッフ。反2ちゃんねるキャンペーンを主導し、「2ちゃんねるがもたらした戦後民主主義の悲劇」という長文も発表。主な発言は、「編集者に公平さは必要ではありません」「個人的に千円から3千円の間で、報酬を支払います」 ■けんすうさん 20歳の大学生。ご本人のサイトによると、「普通の人がコミュニケーションができ、安心できる場所を作りたい」という理念に共感して、「真面目に議論したい人だけが集まるような、そんなコミュニティを作りたい」と、1chのスタッフに就任。 他のスタッフと意見が合わないことが多く、1ch.tv発行人さんの「勤務先企業」発言について「あの脅迫めいたのは間違ってる」と述べたり、富士見いおたさんの「反2ちゃんねるキャンペーン」に対して「反2ちゃんねるキャンペーンを反対するスレッド」を作ったりします。 さて、1chはスタート時には、「開局6ヵ月後には、1日あたり40万ページビュー、月間1億ページビューを目指す」と述べていました。 しかし、実際には、2ちゃんねる研究さんの11月10日の更新で、「完全に迷走し、ほとんどウオッチャーしか注目していない状態と思われる1ch」と述べられるなど、開始1ヵ月で「普通の人」や「真面目に議論したい人」は来ない場所になってしまいました。 そんな中、2chの1chウォッチスレッドに、こんな怪情報が投稿されました。
つまり、1chにお金を出している偉い人が、1ch.tv発行人さんと富士見いおたさんを運営から外して、1chを再スタートさせようとしている……というウワサ話のようです。 これについて、けんすうさんが肯定的にコメントしたことで、信憑性が増します。
この件は、1chの動向に注目しているウォッチャーの間では話題になり、哭きの竜さんは、次のような名文を残しました。 11月10日 : 1ch.tvでクーデター?年金氏、富士見いおた氏が追放? 11月11日 : 年金氏「氏ぬ準備は出来ている」 単独会見で そして、問題の火曜日。けんすうさんが2chの1chウォッチスレッドで報告した結果は……。
最初のウワサでは「アスキーの意向」という話でしたが、けんすうさんによると、1ch.tv発行人さんを掲示板の管理から離そうとしたのは「バリューエクスチェンジのシステム関係者」だそうで、この辺、2chのウワサはどこまで本当かよく分かりません。 なお、この騒ぎの数日後に1chのスタッフになったなつきさんは、「クーデターの存在そのものが無かった」と述べています。
どちらにしても、結局、一連の騒動の前後で変化したのは、けんすうさんの辞任によって「アンチ2ちゃんねる路線」に反対するスタッフがいなくなったことだけでした。 |
2001年11月の出来事 | 脱2chバナー | ||
11月15日ごろから、1chの「ネットウォッチ板」のトップページに、次のようなバナーが貼られるようになりました。
これについてバトルウォッチャーの哭きの竜さんは、一言「何を考えているのやら」と呟きました。 |
2001年12月の出来事 | 「IPアドレス一覧」公開 | |||||||||||||||||||
その後、1chに大きな動きはなく、12月2日には、哭きの竜さんが次のようにコメント。
2ちゃんねるの1ch観察スレッドも、ピーク時には1日に1400件以上の書き込みがあったのに、12月2日には29件しか書き込みがなくなっていました。 そんな12月3日、突然1chにアクセスできなくなります。 それから、復旧したと思ったら閲覧専用モードだったり、また見えなくなったり……。 1chのトップページ(http://1ch.tv/)にアクセスすると、次のような画面が表示されることもありました。
これはサーバソフトをインストールした直後に表示される画面で、どうやら1chの管理者がまさにいま復旧作業中(しかも苦戦中)だと分かりました。 結局、12月3日から9日まで、1chは不安定な状態が続き、見えたり、消えたり、「あなたの予想に反して、このページが見えているでしょうか?」になったりを繰り返しました。 しかも、普通にリロードしただけでCGIのソースが表示されるなど、一時はすべてのCGIスクリプトがダウンロード可能になっていました(詳細は「あなたの予想に反して、このページが見えているでしょうか?」事件を参照)。 さらに、そうしてインターネット上に「公開」されてしまったCGIスクリプトの中身から、1chに書き込みをした人のIPアドレスの一覧も見つかってしまいます(この経緯は少し長くなるので、「IPアドレス一覧公開」の少しだけ詳しめの説明は別ページに分けました)。 ところで、1chのネットウォッチ板の「なつきさんを応援するスレ」では、ギコ4匹さんという人が、次のようなやり取りをしていました。
このギコ4匹さんが、自分は21歳の大学三年生だという発言をしたところ、「ギコ4匹は大学三年生にしては程度が低い」という主旨のコメントが大量に寄せられました。 ところが、前述の管理者のミスで公開されてしまった「IPアドレス一覧」を見ると、ギコ4匹さんに対する攻撃的なコメントの多くが同じリモートホストからの発言でした。 ためしに、神奈川のBIGLOBEの発言だけを赤色にして、ログを見てみると……。
つまり、神奈川のBIGLOBEの人が、「いまだにさん」「ひとつ疑問がさん」「ずれてないよねさん」といった名前を使い分けて、たくさんの人がギコ4匹さんの悪口を言っていると見せかけていたようです。 問題になったのは、その前後を見ると、1chのスタッフ・なつきさんの発言のリモートホストも、神奈川のBIGLOBEだという点です。
もちろん、たまたま神奈川のBIGLOBEから「なつきさんを応援するスレ」にアクセスしている人が何人もいたという可能性もありますが……。
どちらかといえば、「なつきさんが1人でたくさん書き込んでいた」という方が可能性が高いように思えます。 |
2001年12月の出来事 | 「スタッフ打ち合わせ掲示板」公開 | |||||||||||||||
12月6日、1chのスタッフが打ち合わせをしていた掲示板のURLが漏れてしまい、それがURLを入力すれば誰でも閲覧できるようになっていたため、多くの人間に見られてしまいました。 (掲示板のあるURLや元スタッフの証言などから、だれかのねつ造ではなく、本物のスタッフの掲示板だと分かるのですが、長くなるので詳しい経緯の説明は別ページに分けました)。 さて、この掲示板を見ると、これまで、1chのスタッフ同士でどのような相談が行われていたのかが分かります。 まあ、いくら誰でも見られる状態でインターネット上に放置されていたとは言え、身内に向けられた発言を読むのは少々悪趣味ですし、それを評価材料にするのはどうかと思いますが、「1ch」の歴史上、貴重な資料には違いないので、ご紹介させて頂きます。 たとえば、STAFF@NTWさんが辞任した頃の、富士見いおたさんの発言は……。
また、1ch.tv発行人さんが「勤務先企業は、業務時間中に延々と私的書込みを認められておられるのですか」と発言したため、まるちいんさいど。さんの10月30日の更新をはじめ、多くのサイトが「1ch」に批判的な意見を述べた頃……。
それから、富士見いおたさんが「反2ちゃんねるキャンペーン」と称して2chの被害報告に賞金を出したり、電子雑誌宣言をして「編集者に公平さは必要ではありません」と述べた頃……。
……富士見いおたさんは、死すら覚悟して強大な敵に立ち向かっていたようです。 あと、一連の出来事に呆れたスナフキンの手紙に捧ぐさんが、「議論での攻撃、正常化はもはや1chには見込めません」として、1chは放置すべきと主張したことがあったのですが……。
つまり、富士見いおたさんの考えによると、「反2ちゃんねるキャンペーン」で2chにとって都合の悪い情報が1chに集まったため、それを人目に触れさせないように2chの運営陣が指令を出して「1ch放置運動」を始めさせた……。これで1chは勝利に近づいたという認識のようです。 ちなみに、これを読んだスナフキンの手紙に捧ぐさんは、12月7日の更新で「もうキツすぎるよ」という感想を述べました。 さて、公開されたログの中には、1chの開設前からのスタッフの打ち合わせもありました。 たとえば、10月5日の1ch開設に向けた、スタッフのあめぞうさんと富士見いおたさん(=たかおんさん)の会話は……。
また、1chのスタートが数日後に迫ると……。
1chは元々、西さんが「2chはプロの煽り屋を雇っている」と怒って立ち上げた掲示板でした。 しかし、その開始にあたって、運営スタッフが人を雇ってでもレス付けとか、ハンドル10個使い分けてレス付けとか、雑誌にやらせ記事とか、2chに噂の伝達を装った宣伝書込みをしてくるとか、デマを流して2chで盛り上げる……といった打ち合わせをしていたようです。 なお、あめぞうさんは「1ch騒動」の重要人物の1人ですが、この「教科書には載らない1chの歴史」の中では、あまり詳しくご紹介しておりません。 あめぞうさんを中心にした「1ch騒動」の流れについては、「あめぞうさんと2ちゃんねる」という補足ページを別に作りましたので、詳しくはそちらをご参照ください。 |
2002年1月の出来事 | 「日本政府は吉野ヶ里に遷都して縄文時代からやりなおすべきである」 | |||||||||||||||||||||||||||
その後も1chの雰囲気に変化はなく、1月30日。「素朴な疑問」スレッドで、富士見いおたさんが次のように述べました。
これは、スタッフだけが読む打ち合わせ用の掲示板ではなく、1chの普通のスレッドでの発言です。 商業化を予定しているサイトの運営側の人間が、本人の証である赤色の名前を使って自分は「パラノイアスタッフ」と言ったわけですが、この時期になると、富士見いおたさんの発言はどれもこんな感じでした。
2ちゃんねるの話から日本社会の破局まで一直線ですが、真剣に日本の将来を案じているようです。
よく分かりませんが、言わせるだけ言わせておいて告訴するのが掲示板運営の神髄という解釈で正しいのでしょうか。 1月31日、そんな富士見いおたさんが、2chの運営関係者である切込隊長さんの掲示板に現れて、次のように発言しました。
これを読んだ哭きの竜さんは、
……と述べ、「富士見日本一の兵(つわもの)」という文章を書きました。 また、富士見いおたさんはスレッド式掲示板連合のCNPスレッドにも現れ、切込隊長さんの掲示板で「言論闘争」を行っている最中だと報告します。
これに対して、2ちゃんねるの管理人・ひろゆきさんの反応は……。
たぶん、こういう性格が富士見いおたさんを怒らせて、「『電網私刑場2ちゃんねる』の運営者は、人格に問題があると言わざるを得ない」と言わせているのでしょう。 なお、1ch以外の場所に現れた富士見いおたさんは、本物の文体を真似たニセモノの疑いもありましたが、1chのスレッドで、
……と、富士見いおたさんによる赤い名前の発言があり、本人の書き込みと思って間違いないようです。 そして、そんな出来事から数日後、富士見いおたさんが辿り着いた世界は……。
要するに、正義であるはずの1chが失敗したのは日本社会が悪いということでしょうか。 これを読んだ哭きの竜さんは、
……というほどの衝撃を受けたそうで、「共同体幻想への無批判な依存の否定(と、嫌悪の証明)」という文章を書き上げておられました。 |
2002年2月の出来事 | 「私は首筋に疝痛を感じるや、自らの視界が天地を巡ること二回……」 | |||||||||||
さて、2月9日、切込隊長さんの掲示板に再び、富士見いおたさんを名乗る人物が現れます。
言葉の意味はよく分かりませんが、前回の異議申し立てでは「切込隊長氏を釣り上げたという実感がない」ので、今度こそ釣り上げに来たそうです。 そして、2chと戦わなければならないという確信を得るに至った自分の体験談を語って曰く……。
それから、1chを批判する内容の更新が多かったLちゃんのサイトについて、次のようにコメント。
Lちゃんが切込隊長さんの「子飼い」であるという話の根拠は不明ですが、たぶん、「1chに批判的なサイト=切込隊長さんの指令で動いている」という認識なのだと思います。
これを見た哭きの竜さんは、次のようにコメントしました。
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2002年2月の出来事 | 1ch、サーバ移転 | |||
ところで、1chが始まる1か月ほど前、西和彦スレッドに次のような発言がありました。
ちょうど、2chがサーバを維持できず閉鎖寸前と言われた頃です。 最初の報道では、「当初は無料で提供するが、2002年2月から有料サービスを開始する予定だ。開局6ヵ月後には、1日あたり40万ページビュー、月間1億ページビューを目指す」という予定でしたから、月間1億ページビューにも耐えられるよう、かなり高額なサーバを用意したと思われます。 しかし、その後の経緯はこれまで述べてきた通りで、「有料サービスを開始する予定」だった2月の1chの様子は、富士見いおたさんの言葉を借りるなら……。
この時期になると、高額なサーバを使って1chを維持する理由もなくなったと思われ、その辺りの動向も注目されました。 そして、2月28日。1chのアドレスが、以前の「211.10.27.230」から「61.213.140.162」に変わっていました。どうやら、10台のサーバを放棄して安いサーバに移転したようです。 想像になってしまいますが、10台のサーバが9月2日ごろから半年契約だったとすれば、3月の頭ごろに契約が切れることになります。 普通なら、そこで1ch自体を終わらせるところ、1ch.tv発行人さんはそれでも1chの夢をあきらめ切れず、自費でサーバを借りて半分趣味のような形で続けることにした……といった経緯が考えられます。 |
2002年4月の出来事 | さよなら、1ch | ||||||
2002年3月。 「Eストアーと共同で物販システムも来年3月までに構築します」とかつて告知されていた時期でしたが、何もありませんでした。 2002年4月。 この頃になれば、1chに「循環型決済管理システム(バリューエクスチェンジシステム)」が導入されているとかつて期待されていた時期でしたが、何もありませんでした。 どうやら当初の計画は失敗に終わったようですが、それでも、なぜか終わらない1ch……。 当時の哭きの竜さんの更新では、次のような認識でした。
そして、4月7日。哭きの竜さんは「さよなら 1ch.tv」という更新をしました。
それから5年近くが過ぎた、2007年2月現在。哭きの竜さんのサイトも2年前に閉鎖され、その他の1chと関わったサイトも、ほとんどがインターネット上から姿を消してしまいました。 しかし、http://1ch.tv/ は、今日も元気に稼働しているのです。 終わりのないのが終わり。 |